配偶者控除と配偶者特別控除の違いは?賢い働き方とは?
2025/11/21

「配偶者控除」も「配偶者特別控除」もよく聞くけれど、違いがよく分からない…。
「なんとなく年収の“壁”があるって聞いたけど、うちの場合はどうすればいいの?」
そんな疑問やモヤモヤを感じている方も多いのではないでしょうか。
実はこの2つの控除、ちょっとした知識と工夫で、家計の手取りをしっかり守ることができる大切な制度なんです。「難しそう」と敬遠せず、ポイントさえ押さえれば誰でも賢く活用できます。
本記事では、配偶者控除と配偶者特別控除の違い、それぞれの条件や控除額、そして「お得な働き方」のコツをわかりやすく解説します。
「税金や控除はよく分からない…」という方も大丈夫!まずは気軽に読み進めて、家計の味方になる知識を一緒に身につけましょう。
なお、本記事は原則として2025年12月1日に施行され、2025年分以後の所得税について適用される税制について記載してます。
配偶者控除と配偶者特別控除の基礎と違い
「配偶者控除」と「配偶者特別控除」は、結婚している方の家計をサポートするための所得税の制度です。どちらも、一定の条件を満たすと所得から差し引ける税金の優遇ですが、適用される条件や控除額に違いがあります。
2つの制度の基本と違い
配偶者控除とは、配偶者(夫または妻)が税法上の扶養にあたる場合に、納税者本人の所得から決まった金額を差し引くことができる制度です。具体的には、配偶者の年間合計所得が58万円以下(給与のみなら年収123万円以下)の場合に控除されます。
配偶者特別控除とは、配偶者が税法上の扶養にはあたらないものの、一定水準以下の所得である場合に、納税者本人の所得から控除できる制度です。具体的には、配偶者の年間合計所得が58万円超133万円以下(給与収入のみなら123万円超201.6万円未満)の場合に適用される制度です。配偶者の所得が増えるほど控除額は段階的に減りますが、一定の範囲内なら税金の優遇が受けられます。
【配偶者控除および配偶者特別控除の早見表】

出所:国税庁の情報をもとにアセットマネジメントOne作成
配偶者控除と配偶者特別控除は、配偶者が税制上の扶養にあたるか、あたらないかで決定的な違いがあります。しかし、上記の表からわかる通り、実は配偶者の所得が58万円以下でも58万円超95万円以下でも控除額は同じになります。
これは、配偶者特別控除が「配偶者の扶養が外れることへの抵抗感を減らし、働く意欲を妨げないこと」を目的としたものだからです。このため、配偶者控除は「専業主婦(主夫)世帯の税負担軽減」、配偶者特別控除は「就業調整の緩和」という根本的な目的の違いがあるものの、所得控除という観点では、配偶者特別控除が配偶者控除の延長線上にあるような設計になっているのです。
また、両制度は共通して以下のような条件があるため、こちらもセットで覚えておくと良いでしょう。
- 配偶者が民法上の配偶者であること(内縁関係は対象外)
- 配偶者と生計を一にしていること
- 配偶者が事業専従者として給与を受け取っていない、または白色申告者の事業専従者でないこと
- 納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下であること
控除額の具体例
例えば、配偶者の収入が給与収入の150万円のみの場合、給与所得控除65万円を差し引くと、合計所得金額は85万円となります。納税者本人の合計所得金額が900万円以下なら、配偶者特別控除は最大額の38万円となります。
また、配偶者の給与収入が200万円でそれ以外は同条件の場合、給与所得控除は「200×30%+8=68万円」となり、合計所得金額は132万円、納税者本人の配偶者特別控除は3万円となります。
【給与所得控除の早見表】

出所:国税庁の情報をもとにアセットマネジメントOne作成
制度を踏まえた賢い働き方とは?
配偶者控除や配偶者特別控除を上手に活用するには、「どこまで働くと、どれだけ控除が受けられるのか?」を知っておくことが大切です。ここでは、控除を最大限に活かすための年収調整のコツや、家計全体での考え方をやさしく解説します。
控除を最大化する年収調整の方法
2025年以降の税制改正により、控除を受けられる年収の目安が変わります。従来の「103万円の壁」の基準が変わり、控除を受けながら働ける範囲が実質的に広がりました。
新しい制度では、配偶者の給与収入が160万円までであれば、納税者本人は最大38万円の控除(老人配偶者控除の場合は48万円)を受けられます。
- 配偶者控除の新しい壁(123万円の壁)
配偶者の年収が123万円以下であれば、納税者本人は「配偶者控除」を満額(最大38万円)受けられます。これは、従来の103万円の基準が引き上げられた新しい目安です。
- 配偶者特別控除の新しい壁(160万円の壁)
配偶者の年収が123万円を超えても、160万円以下であれば、納税者本人は配偶者特別控除を満額(最大38万円)受けられます。また、配偶者自身の所得税もかからないため(給与所得控除65万円+基礎控除95万円=160万円)、世帯にとって非常に有利なラインです。
このため、多くの方にとって意識すべきは123万円の壁ではなく160万円の壁と言えるでしょう。また、控除額は配偶者の合計所得金額(5万円きざみ)に応じて段階的に減っていくため、収入調整をする場合は、控除が減額される直前のライン(4万円台や9万円台)を意識することが、世帯全体の手取りを増やすコツになります。
【配偶者控除および配偶者特別控除の仕組み】

※納税者本人の合計所得金額が900万円以下のケースです。
出所:首相官邸の情報をもとにアセットマネジメントOne作成
【基礎控除の見直し】

出所:国税庁の情報をもとにアセットマネジメントOne作成
働き方と控除の関係性
「控除が減るから働く時間を減らした方がいいの?」と不安になる方もいるかもしれませんが、配偶者特別控除は収入が増えるほど段階的に減る仕組みなので、基本的には「収入が増えた分手取りも増える」と考えて問題ありません。前述した「控除が減額される直前のラインを意識して収入調整する」などの工夫は有効ですが、本質的には働き控えを減らす仕組みになっていることは理解しておきましょう。
ただし、最適解を出すためには税金だけでなく、社会保険の扶養から外れるライン(年収130万円や106万円など)も考慮する必要があります。社会保険の扶養を超えると、健康保険料や年金保険料の負担が発生するため、これらを踏まえて総合的に判断しましょう。
世帯全体での手取り最大化の考え方
「控除を受けるために働き方を抑える」のか、「控除が減っても収入を増やす」のか、どちらが得かは、世帯全体の手取り額で考えることがポイントです。
配偶者の収入が増えることで控除額が減ったとしても、トータルの手取りが増えるなら積極的に働くのも選択肢です。
逆に、配偶者が社会保険の被扶養者の範囲内で働くことで、手取りや家計のバランスを重視したい場合は、社会保険の加入義務が発生する年収ラインを意識した働き方が有効です。
「お得な働き方」は、ご家庭の考え方やライフスタイルによってさまざまです。まずは、ご自身やご家族の希望、将来のプランに合わせて、どの年収ラインや働き方が一番合っているかを考えてみましょう。
よくある質問・注意点
配偶者控除や配偶者特別控除については、誤解や勘違いが生まれやすい制度です。
- 扶養控除との違い
配偶者控除は「民法上の配偶者」に対する控除です。これに対し、扶養控除は「子どもや親などの扶養家族」に対する控除ですので、混同しないよう注意しましょう。
- 「壁」を少し超えても大丈夫?
前述の「160万円の壁」を超えても、控除額は段階的に減っていく仕組みですので、急に大きく納税額が増えるわけではありません。しかし、社会保険の扶養の壁(106万円・130万円など)を超えると保険料の負担が発生するため、そちらのラインは特に注意が必要です。
- 内縁関係は対象外
「内縁関係でも控除が使えるのか?」という疑問をよく見かけますが、配偶者控除・配偶者特別控除は民法上の配偶者が対象であり、内縁関係(事実婚)は対象外となります。
- 申告手続きを忘れずに
控除を受けるには、年末調整や確定申告で申告手続きを行う必要があります。会社員など給与所得者の場合は、勤務先で年末調整の際に「配偶者控除等申告書」を提出します。自営業や副業がある場合は、確定申告書に必要事項を記入して申告しますが、申告を忘れると控除が受けられないため、毎年の収入や手続きをしっかり確認しましょう。
2025年の制度改正により、控除が受けられる配偶者の年収上限が引き上げられ、より多くの家庭が利用しやすくなっています。ただし、配偶者の収入や家族の状況によっては、社会保険の扶養や他の控除との関係も出てくるため、毎年の収入や家計状況を十分に確認することが大切です。
まとめ
配偶者控除・配偶者特別控除は、家計の税負担を軽減する大切な制度です。2025年税制改正により、配偶者控除の基準となる給与収入上限が123万円に、配偶者特別控除の満額上限が160万円に拡大し、制度はより使いやすくなりました。
世帯全体で手取りを最大化するには、160万円の壁と社会保険の壁(106万円、130万円など)の両方を意識することが重要です。また、配偶者特別控除の控除額が減る直前のラインを意識して収入調整をすることで、世帯の手取りが増える可能性があります。これらを踏まえながら世帯全体の手取り額で損得を判断しましょう。
この記事が皆さまの家計に少しでもプラスになれば幸いです。
(執筆:1級ファイナンシャル・プランニング技能士 佐藤 啓)
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