今さら聞けない「日経平均株価」とは?「TOPIX」との違いを算出方法や構成銘柄で比較
2023/09/13
日本の代表的な企業の株価から算出される日経平均株価は、日本経済と株式市場の動向を把握する上で大切な情報です。「株価」と表され、日経平均株価へ投資できるイメージですが実際には直接投資できるわけではありません。今回は、日経平均株価についてTOPIXとの違いを算出方法や構成銘柄などから比較し、併せて日本経済との関係性についてまとめました。
日経平均株価とは
「日経平均株価」とは日本経済新聞社が算出、公表している株価指数です。
「日経平均」や「日経225」とも呼ばれ、東京証券取引所のプライム市場に上場する約1,800銘柄の中から選ばれた225銘柄の株価をもとに算出される指数で、表示単位は円・銭です。
算出方法
「225銘柄の株価合計÷銘柄数」で算出され、株価の平均と言えます。単純に平均というわけではなく公表指数は、株式分割や併合、採用株式の入れ替えなどにより生じる株価変動を修正され公表されています。株価が高い銘柄ほどウェートが高くなり、指数に与える影響も大きくなる株価平均型の指数です。
銘柄選定
約1,800銘柄の中から、255銘柄はどのように選ばれるのでしょうか。
銘柄の選定は日本経済新聞社によって年2回(4月、10月の第1営業日)入れ替えが行われます。
2022年4月、東京証券取引所では4つの市場(東証一部・東証二部・JASDAQ・マザーズ)から、プライム・スタンダード・グロースの3つの市場へ再編されました。日経平均株価の属するプライム市場は従来の東証一部に相当するため、高いガバナンス水準を備えた銘柄であることがうかがえます。
「市場流動性」と「セクター間のバランス」が評価の軸となり、長期間にわたる継続性の維持と産業構造変化の的確な反映という2つの側面を満たすことを目指します。
市場流動性とは、5年間の「売買代金」と「売買代金当たりの価格変動率」で計測されます。あわせて、日経業種分類(36業種)6セクター(技術、金融、消費、素材、資本財・その他、運輸・公共)の分類から、バランスも考慮され選定されます。
【6セクターと36業種】
技術 | 医薬品、電気機器、自動車、精密機器、通信 |
---|---|
金融 | 銀行、その他金融、証券、保険 |
消費 | 水産、食品、小売業、 サービス |
素材 | 鉱業、繊維、紙・パルプ、化学、石油、ゴム、窯業、鉄鋼、非鉄、金属、商社 |
資本財・その他 | 建設、機械、造船、輸送用機器、その他製造、不動産 |
運輸・公共 | 鉄道・バス、陸運、海運、空運、倉庫、電力、ガス |
TOPIXとは
「TOPIX」とは「東証株価指数」とも呼ばれ、やはり日本の株式市場を表す馴染み深い指数として耳にするかと思います。
算出方法
TOPIXは東京証券取引所より算出され、1968年1月4日に記録された時価総額(株価×発行済み株式数)を基準指数100ポイントとし、この基準指数を用いて算出されます。表示単位はポイントです。
「算出時の時価総額÷基準時の時価総額(1968年1月4日時点)×100」とし、基準時からのポイントの増減を示します。株式市場で実際に売買され、流通する可能性の高い「浮動株」の時価総額をもとに算出する、浮動株時価総額加重型と呼ばれる算出手法を用います。
日経平均株価とは異なり、時価総額が大きい銘柄の影響を受けやすいため、より日本株式市場全体の動きを反映しやすいのが特徴です。
銘柄選定
TOPIXは2023年7月末時点で、各市場から選定された2,158銘柄が属しています。
現在は前述した市場編成後の移行期間中で、銘柄の見直しを実施している最中です。
2022年10月末~2025年1月末を移行期間と定め、流通株式時価総額100億円未満の銘柄については「段階的ウェート低減銘柄」とし、四半期毎の最終営業日に構成比率を調整し、組み入れ比率が見直されます。判定は既に施行され、2021年7月、2022年10月、2023年10月の評価をもとに2025年1月末までに改善が認められなければ完全にTOPIXから除外されます。
尚、移行期間中における新規銘柄については、プライム市場に新規上場する銘柄のみをTOPIXの構成銘柄に追加します。
日経平均株価とTOPIXの違いは?
上記から日経平均株価とTOPIXは算出方法、銘柄選定等、様々な違いがあることが分かりました。ここでは基本情報の違いや銘柄の特徴、値動きについて確認していきましょう。
日経平均株価 | TOPIX | |
呼び名 | 日経平均、日経225 | 東証株価指数 |
対象 | プライム市場の中の225銘柄 | [継続] 市場に関わらず市場編成前の構成銘柄は継続採用 [新規] プライム市場に新規上場する銘柄 |
銘柄数 | 255 | 2,158(2023年7月末時点) |
表示単位 | 円・銭 | ポイント |
算出元 | 日本経済新聞社 | 東京証券取引所 |
算出方法 | 【株価平均型】 株価の平均 |
【浮動株時価総額加重型】 基準時価総額からのポイントの増減 |
特徴 | ・株価が高い銘柄の影響を受けやすい ・上位の株価による指数への影響は相応に大きい |
・時価総額の大きい銘柄の影響を受けやすい ・1つの銘柄による指数への影響は小さい |
※2023年7月末時点
出所:日本経済新聞社、日本取引所グループのデータをもとにアセットマネジメントOne作成
構成銘柄の違い
構成銘柄や算出方法が異なるため、それぞれの指数に特徴があります。ここでは、上位10銘柄を比較し特徴を見てみましょう。
日経平均株価は、上位の構成は1単元(通常の株式取引で売買される売買単位)あたりの株価水準が高い「値がさ株」が目立つのが特徴です。2023年7月末データでは、構成比率上位10銘柄中4銘柄は株価上位10銘柄に入ります。逆に、なぜ単純な株価順でないかと言えば、前述したとおり株式分割や併合、採用株式の入れ替えなどにより生じる株価変動を修正しているためです。 構成比率上位10銘柄は、全体のウェートの39.5%にあたります。そのため、上位の株価は全体の値動きへの影響が大きいことが分かります。
【日経平均株価 構成上位10銘柄】
順位 | 銘柄名 | ウェート | 業種 | 株価 (円) |
1 | ファーストリテイリング | 10.9% | 小売業 | 35,560 |
2 | 東京エレクトロン | 6.5% | 電気機器 | 21,245 |
3 | ソフトバンクグループ | 4.4% | 通信 | 7,242 |
4 | アドバンテスト | 4.0% | 電気機器 | 19,525 |
5 | ダイキン工業 | 2.9% | 機械 | 28,690 |
6 | KDDI | 2.6% | 通信 | 4,187 |
7 | 信越化学工業 | 2.4% | 化学 | 4,679 |
8 | ファナック | 2.2% | 電気機器 | 4,348 |
9 | テルモ | 1.9% | 精密機器 | 4,651 |
10 | TDK | 1.7% | 電気機器 | 5,437 |
合計 | 39.5% |
※2023年7月末時点
※個別銘柄の掲載は当該銘柄の売買を推奨するものではありません。
出所:ブルームバーグのデータをもとにアセットマネジメントOne作成
一方、TOPIXは、時価総額と流動性が高い上位100銘柄に属する「大型株」といわれる銘柄が構成比率の上位を占めます。2023年7月末データでは、構成比率上位10銘柄中7銘柄は時価総額の上位10銘柄に入ります。
銘柄数は約2,200と多いため、1つの銘柄のウェートが小さいのが特徴です。そのため、固有銘柄による全体への影響も相対的に小さいと言えます。日経平均株価、TOPIXともに、構成銘柄上位の業種は「電気機器」の割合が大きくなっています。
【TOPIX 構成上位10銘柄】
順位 | 銘柄名 | ウェート | 業種 | 時価総額 (兆円) |
1 | トヨタ自動車 | 4.0% | 自動車 | 38.9 |
2 | ソニーグループ | 2.9% | 電気機器 | 16.8 |
3 | 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 2.1% | 銀行 | 14.5 |
4 | キーエンス | 1.9% | 電気機器 | 15.5 |
5 | 日本電信電話 | 1.6% | 通信 | 14.8 |
6 | 三菱商事 | 1.4% | 商社 | 10.4 |
7 | 三井住友フィナンシャルグループ | 1.4% | 銀行 | 9.0 |
8 | 日立製作所 | 1.4% | 電気機器 | 8.7 |
9 | 東京エレクトロン | 1.4% | 電気機器 | 10.0 |
10 | 三井物産 | 1.3% | 商社 | 8.6 |
合計 | 19.3% |
※2023年7月末時点
※個別銘柄の掲載は当該銘柄の売買を推奨するものではありません。
出所:ブルームバーグのデータをもとにアセットマネジメントOne作成
値動きの比較
1980年からの値動きを比較して見てみます。それぞれ算出手法は異なりますが、長期的な値動きの方向性はほぼ一致します。ただし、短期的な値動きの大きさに違いがみられることが分かります。
【日経平均株価とTOPIXの推移】
※期間:1980年1月末~2023年7月末(月次)
※上記は過去の情報であり、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。
出所:ブルームバーグのデータをもとにアセットマネジメントOne作成
日本経済との関係
市場の値動きは、経済指標や金融政策といったファンダメンタルズ要因や、戦争やテロ、災害などのリスク要因など、様々な事象から影響を受けます。指数の大きな上昇、下落となった起点では、世界的規模で影響を与えた出来事と重なる点も多くあります。
ここでは、日経平均株価の推移に出来事と重ね合わせ、値動きへの影響を見てみましょう。
【日経平均株価と過去の出来事】
※期間:1980年1月末~2023年7月末(月次)
※価格は取引時間中を含めた高値あるいは安値を表示しています。
※上記は過去の情報であり、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。
出所:ブルームバーグのデータをもとにアセットマネジメントOne作成
バブル経済の引き金となった大きな要因として、1985年のプラザ合意があります。その後、1989年の年末、バブル崩壊と共に日経平均株価が暴落しました。それにより、日本経済は「失われた10年」と呼ばれ、景気後退、長びく不況の入り口となりました。
2001年には米国同時多発テロが発生、その翌日に日経平均株価は急落し、さらに米国の景気悪化の懸念やイラク戦争の影響も受け下落を続けました。その後、回復の兆しがみられましたが、2007年のパリバ・ショック(サブプライムローン問題)発生、翌年のリーマンショックを受け、世界中の経済が混乱し、日経平均株価はバブル後の最安値を記録しています。
2012年には、第2次安倍内閣が発足しアベノミクスと称する経済政策案を発表し、海外投資家の日本株買いを背景に日経平均株価は上昇しました。2015年のチャイナショックによる中国経済の不安や2020年のコロナショックでの世界的規模のパンデミックもあり、もみ合う展開となりましたが、その後は堅調に推移しています。
過去の出来事を読み解くことで、どのように日本経済と日経平均株価が連動しているかのヒントを得られるのではないでしょうか。
日経平均株価に投資できる?
日経平均株価は「株価」と表され直接投資できそうなイメージですが、実際には直接指数へ投資することはできません。
個人投資家が指数への投資を手軽に実現できる商品として代表的なのがインデックスファンドと呼ばれている投資信託です。インデックスファンドは日経平均株価やTOPIXなどの指数の動きに連動することを目指します。
インデックスファンドを保有することは、指数の構成銘柄を指数の構成比率と同じ配分で持つこととほぼ同じ効果があり、分散投資によって個別株を保有するよりリスクの軽減が期待できます。
特に、日経平均株価やTOPIXといった知名度の高い指数は、価格情報も入手しやすいため、これらの動きに連動を目指すインデックスファンドは身近なものに手軽に投資できる金融商品として重宝されています。
まとめ
日本経済を紐解くカギとして、日経平均株価が世界中で活用されています。
今回は日本株式を代表とする「日経平均株価」や「TOPIX」を取り上げましたが、米国株式には「NYダウ」や「S&P500」、世界株式には「MSCI WORLD インデックス」などの指数もあります。
このような指数を知っておけば、日本経済だけでなく世界経済の現状や傾向がわかり、投資の幅がさらに広がるのではないでしょうか。
※「日経平均株価」は、株式会社日本経済新聞社によって独自に開発された手法によって、算出される著作物であり、株式会社日本経済新聞社は、「日経平均株価」自体および「日経平均株価」を算定する手法に対して、著作権その他一切の知的財産権を有しています。
※東証株価指数(TOPIX)の指数値および東証株価指数(TOPIX)にかかる標章または商標は、株式会社JPX総研または株式会社JPX総研の関連会社(以下「JPX」という。)の知的財産であり、指数の算出、指数値の公表、利用など東証株価指数(TOPIX)に関するすべての権利・ノウハウおよび東証株価指数(TOPIX)にかかる標章または商標に関するすべての権利はJPXが有しています。
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