テクニカル分析の基本!ローソク足と移動平均線を株式投資に活用する方法をわかりやすく解説
2025/08/15

テクニカル分析は、一見すると複雑で専門的な知識が必要そうに思えますが、実際には基本的な原則を理解するだけで、誰でも行うことができます。この記事では、テクニカル分析に欠かせないローソク足と移動平均線の見方を深掘りして解説します。実際の投資への活用方法まで紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
テクニカル分析とは何か
テクニカル分析とは、過去の価格や取引量を基にして、将来の価格動向を予測する手法です。これにはチャートやグラフを使って視覚的に分析することが含まれます。例えば、株価の動きを追うために、ローソク足や移動平均線などの情報を用いることが一般的です。投資家はテクニカル分析を、市場トレンドの理解や売買タイミングの見極めなどに利用します。
テクニカル分析は、ファンダメンタル分析と対照的なアプローチとして広く利用されています。ファンダメンタル分析が企業の財務状況や業績、経済指標などを基に投資判断を行うのに対し、テクニカル分析は過去の価格や取引量のパターンを重視します。これにより、投資家は市場の心理やトレンドを視覚的に捉え、将来の価格動向を予測しています。
2つの分析方法を表にまとめると以下のようになります。
テクニカル分析 | ファンダメンタル分析 | |
---|---|---|
定義 | 過去の価格や取引量のデータを基に、将来の価格動向を予測する手法 | 企業の財務状況や経済環境を基に、企業の価値を評価する手法 |
主な使用データ | 価格チャート、取引量、オシレーター*など | 財務諸表(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書)、株価指標(PER・PBRなど)、経済指標、業界動向など |
目的 | 短期的な価格変動のパターンを捉える | 企業の本質的価値を評価し、長期的な投資判断を行う |
分析の時間枠 | 短期〜中期(数分〜数ヶ月) | 中期〜長期(数ヶ月〜数年) |
メリット | 短期的な取引機会の発見に役立つ | 長期的な投資機会の発見に役立つ |
デメリット | 偽のシグナルや市場のノイズに影響されやすい | 分析に時間がかかり、市場の短期的な変動に対応しにくい |
*相場の動きやトレンドの強さを測定するために使用する指標です。買われすぎや売られすぎの状態を示すことで、相場の転換点を予測する手助けとなります。
テクニカル分析の基本的な原則の一つに「価格は全てを織り込む」という考え方があります。これは、株価には企業の業績や経済指標などの全ての情報が反映されているという考え方であり、過去の価格動向を分析することで市場の動きを予測することが可能であるというものです。また、「歴史は繰り返す」という原則も重要です。過去の価格パターンが将来も同様に繰り返されると考えられており、これに基づいてトレンド(傾向)を予測します。
具体的な例として、有名な価格パターンを3つ紹介します。
① ヘッド・アンド・ショルダーズ(頭と肩)
特徴: | このパターンは、3つの山(ピーク)で構成され、中央の山が最も高く、両側の山がほぼ同じ高さである形状です。これは、価格の上昇トレンドが終わり、下降トレンドに転じる可能性を示します。 |
解釈: | 中央の山(頭)が形成された後、右肩が形成される際に売りシグナルとされます。 |
② ダブルトップ/ダブルボトム
特徴: | ダブルトップは、価格が2回連続して同じ程度の高値に達し、その後下落するパターンです。ダブルボトムは、価格が2回連続して同じ程度の安値に達し、その後上昇するパターンです。 |
解釈: | ダブルトップは売りシグナル、ダブルボトムは買いシグナルとして利用されます。 |
③ トライアングル(上昇三角形、下降三角形、対称三角形)
特徴: | トライアングルパターンは、価格が収束する形状で上昇三角形、下降三角形、対称三角形の3種類があります。上昇三角形は上昇トレンドの継続を示すパターン、下降三角形は下降トレンドの継続を示すパターン、対称三角形は、価格が収束する中立的なパターンです。 |
解釈: | 価格が三角形の収束点を突破する方向にトレンドが継続するケースが多くみられるため、その突破点が売買のシグナルとなります。なお、上記の対象三角形は買いサインの例ですが、下のラインを突破した場合は売りサインとなります。 このような価格パターンを見つけることで、投資家は売買のタイミングを見極めることができます。 |
テクニカル分析の代表的な手法
テクニカル分析には多くの手法がありますが、まず知っておきたいのはローソク足と移動平均線です。ローソク足は、1日の始値、高値、安値、終値を視覚的に示したもので、価格の動きを一目で理解することができます。ローソク足には様々な種類があり、それぞれ異なる情報を提供します。例えば、赤や白の「陽線」は価格が上昇した日を示し、陽線の枠の上部がその日の終値です。一方で青や黒の「陰線」は価格が下落した日を示し、陰線の枠の下部がその日の終値です。また、「長い下ひげ」は価格が一時的に大きく下落した後に反発したことを示し、「長い上ひげ」は価格が一時的に大きく上昇した後に反落したことを示します。これらの情報を組み合わせることで、投資家は市場の動向を視覚的に捉えることができます。
移動平均線は、一定期間の平均価格を線で表したもので、株価のトレンドを視覚的に確認するのに役立ちます。例えば、20日間の移動平均線は、過去20日間の終値の平均値を毎日更新して表示します。これにより、株価のトレンドを把握することができ、上昇トレンドや下降トレンドを見極めるのに役立ちます。移動平均線には短期、中期、長期のものがあり、それぞれ異なる期間の平均値を示しています。短期の移動平均線は5、15、21、25日が主流で、短期間の価格変動を捉えるのに適しています。中期の移動平均線は、50、75日が主流です。長期の移動平均線は100、200日が主流で長期間のトレンドを把握するのに適しています。
また、移動平均線には、「単純移動平均線(SMA)」と「指数移動平均線(EMA)」の2種類があります。SMAは過去一定期間の株価の平均値を単純に計算したもので、EMAは最近の価格により重みを置いて計算されたものです。より複雑な計算をするEMAの方が優れていているとは限らず、目的によって使い分けることが大切です。SMAはトレンドの全体像を把握するのに適しており、EMAは短期的な価格変動を捉えるのに適しています。それぞれの特徴を表にまとめると以下のようになります。
単純移動平均線(SMA) | 指数移動平均線(EMA) | |
---|---|---|
計算方法 | 過去一定期間の株価を単純に平均化 | 最近の価格に重みを置いて平均化 |
価格反応速度 | 遅い | 速い |
利用目的 | トレンドの全体像を把握する | 短期的な価格変動を捉える |
メリット | 計算が簡単で理解しやすい | 最新の価格変動をより迅速に反映 |
デメリット | 価格変動に対する反応が遅れることがある | 計算が複雑で、ノイズに影響されやすい |
その他で重要な指数としては、RSI(相対力指数)やMACD(移動平均収束拡散)などがあります。RSIは価格の変動幅を基にして、買われすぎや売られすぎの状態を示す指標です。RSIは0から100の範囲で数値化され、通常は14日間の価格データを使用して計算されます。一般的な判断基準は、RSIが70以上になると買われすぎ、30以下になると売られすぎとされています。MACDは短期の移動平均線と長期の移動平均線の差を示す指標で、トレンドの強さや転換点を見極めるのに役立ちます。
これらの指標を組み合わせて分析することで、より精度の高い予測が可能になります。例えば、移動平均線とRSIを組み合わせることで、トレンドの方向性と買われすぎ・売られすぎの状態を同時に確認することができます。これにより、投資家は売買のタイミングをより精緻に見極め、より戦略的な投資判断を行うことができます。
ここまで多くの専門用語を紹介しましたので、これらの意味を一覧表にまとめます。
用語 | 意味 |
---|---|
ローソク足 | 1日の始値、高値、安値、終値を視覚的に示したもので、価格の動きを理解するためのチャート形式 |
陽線 | 終値が始値より高い日を示すローソク足 |
陰線 | 終値が始値より低い日を示すローソク足 |
下ヒゲ | 価格が下落した後に終値にかけて反発したことを示すローソク足の下部の線 |
上ヒゲ | 価格が上昇した後に終値にかけて反落したことを示すローソク足の上部の線 |
移動平均線 | 一定期間の平均価格を線で表したもので、株価のトレンドを視覚的に確認するための指標 |
RSI(相対力指数) | 価格の変動幅を基にして、買われすぎや売られすぎの状態を示す指標で、数値は0から100の範囲で表示される |
MACD(移動平均収束拡散) | 短期の移動平均線と長期の移動平均線の差を示す指標で、トレンドの強さや転換点を見極めるのに役立つ |
移動平均線を活用した投資判断方法
ここからは、移動平均線を使った投資判断の方法について解説していきます。株価が移動平均線の上にある場合、上昇トレンドが続いていることを示します。このトレンドに従う場合、投資家は買いの投資判断を行います。逆に、株価が移動平均線の下にある場合、下降トレンドが続いていることを示します。このトレンドに従う場合、投資家は売りの投資判断を行います。
このように、移動平均線を使うことで、投資家は市場のトレンドを把握することができ、投資タイミングの判断材料を得ることができます。例えば、複数の銘柄候補のうちどれにするか迷った際にも、上昇トレンドになっている銘柄を優先的に購入するといった判断をすることもできます。
また、移動平均線はサポートライン(価格が下がってきたときに、それ以上下がりにくくなる価格の水準)やレジスタンスライン(価格が上がってきたときに、それ以上上がりにくくなる価格の水準)として機能する場合もあります。なぜなら、移動平均線は多くの投資家が利用しているテクニカル指標であり、上昇・下落トレンドが続くであろうと予想している場合、株価が移動平均線に近づくと短期的な安値、あるいは高値にあると捉えることができるからです。一方、株価が反発(反落)せずに移動平均線を下抜け(上抜け)し、トレンドが切り替わったと多くの投資家が判断した場合は、そのまま大きく下落(上昇)していく傾向にあります。
もう一つ、移動平均線を使った有名な投資判断の方法として「ゴールデンクロス」の活用があります。ゴールデンクロスは長期の移動平均線をそれより短い期間の移動平均線が下から上抜ける現象で、上昇トレンドの始まりを示す強いシグナルとして広く知られています。一般的には50日と200日の移動平均線のクロスが使われており、両方の移動平均線が上向きであるとより信頼性が高いと判断されます。株価がゴールデンクロスを形成した場合、それに従う投資家は買いの姿勢を強めます。
ゴールデンクロスが形成され、その後実際に上昇トレンドが続いた例として、日経平均株価を見てみましょう。日経平均株価は2023年上期にゴールデンクロスが形成されたあと、株価が継続的に上昇しています。
ゴールデンクロス形成前後の日経平均株価の動き
期間:2023年1月2日~2023年6月30日(日次)
出所:ブルームバーグのデータをもとにアセットマネジメントOne作成
※上記は過去の情報であり、将来の投資成果を示唆・保証するものではありません。
トレンドの強さについては、「移動平均線の傾き」を利用する方法もあります。移動平均線が急角度で上昇している場合、強い上昇トレンドを示し、逆に、移動平均線が急角度で下降している場合、強い下降トレンドを示します。
このように、移動平均線一つとっても投資判断への利用方法は非常に多岐にわたります。しかし、基本的な原則が分かれば、それぞれの投資判断の意味が理解できるようになります。テクニカルチャートを活用することで、投資家は市場の動きをより精緻に理解することができ、より戦略的な投資判断を行うことができるようになると考えられます。
今後の資産形成に向けて
一見難しそうに見えるローソク足や移動平均線ですが、見方が分かると、案外シンプルで実際の動きを見てみたいと感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。テクニカル分析は経験を積み重ねることが重要です。自分なりに判断して、成功と失敗を繰り返し、自分に合った取引の形を確立していくとよいでしょう。自分で判断するのが難しいと感じた方には、運用をプロにお任せできる投資信託という選択肢もあります。本記事が皆さまの資産形成の一助となれば幸いです。
(執筆:1級ファイナンシャル・プランニング技能士・ CFP® 飯塚 桜子)
※投資判断の記載はあくまでもご参考であり、投資を推奨するものではありません。また、将来の投資成果等を示唆・保証するものではありません。
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