「103万円の壁」とは?引き上げで会社員も恩恵を受ける理由をわかりやすく解説
2025/01/09

最近ニュースでもよく見る「103万円の壁」というワード。とりわけ、パートやアルバイトで働く方が気にする「○○万円の壁」とは、年収の壁とも言い、日本の労働力不足に悪影響をもたらす要因の一つとして取りざたされています。
本記事では、「103万円の壁」とは何かを、その他の年収の壁と併せて説明します。また、現在議論が行われている103万円の壁の改正内容や、この改正が私たちに与える影響についてわかりやすく解説します。
そもそも「103万円の壁」とは?他の壁と何が違うの?
年収の壁にもいくつか種類があり、それぞれ意味が異なります。ここでは代表的な3つの壁について解説します。
103万円の壁
103万円の壁とは、会社員など給与所得者の所得税の支払いが発生する境界線を指します。逆に、年収が103万円以下なら所得税はかかりません。これは、給与所得控除55万円と基礎控除48万円を合わせた額が103万円となるためです。この壁を超えると、超えた分の課税所得に対して所得税を払うことになります。
106万円の壁
106万円の壁とは、従業員51人以上の企業などに週20時間以上勤務している方の社会保険料(厚生年金・健康保険)の負担が発生する境界線を指します。この壁を超えると、生計維持者の扶養から外れることとなり、今まで負担していなかった自分の分の社会保険料を支払う必要があります。厚生年金を負担すると将来受け取る年金が上乗せされるなどのメリットもあります。
こちらの壁についても、厚生労働省にて撤廃する(労働時間の要件だけを残す)方針で話が進められています。
130万円の壁
130万円の壁とは、従業員が50人以下の企業などで働く方の社会保険料(国民年金・国民健康保険)の負担が発生する境界線を指します。106万円の壁と内容は似ており、働く状況によってどちらか一方が適用されます。106万円の壁と違い、負担しても年金の上乗せがないため、より強く意識されやすい壁と言えるでしょう。
これらの壁があることで、働く時間を敢えて制限するケースも多くあり、103万円の壁は長年問題視されてきました。
出所:各種資料をもとにアセットマネジメントone作成
103万円の壁引き上げの議論がなぜ注目されるのか?
2024年12月11日、自民党、公明党、国民民主党の3党は103万円の壁を2025年から引き上げ、最終的に178万円を目指すことが明記された合意書を交わしました。これが実現すると、178万円以下の給与収入であれば所得税がかからなくなります。
この改正案を実現しようとする背景として、次のような要因が挙げられます。
1.働く意欲を高めるため
現行制度では、103万円を超えないように働き方をセーブする人が多く、これが労働力不足を助長させているとの指摘があります。壁を引き上げることで、人々の働き控えを防ぎ、より多くの収入を得るための働く環境を整えることができます。
2.税制の公平性の向上
103万円の壁は1995年基準から変更されていない基準であり、現在の基準は時代遅れとの声もあります。物価や賃金が上昇している現状に合わせて壁を引き上げ、低所得層の税負担を軽減する目的があります。
3.家計の余裕と経済活性化
103万円から178万円までの収入が非課税になることで、手取りが増え、その分が消費や生活改善に回ると期待されています。結果として、経済全体にプラスの影響をもたらす可能性があります。
会社員にも意外な恩恵がある!その理由とは?
103万円の壁の引き上げは、アルバイトやパートで働く方だけに影響があると思われがちですが、実は会社員の方にも直接的なメリットがあります。
所得控除の拡大による減税効果
壁が178万円に引き上げられることで、基礎控除などの仕組みが拡大され、現在の課税対象者についても課税所得が減ることになります。具体的には以下のような減税効果が期待されると言われています。
年収 | 減税額(試算) |
---|---|
200万円 | 9万円程度 |
500万円 | 13万円程度 |
800万円 | 23万円程度 |
※上記は一定の前提をもとにした試算であり、前提条件が異なると結果が大きく異なる場合があります。
出所:各種資料をもとにアセットマネジメントOne作成
このように所得控除が拡充されることで会社員も減税の恩恵を受けることができるのです。
将来への備えと生活の改善
上記の表から、実は年収が大きい方ほど減税効果が大きいことが分かります。減税により手元に残るお金が増えれば、その分が貯蓄や消費に使うことができるでしょう。
おわりに…今回の見直しは誰にとっても「壁」を越えるチャンス
103万円の壁を178万円に引き上げる動きは、主に学生や主婦(主夫)等を対象としたものと思われがちです。しかし、実際には会社員を含む多くの納税者に直接的な減税効果をもたらします。さらに、働きやすい環境を整えることで労働力不足を解消し、経済を活性化する可能性も秘めています。単なる税制改正ではなく、生活と経済の「壁」を越える一歩として、多くの人にメリットがある政策なのです。
現在、自民・公明両党の与党と、国民民主党などの野党の間で、税制改正の協議が行われています。焦点となっているのは控除額の引き上げ幅です。103万円から123万への引き上げ等様々な案が出ていますが、実際に当初案の178万円が実現されるのか、今後の動向に注目です。
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