【関税の基礎知識】物価高への影響は?トランプ関税に備える方法は?
2025/11/04

最近ニュースで頻繁に耳にする「関税」という言葉。
実は、この関税が私たちの生活だけでなく投資の世界にも大きな影響を及ぼしていることをご存じでしょうか?
関税は国内産業の保護や国の税収確保のメリットがある反面、物価高や貿易摩擦などを引き起こす可能性があり、私たちの身近な商品の選択や将来の資産形成に影響を与える要因となります。このため、関税政策が経済に与える影響を理解することで、日々の物価変動をより身近に感じられるようになるでしょう。
本記事では、関税の基本を解説するとともに、世界的な影響力を持つ「トランプ関税」にも触れ、その影響について考えてみたいと思います。
生活を豊かにするための知識の一つとして、ぜひ最後までご覧ください。
関税とは?主な役割は?
関税とは、輸入される商品に対して課される税金であり、輸入者が自国に納めるものです。通常、輸入者は通関業者に申告業務を委託します。通関業者が審査・検査を終えた後に関税納付書が発行され、納税が完了すると輸入が許可されます。関税が未納の場合、輸入品は税関で留め置かれ、国内市場に流通させることができません。
例えば、ある日本企業が100万円の製品を輸入するとします。その際、輸入品に15%の関税が課される場合、その輸入品を国内で売るためには、15万円の税金も販売価格に上乗せし115万円にしないと損をしてしまいます。
一方、国内で同様の製品が110万円で販売されているとすると、関税がない場合は輸入品に価格競争で負けてしまいますが、関税があることによって消費者はより安価な国内製品を選ぶようになります。
このように、関税を利用して輸入品の価格を調整することで、国内産業の競争力を維持し、自国の生産者を保護することができます。
【関税のイメージ 日本が他国から輸入する場合】

つまり、関税の主な役割は以下の3点と考えられます。
- 国の税収の確保:国の財政を支える収入源として機能します。
- 国内産業の保護:輸入品の価格を調整し、国内産業が海外製品との競争で不利にならないようにします。
- 貿易政策の調整:特定の国や製品に対する関税を調整することで、国際貿易のバランスを図ることができます。
関税は税収源であるとともに国内外の市場を調整する非常に重要な役割を担っているのです。
関税のデメリット:物価高と貿易摩擦
輸入品に関税を課すことは、自国の税収を増やし、自国の産業を守るための重要な手段です。税収が増えることで、国はその資金を活用して経済を活性化させることができます。また、輸入品の価格が上がることで、相対的に国産品の競争力も高まり、国内の雇用や生産活動を支えるというメリットもあります。
その反面、以下のようにネガティブに働く側面もあります。
物価上昇による消費者負担の増加
輸入品の販売価格が上昇すると消費者が購入する選択肢が限られ、結果的に市場全体の物価が押し上げられる要因となる場合があります。特に、輸入品が国内市場で重要な役割を果たしている場合、関税による価格上昇は生活必需品や原材料の価格にも影響を与え、物価高へとつながる可能性があります。このような状況では、消費者の負担が増加し、家計への影響が大きくなることが懸念されます。
貿易摩擦の拡大
高い関税は他国との貿易関係に悪影響を及ぼすことがあります。特定の国が関税を引き上げると、報復措置として他国も関税を引き上げる可能性があり、これが貿易摩擦や貿易戦争に発展することがあります。結果として、国際的な経済協力が損なわれ、世界経済に停滞をもたらす恐れがあります。

関税の種類:2つの分類
第2次トランプ政権では、2025年4月上旬に、「ベースライン関税の引き上げ」「品目別関税の見直し」「各国の関税の引き上げ」を打ち出し、日本を含め世界各国の市場へ激震をもたらしたことも記憶に新しいかと思います。そこで、関税の分類と概要について確認していきましょう。 関税は、さまざまな基準がありますが大きくは「課税の対象や方法」と「税率の種類」の2つの観点で分類されます。
課税の対象や方法による分類
関税がどのように適用されるか(国、品目、相互関係など)に基づいて分類されるものです。「対象や適用方法」に基づく分類で、「どの品目や国に課されるか」に焦点が当てられます。例えば以下のようなものが挙げられます。
【関税の種類と適用方法の分類】
| ベースライン関税 (一律関税) |
すべての国からの輸入品に対して一律に課される関税。 |
|---|---|
| 国別関税 | 特定の国からの輸入品に対して課される関税。 |
| 品目別関税 | 特定の品目(例:鉄鋼、自動車)に対して課される関税。 |
| 相互関税 | 相手国が自国製品に課す関税率や非関税障壁を考慮して決定される関税。 |
税率の種類による分類
税率の適用条件や目的によって分類されるものです。関税率そのものの「性質や適用条件」に基づく分類で、「どの税率が適用されるか」に焦点が当てられます。大きく国定税率(国内法で定められた税率)と条約税率(国際条約に基づく税率)に分けられ、例えば以下のようなものが挙げられます。
【国定税率(国内法で定められた税率)】
| 基本税率 | 標準的な税率で、国内産業の状況を踏まえ、長期的に適用される。通常の輸入品に適用される税率。 例:国内の鉄鋼産業を守るために設定された標準的な税率。 |
|---|---|
| 暫定税率 | 一時的に基本税率を修正する必要がある場合に適用される税率。特定の品目や状況に応じて短期間で変更される。 例:急激な輸入増加による国内市場の混乱を防ぐために税率を引き上げる場合。 |
| 特恵税率 | 開発途上国からの輸入品に対して適用される優遇税率。原産地証明書などの条件を満たす場合に適用される。 例:途上国からの農産物に課される低税率。 |
| 簡易税率 | 入国者の携帯品や少額輸入貨物に適用される税率。簡易的で負担が少ない税率。 例:旅行者が持ち込むお土産品や20万円以下の輸入品。 |
【条約税率(国際条約に基づく税率)】
| 協定税率 | WTO加盟国との協定によって定められた税率。通常、国定税率よりも低い税率が適用される。 例:WTO加盟国から輸入される工業製品に適用される税率。 |
|---|---|
| EPA税率 | 経済連携協定(EPA)を締結した国との間で適用される税率。特定の品目について関税が撤廃または削減される場合がある。 例:日本とEU間のEPAで適用される税率。 |
また、税関のHPでは関税について詳しく記載があります。品目別の関税について、どれくらいの税率かイメージがわきやすいようにいくつかご紹介します。
【ご参考:衣料品の関税】
| 区分 | 品目 | 関税率 |
|---|---|---|
| 衣料品 | 毛皮のコート(43類) | 20% |
| 繊維製のコート、ジャケット、ズボン、スカート(61、62類) | 8.4~12.8% | |
| シャツ、肌着(61、62類) | 7.4~10.9% | |
| 水着(61、62類) | 8.4~10.9% | |
| ネクタイ(織物)(62類) | 8.4~13.4% | |
| マフラー類(61、62類) | 4.4~9.1% |
出典:税関HP
※2025年10月10日現在
※関税率及び各品目の関税率表上の所属区分は、原産国、品目の材質、加工の有無及び用途などによって大きく変わることがありますので、この関税率がそのまま適用されるとは限りません。目安とお考えください。
トランプ関税とは?:政策の概要
トランプ関税とは、2025年1月に発足した第2次トランプ政権が発表した一連の関税措置を指します。この政策の主な目的はアメリカ経済の保護であり、関税の引き上げによって輸入を抑制し、国内産業を活性化する狙いがあります。2025年4月に打ち出した方針は以下となります。
- アメリカが全世界からの輸入品に対して、10%のベースライン関税を設定
- 特定の国に対する国別関税(中国・カナダ・メキシコの3ヵ国を対象とした追加関税)
- 鉄鋼、アルミニウム製品、自動車部品に対する品目別関税を導入
- 貿易相手国との関税負担を調整するための相互関税
ベトナムは46%、タイは36%、中国は34%などと各国高い相互関税を強いられ、その中で日本は24%となりましたが、トランプ関税は、その規模と範囲の広さから世界経済に大きな影響を及ぼしました。
トランプ政権は、「アメリカ第一主義」「経済ナショナリズム」「力による平和」という3つの方針を政策の軸とし、国内産業を守るための強硬な姿勢を取っています。
この政策は、世界においてアメリカ国内の製造業の優位性を守り、格差や不平等を解消することを目指しています。アメリカの労働者や企業を保護するために、貿易政策を強化し、輸入品に対する関税を引き上げることで国内産業を支援し雇用を創出する一方で、国際貿易における摩擦を生む要因ともなったといえるでしょう。
結果として、日本を含めアメリカの貿易相手国はトランプ政権の関税政策に対抗するために様々な戦略を講じ貿易交渉を余儀なくされました。

トランプ関税の国際的な影響
トランプ関税の影響は世界規模であり、アメリカが各国からの輸入製品に高い関税を課すことで、アメリカで他国の製品が売れにくくなり、世界経済に大きなインパクトを与えています。トランプ政権は、中国、EU、日本など多くの国々に対して貿易赤字の是正を求め、関税を交渉の道具として活用しました。
貿易相手国がアメリカの関税に対抗するため、自国製品に対しても関税を引き上げることで、報復関税を課して対応する国もありました。しかし、相互の関税合戦は、結果的に国際的な貿易が停滞し、経済成長に悪影響を及ぼすことが懸念されます。
国際的な経済関係が悪化すると、企業は新たな市場を開拓することが難しくなり、グローバルなビジネス戦略にも影響を受けます。
特に中小企業にとって、このような状況は深刻な課題となります。中小企業は資金力やリスク耐性が限られているため、国際関係の変化による影響を直接受けやすく、経営が不安定になる可能性があります。また、少数の市場に依存している場合、貿易環境の悪化がその市場に及ぶと、事業の継続が難しくなることも懸念されるためです。
そのため、企業は状況に応じて柔軟に対応する戦略を持つことが求められます。
関税に備えるために
2025年4月に24%として設定された日本への相互関税は、同年の8月に15%に引き下げられることで合意に至りました。この合意により、アメリカでの日本からの輸入障壁が緩和され、日本の輸出産業にはプラスの効果が期待されるだけでなく、両国間の貿易関係の改善にもつながるため、ポジティブに評価されています。しかし、結果としてはトランプ関税発動前の2.4%よりは関税率が引き上がりました。
関税が企業や消費者へ影響を与える中、どのように備えれば良いのでしょうか。
企業の備え
企業にとっては、輸出先や輸入元の多様化が非常に重要です。特に現在、アメリカや中国に依存している場合は、他の地域への販路拡大を考える必要があると思います。また、サプライチェーンの見直しやコスト削減も欠かせません。これらの対策を講じることで、関税の影響を和らげ、競争力を維持することが可能になります。
個人の備え
現在、日本では円安の影響や原材料費・人件費の高騰なども重なり、物価が上昇しています。このような状況では、個人として家計の見直しや資産運用の観点からの対策を検討することが重要です。その中でも、投資は物価上昇に対抗する有効な手段の一つとして考えられています。
物価が上昇すると、現金の価値が目減りするインフレリスクが高まります。このリスクに対応するには、資産を現金のみに集中させず、株式、不動産、債券、金などの多様な資産に分散投資することも一つの手となります。また、同じ資産の中でも特定の地域や産業に偏るのではなく、国内外に幅広く分散することで、リスクの低減を図るのも有効と考えられます。

おわりに
トランプ政権の動向は、今後も予測が難しい状況が続くでしょう。
アメリカの政策は短期的に目まぐるしく変化する可能性があり、国際社会はトランプ氏の動向を注視しています。明るい未来に向けて個人や企業が生き抜くためには、状況を的確に把握し、柔軟かつ賢明に行動する力が求められています。
まずは、情報を正確に収集し、変化に対応する準備を整えることが重要です。また、リスクを分散し、持続可能な戦略を立てることで、予測不能な状況でも安定した生活や活動を続けることが可能になるかもしれません。小さな行動から始め、着実に対応力を高めることが、この不確実な時代を生き抜く鍵となるでしょう。
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