燃油サーチャージとは?なぜ高騰するの?仕組みをわかりやすく解説
2022/12/02

新型コロナウイルスの水際対策が大幅に緩和され、海外旅行本格解禁の機運が高まっています。旅行の計画を立て、いざ飛行機のチケットを取ろうとした際「燃油サーチャージ」という言葉を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
この燃油サーチャージ、実は2022年に入り高騰しているのはご存じでしょうか。足元の価格を見ると、これが原因で旅行を断念された方も少なからずいらっしゃるのではないかと思います。
そこで、本記事では燃油サーチャージについて、そもそも燃油サーチャージとはどのようなものなのか、そして、価格はどのような仕組みで決まるのかをわかりやすく解説することで、高騰する原因を紐解いていきます。また、航空券を購入するときの注意点など、旅行の計画を立てる際に知っておきたいポイントについてもご案内します。
燃油サーチャージとは?
燃油サーチャージの正式名称は「燃油特別付加運賃」といい、主に国際線においてチケット代に上乗せされて徴収される料金です。飛行機の燃料である石油の価格に応じて料金が変動し、価格が一定以下に下落した場合は徴収されないケースもあります。
もともとは1970年代に、第一次オイルショックに伴う原油価格の高騰に対する措置として海運業界で導入されたのが始まりで、2000年代以降は航空業界にも導入されました。燃油サーチャージの算出方法・改定時期は航空会社によって異なりますが、日本航空(JAL)や全日空(ANA)などの主要航空会社では、航空燃油であるシンガポール・ケロシン(ジェット燃料のもとになる石油成分の一つ)の円建て価格をもとに、2か月ごとに改定が行われています。また、燃油サーチャージは航空券の発券日ベースで料金が決まり、改定時点における直近2か月のシンガポール・ケロシン価格(円建て)の平均によって料金が算出されます。例えば、次回発表予定の燃油サーチャージ(2023年2月~3月発券分)は、2022年10月~11月の2か月間のシンガポール・ケロシン価格(円建て)の平均値をもとに算出され、12月中旬~下旬頃に発表される予定となっています。
燃油サーチャージっていくらぐらいかかるの?
それでは、燃油サーチャージは具体的にいくらぐらいかかるのでしょうか?燃油サーチャージの金額は航空会社・路線によって異なりますが、ここでは日本航空を例にとって、行き先ごとに燃油サーチャージがどのくらいかかるのかを見てみましょう。
●燃油サーチャージ料金表(日本航空・2022年11月時点)
行き先(日本発) | 燃油サーチャージ (片道・一人あたり) |
---|---|
韓国・極東ロシア | 7,700円 |
東アジア(除く韓国・モンゴル) | 12,900円 |
グアム・パラオ・フィリピン・ベトナム・モンゴル・ロシア(イルクーツク) | 22,900円 |
タイ・マレーシア・シンガポール・ブルネイ・ロシア(ノヴォシビルスク) | 29,800円 |
ハワイ・インドネシア・インド・スリランカ | 37,400円 |
北米・欧州・中東・オセアニア | 57,200円 |
燃油サーチャージが最も高額な北米・欧州・中東・オセアニア路線では、一人あたり片道57,200円(往復114,400円)が運賃とは別にかかることになります。この水準は過去と比較してもかなり高い水準といえます。
※期間:2011年12月~2023年1月(月次)
※日本~北米・欧州・中東・オセアニア(片道・一人あたり)
※日本航空における料金(同社プレスリリースより抜粋しアセットマネジメントOne作成)
2022年12月・2023年1月発券分では料金がやや下がっていますが、過去には燃油サーチャージがかからなかった期間(2016年4月~2017年1月、2020年6月~2021年5月)もあり、過去10年程度の水準と比較すると飛び抜けて高い水準であることがわかります。
燃油サーチャージを左右する要素とは?
では、過去類を見ない水準で燃油サーチャージが高騰している理由は一体何なのでしょうか?
前述の通り、燃油サーチャージは「シンガポール・ケロシンの円建て価格」をもとに2か月ごとに改定されるため、直近の「燃料価格」と「為替レート」の2つの要素の影響を受けることになります。まずは、燃料価格(シンガポール・ケロシン価格(米ドル建て))の推移を見てみましょう。
出所:ブルームバーグのデータをもとにアセットマネジメントOne作成
※シンガポール・ケロシン価格(米ドル建て)
※期間:2011年12月30日~2022年10月31日(日次)
2022年に入り急激に価格が上昇していることがわかるかと思います。新型コロナウイルス収束を見据えた消費意欲の増大や、ロシアによるウクライナ侵攻が原因で原油の供給が滞っていることなどを背景に、燃料価格は高止まりしています。
続いて、もうひとつの要素である為替レート(米ドル/円)の推移を見てみましょう。
出所:ブルームバーグのデータをもとにアセットマネジメントOne作成
※期間:2011年12月30日~2022年10月31日(日次)
こちらも2022年に入ってから急激に円安が進行しています。10月20日には32年ぶりに1ドル=150円を突破したというニュースをご覧になった方も多いのではないでしょうか。アメリカの中央銀行であるFRB(米連邦準備制度理事会)が物価上昇を抑制するために政策金利を引き上げているのに対し、日本の中央銀行である日本銀行は超低金利政策を維持しており、「円を売ってドルを買う」動きが強まったことが円安の主要因の一つとなっています。
このように、2022年に入り「燃料の価格(米ドル建て)の高騰」と「歴史的な円安」が同時に起きており、燃油サーチャージ急騰の要因となっていることがわかります。
楽しくお得に旅するために
2022年に入り急激に上昇している燃油サーチャージですが、幸い次回料金(2022年12月・2023年1月発券分)はやや値下げされることになりました。燃油サーチャージは航空券の発券日ベースで決まるため、旅行先を決め航空券を発券する際には、直近と次回の燃油サーチャージを比較してみてから発券時期を検討してみるとよいかもしれません。
また、日本航空・全日空ともに、国内線では燃油サーチャージがかからない(2022年11月現在)ため、リーズナブルに旅行を楽しみたい!という方は、国内旅行を軸に検討してみてはいかがでしょうか。
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