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「ステーブルコイン」の仕組みから使い方まで…メリットとリスクをわかりやすく解説

2025/11/14

知恵のハコ

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最近、「ステーブルコイン」という言葉を耳にする機会が増えてきました。しかし、その仕組みや特徴については、まだよく知らないという方も多いのではないでしょうか?
ステーブルコインは、価格が安定しやすい暗号資産として注目を集めており、銀行送金やクレジットカード決済よりも速く、安価な決済手段として期待されています。金融やテクノロジーの分野で急速に存在感を高めるステーブルコインは、私たちの生活やビジネスにどのような影響をもたらすのでしょうか。
本記事では、ステーブルコインの基本的な仕組みや特徴、メリット・リスク、そして今後の展望について、初心者の方にもわかりやすく解説します。

ステーブルコインとは?ビットコインと何が違う?

ステーブルコインとは、暗号資産のひとつで、ブロックチェーン技術を基盤としています。主に米ドルや日本円といった法定通貨、あるいは金などの現実資産と価格を連動させる仕組みにすることで、価格のブレを抑えるように設計されています。
種類としては、法定通貨担保型、暗号資産担保型、コモディティ担保型、無担保型などがありますが、代表的なステーブルコインであるUSDCやUSDTは、法定通貨担保型です。このタイプのステーブルコインは、発行元企業が発行額と同額の法定通貨を準備金として保有することで、その全額を法定通貨と1:1で交換できるように設計されています。

【ステーブルコインの仕組み(イメージ)】

ステーブルコインの仕組み(イメージ)

※上記は一例であり、全てを網羅したものではありません。

※各種資料をもとにアセットマネジメントOne作成

このため理論上、1USDCはちょうど1ドルの価値ですが、実際の取引では需要と供給の影響で価格が1ドルからずれることがあります。ステーブルコインでは、この価格差を利用して利益を得る「アービトラージ(裁定取引)」という取引によって価格が安定化します。
例えば、市場で1USDCが1ドルより高値で取引されている場合、発行元でドルをUSDCに交換し、市場でUSDCを売却すれば、差額分の利益が得られます。このアービトラージによって市場ではUSDCの売り圧力が高まり1ドルに戻す動きが起こります。こうした取引は、ステーブルコインの市場で常時行われています。

暗号資産の代表格、ビットコインやイーサリアムは、聞いたことがあるのではないでしょうか?(詳しくは「【初心者向け】ビットコインはなぜ注目?「怪しい」を「面白い」に変える暗号資産の教科書」の記事をご確認ください。)
これらは需要と供給のバランスだけでなく、法規制の動向や市場のニュースなど、さまざまな要因によって価格が激しく変動するため、日常の決済に使うには不安が残ります。この「価格の不安定さ」を解消するために登場したのが、ステーブルコインなのです。

<暗号資産とは>

インターネット上でやり取りできる、特定の国家や中央銀行に依存しないデジタル通貨のことを言います。紙幣や硬貨のように目に見える形はありませんが、ブロックチェーンという特別な技術によって、改ざんや消去が非常に難しく、安全に取引ができるようになっています。

<ブロックチェーンとは>

取引データを「ブロック」という1単位で記録し、その「ブロック」を「チェーン」のように繋いで保管する技術のことです。特徴として、管理者がいない、あるいは管理者でもデータの改ざんや消去ができず、多数の参加者が取引データを常にチェックしているため、不正を働く者がいたとしてもすぐに検知できます。また、データの閲覧は誰でも可能で透明性が高いことも大きな特徴の一つです。

ステーブルコインのメリットとリスク

ステーブルコインの仕組みが分かったところで、主なメリットとリスクを3つずつご紹介します。

メリット

  • ビットコインやイーサリアムといった暗号資産に比べて、「価格が安定しやすい」
  • 手数料が安く、スピーディーに送金できるため、「送金や決済に便利」
  • 裏付け資産の保有義務があるため、「信用度が高い」

1つ目「価格が安定しやすい」に関して、一般的にステーブルコインは現実資産と価格が連動するように設計されているものが多いです。発行元で直接法定通貨に交換できるものであれば、より市場を気にせず保有することができます。

2つ目「送金や決済に便利」について、これこそ今ステーブルコインが大きく注目されている理由でもあります。ウォレットと呼ばれる暗号資産を管理するアプリを持っていれば誰とでも自由に送金が可能なことに加え、1つ目のメリットからステーブルコインとして長期間保有しても価格が安定しているため、決済手段としても適していると言えるでしょう。ビットコインやイーサリアムなどに投資する際も、ステーブルコインを利用すれば、入金・換金の手数料がかからないなどのメリットがあります。

3つ目「信用度が高い」について、日本やアメリカ、ヨーロッパでは、法定通貨担保型のステーブルコインに関して、裏付け資産の保有が法律で義務付けられています。一般的な暗号資産と違い、「裏付け資産という価値を担保するものがある」こともステーブルコインのメリットと言えるでしょう。

リスク

  • 現実資産と連動して価格が変動する
  • 発行元の信頼性が揺らぐ可能性がある
  • 法規制の変更が行われる可能性がある

1つ目「現実資産と連動して価格が動く」に関して、これはメリットの「価格が安定しやすい」の裏返しですが、現実資産の価格自体が大きく変動した場合は、それに合わせてステーブルコインの価格も大きく変動します。自国通貨と連動するものであれば問題ありませんが、それ以外は価格変動リスクがあるということは理解しておきましょう。
また、ステーブルコインは現実資産の価格を超えて大きく上昇することは期待できないため、投資先としては適さない場合もあることに注意しましょう。

2つ目「発行元の信頼性が揺らぐ可能性がある」に関しては、ステーブルコインの発行元は、必ずしも公的な機関ではないため、もし発行元が倒産したり、不正を働いたりすると、ステーブルコインの価値がゼロになってしまう可能性もないとは言い切れません。
そこまで至らなくても、発行元の裏付け資産が不足したり、管理が不透明だったりすると、価格が連動しなくなり、信用が失われれば暴落する可能性があります。

3つ目「法規制の変更が行われる可能性がある」に関して、ステーブルコインは、新しい金融の仕組みであるため、各国で法律やルールがまだ完全に整備されているわけではありません。預貯金に適用されるような基本的な保護制度も存在せず、犯罪活動に関係する資産凍結を国際的な金融機関、例えば国際決済銀行(BIS)が要請しても、発行体の裁量に委ねられる状況です。
また、日本と海外で法規制に違いがあります。たとえば、海外で発行されたステーブルコインを日本国内の取引所が取り扱う場合、金額の上限規制(例えば1回あたり100万円相当額)が設けられているなど、厳しいルールがあります。「こんなはずじゃなかった」なんてことにならないように、最新の規制を把握しておきましょう。

世界で注目されるステーブルコイン

世界で今注目されるステーブルコインの情勢を整理したいと思います。

ステーブルコインの市場規模と成長性

世界でのステーブルコインの時価総額は3000億ドル程度あり、日本円にすると約45兆円(1ドル148.64円、2025年9月30日現在)、これは日本で時価総額が一番大きいトヨタ自動車と同じくらいの規模感です。
とはいえ、暗号資産市場全体でみれば、ビットコインやイーサリアムに比べて市場規模は小さく、まだまだステーブルコイン市場は、成長における初期段階と見ている関係者も多くいます。

主なステーブルコイン銘柄と市場動向

つづいて、ステーブルコインの銘柄にはどのようなものがあるのか見ていきましょう。
ステーブルコインの銘柄は様々ありますが、米ドルを担保にしたテザー(USDT)とUSDCのシェアが全体の8割を占めています

【ステーブルコイン時価総額ランキング】

ステーブルコイン時価総額ランキング
1 テザー(USDT) 約1,800億ドル
2 USDコイン(USDC) 約750億ドル
3 USDS(USDS) 約93億ドル
4 Ethena USDe(USDE) 約89億ドル
5 ダイ(DAI) 約46億ドル
6 USD1(USD1) 約30億ドル
7 PayPal USD(PYUSD) 約28億ドル
8 Currency One USD(C1USD) 約25億ドル
9 Falcon USD(USDF) 約21億ドル
10 テザーゴールド(XAUT) 約21億ドル

※各種資料をもとにアセットマネジメントOne作成

※2025年11月6日時点

【ステーブルコイン市場のマーケットシェア】

ステーブルコイン市場のマーケットシェア

※2025年9月1日時点でのCoinMarketCap掲載データを使用

※各比率の合計は四捨五入の関係で100%とならない場合があります。

出所:CoinMarketCapのデータをもとにアセットマネジメントOne作成

高いシェアを占めているUSDT、USDCの特徴を簡単にお伝えします。ステーブルコイン市場シェア1位のテザー社が発行するUSDTは、2014年に発行を開始し、取引所間の送金用途などとして普及し対応チェーンの多さや流通量で強みを持ちます。しかし、長らく担保の不透明さや監査の頻度・開示情報の少なさが指摘されてきた経緯があります。
一方、2位のサークル・インターネット・グループ(以下、サークル)が発行するUSDコイン(USDC)は、2018年に発行が開始されました。同社は米国の金融規制に準拠する姿勢を明確にしており、担保資産についても定期的に第三者機関から監査を受けていることから、USDCは他に比べて透明性や信頼性が高く、機関投資家や企業向けのサービスを呼び込むことが期待されています。 このように発行体1つとっても特徴が異なりますので、購入する前にそれらを把握しておくと良いでしょう。

国際送金市場拡大も後押しに

今後2030年には、世界の国際送金市場が300兆ドル(4.4京円)に迫るとの見方があります。そのような中、ステーブルコインは、現在の送金システム(SWIFT)に比べて、海外への送金が『低コスト』で『即時入金』できるため、さらに広がっていく可能性を秘めています。
また、ステーブルコインの日々の取引額(送金や暗号資産との交換などの合計)はこの夏以降、クレジットカード最大手のVisaカードの決済処理額を上回る規模になってきており、ステーブルコイン市場の勢いがうかがえます。
こうしたことから、VisaやMastercardは、ステーブルコインの成長スピードから取り残されないために対応を迫られています。

日本・米国の法整備の動向 ~日本は米国の2年前に法整備も~

日本では、フィンテック企業のJPYCが、ステーブルコイン(通貨単位は社名と同じ「JPYC」)の発行を10月27日より開始したことが話題になっています。
円建てのステーブルコインの発行は国内初で、国内企業によるステーブルコインの発行は金融庁にとっての悲願でもありました。
2023年6月施行の改正資金決済法で、ステーブルコインは他の暗号資産と区別する形で「電子決済手段」と定義され、金融庁は欧米に先駆けてステーブルコインの規制を整備した経緯があるのです。JPYCは、2025年8月に発行業者第1号の登録が認められました。

米国では、暗号資産に前向きなトランプ大統領が2025年7月、ドルに価値を連動させるステーブルコインの普及を促す「GENIUS(ジーニアス)法」に署名し発行しました。これによって、ステーブルコインを巡る規制が明確となり、アメリカの大手銀行の参入が相次いでいます。法整備とともに実用化の動きが世界で加速しています。

各国の状況

各国がステーブルコインのルールを設け始めています。その背景には、現在世界で流通するステーブルコインの大半がドル連動のため、各国の自国通貨の存在感が低くなる可能性があるからです。

中国は、2025年8月時点でステーブルコインの発行承認の検討段階です。暗号資産全体に厳しい規制が敷かれており、ステーブルコインも厳しく監視、利用が制限されています。
一方、香港では、2025年8月1日からステーブルコイン条例が施行され、ステーブルコインの免許制度が始まりました。まずは香港ドルや米ドルに連動するステーブルコインの発行により、ネット通販などでの利用が見込まれていますが、今後の市場の注目は、人民元建てのステーブルコインの発行の道が開けるかどうかです。香港を実験場とした取り組みは、中国でも進むとの見方を示す金融関係者もいます。

他にも、韓国では、大統領主導でウォン建ての発行を検討、カナダでは、ステーブルコインに対する規制導入をこれから検討する段階といった動きがみられます。
さらに、欧州に拠点を置くオランダの金融大手INGやイタリアの大手銀ウニクレディトら民間銀行9行は、2025年9月、ユーロを裏付けとしたステーブルコインの発行に向けて新会社を立ち上げると発表しました。

このように世界各国でステーブルコインの市場拡大に伴い、ルールを設け、普及を促す動きが出始めています。

実用化が進むステーブルコイン

アメリカでは、すでに普及が進んできています。

たとえば2025年6月から7月にかけて、暗号資産交換業大手の米コインベースは、カナダのEコマースプラットフォームのショッピファイ、米オンライン決済大手ストライプ、米銀行最大手のJPモルガン・チェースと相次いで提携を発表しました。
その結果、この2025年秋以降、米国在住者は、ショッピファイ加盟ECサイトでの支払いにステーブルコインを利用することができるようになります。今後はドル連動型ステーブルコインである「USDC」を支払い手段として世界34カ国で買い物ができるようになるのです。

DeFi(分散型金融)といった使われ方もあります。DeFiは、ブロックチェーン技術を利用して、従来の金融機関を介さずに金融サービスを提供する仕組みのことです。DeFiのサービスには融資や借り入れ、分散型取引所(ブロックチェーン技術の一部機能を利用することで、第三者を介さずにユーザー同士で直接暗号資産の取引をすることができる取引所のこと)での暗号資産の取引、資産管理、決済、保険などがありますが、そういったサービスの売買や、貸し借り、資産運用を行うためのブロックチェーン内での基軸通貨としてステーブルコインが広く使われています。従来の金融機関を仲介すると、利用者は手数料を支払う必要がありますが、ステーブルコインでDeFiを利用すると、そういった手間やコストがかかりません。DeFiを利用して高い利回りを狙う投資家が多く、これがステーブルコインの普及を後押ししています。

このような事例以外に、日本では地域振興のため、特定の地域でしか使えないステーブルコインがデジタル地域通貨として既に発行されており、普及していく後押しとなる可能性もあります。また、最近では大阪関西万博で決済などに利用されたアプリでもステーブルコインが使われ、万博終了後は、形を変えて引き続きステーブルコインとして利用できるようになる予定です。

このように、様々な場面で見られるようになったステーブルコインですが、今後もAI(人工知能)や、暗号資産の取引関連など、新しい経済圏で広がる可能性もあるため、注目され続けていくでしょう。

ステーブルコインの具体的な購入方法

では、日本でステーブルコインを売買するには、どのようにすれば良いのでしょうか?このところステーブルコインに関する日本の規制が整備され、ステーブルコインの取り扱いをする国内の暗号資産取引所も増えてきています。
以下が、ステーブルコインを取り扱っている主な国内取引所です。カッコ内は通貨単位になります。

  • コインチェック(DAI)
  • GMOコイン(DAI)
  • bitbank(DAI)
  • SBI VCトレード(USDC)(ZPG)
  • JPYC EX(JPYC)

取引所が取り扱うコインの種類は、通貨に比べて変わりやすいので、実際に取引を行う場合は最新情報を確認するようにしてください。

ステーブルコインを国内で購入するための手続きはいたってシンプルです。

ステップ1:口座開設

まずは、国内の暗号資産取引所に口座を開設します。
日本国内でステーブルコインを取り扱っている主要な取引所は上記の通りですが、今後、他の取引所でも取り扱いが拡大する可能性があります。
口座開設の手順は以下です。基本的にスマホと本人確認書類があれば手続きが完結するようになっています。

  • 取引所のウェブサイトやアプリから申し込む
    (メールアドレスや電話番号、基本情報の登録が必要です。)
  • 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)を提出
  • 審査が完了すれば取引開始

ステップ2:日本円を入金

口座開設が完了したら、銀行振込などで日本円を取引所の口座に入金します。

ステップ3:ステーブルコインを購入

入金した日本円を使って、取引所内でステーブルコインを購入します。

このように、簡単に購入手続きまで進むことができます。これまでお伝えしたメリットやリスクを把握し、今後の資産運用で活用することを検討しても良いかもしれません。

【まとめ】金融システムの変革が起こるか

ステーブルコインは、ただの暗号資産ではありません。各国の金融システムと深く結びつき、デジタル社会の新しい決済インフラとなる可能性を秘めています。

例えば、ステーブルコインの需要が高まると、その分預金から資金が移動し、銀行の収益構造に悪影響を与える可能性があります。こうした変化に対応するため、各国の銀行などの金融機関が中心となって、新たなデジタル通貨開発も進められています。

さらに、ステーブルコインの普及に伴い、ビットコインやイーサリアムといった暗号資産の市場も今以上に拡大し、金融市場全体の流動性が変化する可能性があります。

このようにステーブルコインの拡大は金融システム全体に影響を与える可能性があります。日本でもステーブルコインの発行が始まった今、時代を席巻する可能性のあるステーブルコインを無視することはできません。
皆さまはリスクを理解して、思わぬ損失につながらないよう、まずは「価格が安定しているわけではない」「発行元は信頼できるか」「法規制は?」という3つのポイントを確認し、ご自身の投資スタイルに合った活用方法を検討してみてください。

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