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脱炭素社会の行方は?トランプ政権の政策転換とその影響

2025/04/22

知恵のハコ

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2025年、世界の脱炭素社会実現に向けた動きは大きく変化しています。影響を与えているのが1月の第二次トランプ政権の誕生です。本記事では、脱炭素社会実現に向けたこれまでの取り組みをおさらいし、影響を与えているトランプ政権の政策と脱炭素社会実現の今後について解説します。

脱炭素とは?

脱炭素とは、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出を削減し、地球温暖化を防ぐ取り組みのことを指します。具体的には、再生可能エネルギーの利用促進、エネルギー効率の向上、電気自動車の普及、産業プロセスの改善などが含まれます。脱炭素化は、持続可能な社会を実現するための重要な課題となっています。

政府や企業の国際的な取り組みの例

政府の取り組み

地球温暖化対策の国際的な枠組みとして2015年にパリ協定が採択されました。世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べ2℃より十分低く保つことを目標とし、この目標達成のために脱炭素に向けた取り組みを推進しています。各国は温室効果ガスの排出量の目標を示しており、特に先進主要国では2050年にネットゼロ(温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにすること)の実現を表明しています。

企業の国際的な取り組みの例

NZBA:NZBAはNet-Zero Banking Allianceの略称で、2050年までに脱炭素を目指す金融機関の国際的な枠組みです。2021年4月に国際連合環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)が設立され、設立当初は世界43の銀行が加盟しました。投融資のポートフォリオにおいて、ネットゼロを目指すことを目的とし、脱炭素化に向けた戦略策定のほか、先進的な取り組みを行う銀行との情報共有が可能な枠組みです。

NZAM:NZAMはNet-Zero Asset Managersの略称で、パリ協定の目標に沿い、2050年までに脱炭素を目指す資産運用会社の国際的な枠組みです。2020年12月に設立され、当初は世界30の資産運用会社が加盟しました。投資先企業のネットゼロを目指すことを目的とし、各社は2030年に向けた中間目標を設定しています。

脱炭素関連の投資信託

国内では2025年3月末時点で脱炭素関連の投資信託は数多く存在しています。アセットマネジメントOneでも脱炭素に取り組む企業に注目するファンドを設定・運用しており、業界ではファンド名のみに着目しても、「脱炭素」と付くファンドは8本、「サステナブル」と付くファンドは14本、「ESG」と付くファンドは54本(DC、ラップ含む)あります。多くのファンドが2020年から2022年にかけて設定されており、その間にバイデン前政権が脱炭素化推進に関連する政策を推進してきたことがその要因の一つであると考えられます。

脱炭素関連の投資信託

脱炭素社会実現に影響するトランプ政権の政策

米国第一主義を掲げるトランプ大統領は、バイデン前政権が推進してきた脱炭素社会実現への取り組みから大きく政策を転換させました。大きな違いとしては、パリ協定からの脱退と化石燃料の促進が挙げられます。

パリ協定脱退

トランプ大統領は2025年1月20日の就任式直後にパリ協定脱退の大統領令に署名しました。トランプ大統領は一次政権時代の2017年にもパリ協定からの脱退を表明しており、「アメリカの製造業を制約する不公平な協定だ」などと主張していました。トランプ一次政権後の2021年に就任したバイデン前大統領は、離脱撤回の大統領令に署名し、パリ協定へ復帰していました。

化石燃料促進

トランプ大統領は就任演説時に国家エネルギー非常事態を宣言し、「drill, baby, drill」(掘って、掘って、掘りまくれ)と呼びかけました。背景には、エネルギー価格の高騰を一因とした物価上昇が関係しており、化石燃料の増産によって、エネルギー価格を引き下げる狙いがあります。また、再生可能エネルギーの推進を行ってきたバイデン前政権とは対照的に、クリーンエネルギーに対する支援の縮小を進めています。具体的には、脱炭素支援に関する支払いの停止や風力発電所の建設を認めない大統領令を出し、化石燃料使用の促進を行っています。

トランプ政権発足後の動向

第二次トランプ政権の発足前の2024年12月初旬以降、米国を中心にNZBAやNZAMからの脱退が相次ぎました。NZBAではゴールドマン・サックス・グループやウェルズ・ファーゴ、シティグループ、バンク・オブ・アメリカ、モルガン・スタンレーといった米国の大手銀行が脱退しました。国内では2025年3月に入って三井住友FGの脱退を皮切りにその他の金融機関も脱退し、4月4日現在、国内で加盟する金融機関は三井住友トラストグループの1社となりました。
NZAMでは、12月初旬にバンガード・グループが脱退を表明し、共和党から地球温暖化に関する取り組みについて批判を受けていたブラックロックも米大手銀行のNZBA脱退の動きに続いた形で2025年1月初旬に脱退しました。国内では4月4日現在、東京海上アセットマネジメントのみが脱退をしていますが、今後もこのような流れが続く可能性があります。
ただし、NZBAやNZAMを脱退した企業が脱炭素社会実現の活動を一切取りやめたわけではないということには留意が必要です。

脱炭素社会に向けた取り組みの今後

ご紹介の通り、脱炭素社会実現への道は第二次トランプ政権の誕生によって停滞しています。しかし、地政学リスクを専門に分析する米国のコンサルティング会社ユーラシア・グループの社長であるイアン・ブレマー氏は「それでも、ワシントンからの命令で再エネ転換を止めることはできない」と述べています。理由としては、エネルギー使用量増加への対応と送配電網の安定性確保のために再エネ導入を増加させる可能性があるからです。さらに、ロシア・ウクライナ戦争で顕在化したエネルギー安全保障を向上させるために、欧州においてはエネルギー転換をこの問題の解決手段として捉えているからです。
そのため、トランプ大統領であっても再生可能エネルギーへの転換および脱炭素化への移行を阻止することはできないでしょう。トランプ大統領の任期は4年ですが、それを待たずして脱炭素化実現への流れが再び動き出す可能性もあり得ると筆者は考えます。

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