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ガソリン価格は本当に安くなるの?暫定税率廃止と補助金政策をわかりやすく解説!

2025/08/01

知恵のハコ

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「暫定税率廃止」という言葉を最近よく耳にするようになったのではないでしょうか。

「暫定税率」が廃止された場合、ガソリン価格が安くなるかもしれないという期待もありましたが第217回国会ではその実現は見送られました。引き続き廃止の動向が気になるところです。

もし今後、この法案が見直された場合、私たちの生活にどのような影響を与えるのでしょうか。本記事では、暫定税率とは何か、ガソリン価格がどのように決まるのか、そして将来のガソリン価格について考えてみたいと思います。
もしかしたら、あなたの生活に嬉しい変化が訪れるかもしれません。一緒にガソリン価格の現在と未来を探っていきましょう!

暫定税率と廃止が私たちに与える影響とは

暫定税率とは

まずは、暫定税率について確認しましょう。
ガソリン税は元々道路整備のための特定の財源として設定されましたが、1974年に財源不足や環境保全のため、税率の引き上げが始まりました。この引き上げは一時的なものとされ、「暫定税率」と呼ばれ本則税率に上乗せされました。

その後も長期にわたり道路特定財源として引き上げが続きましたが、2009年頃に見直しがあり、暫定税率を廃止する代わりに同額分の特例税率が創設され一般財源に組み込まれ、「当分の間税率」として25.1円の上乗せ分として実質的に税率を維持しました。

この当分の間税率の廃止をかつてのように求めている動きとして審議されている内容が、現在便宜的に呼ばれている「暫定税率廃止」ということになります。

暫定税率とは

※各種情報をもとにアセットマネジメントOne作成

ガソリン価格の決まり方

ガソリン価格についてもう少し詳しく見ていきましょう。
ガソリン価格は複数の要因が関与していますが、主に「本体価格」と「税金」から成り立っています。

【ガソリン価格の内訳】

ガソリン価格の内訳

●供給と為替変動

ガソリンのもととなる原油の産油国は、米国、ロシア、中東、南米など世界各地にあります。ちなみに、日本は主に中東地域から原油を輸入しています。輸入価格は、原油の国際価格が大きな影響を与えます。国際価格は需給バランス、地政学的リスク、OPEC(石油輸出国機構)の生産調整、世界経済の動向などによって変動します。また、日本は多くの原油を米ドルで購入するため、円と米ドルの為替レートもガソリン価格に直接影響します。

●精製プロセスによる中間コスト

輸入された原油は石油会社によって精製され、ガソリンや他の石油製品に加工されます。この過程で発生する精製コストには、設備の維持費、運転費用、労働力の費用が含まれます。また、精製されたガソリンを消費地まで輸送するための輸送コストも考慮されます。輸送コストは輸送手段(船舶、パイプライン、タンクローリーなど)や距離、燃料費に依存します。

●小売店の維持管理費

ガソリンスタンドで販売価格(税抜き)が決定されます。価格設定には人件費、光熱費、土地の賃借料、設備の維持費などの経費が含まれます。さらに、各ガソリンスタンドは競争状況や地域の需要に応じて価格を調整します。

●税金

消費税、石油石炭税、ガソリン税(本則税率と暫定税率(本則税率上乗せ分))から構成されています。本則税率は法律で定められた基本的な税率で、暫定税率は道路整備など特定の目的のために追加されたものです。

このように、ガソリン価格は原油の国際価格、為替相場、精製・輸送コスト、ガソリンスタンドの経費、税金など、複数の要因が複雑に絡み合って決定されます。

暫定税率廃止によりどのような影響があるか?

では、廃止となった場合、どのような影響があるのでしょうか。

●ガソリン価格低下による恩恵

ガソリン価格は相対的な物価高の要因の一つです。そのため、ガソリン価格の低下は同時に多方面への価格低下にもつながることが予想されます。運送コスト削減による結果的な物価低下、燃料低減による加工費安定による間接的な物価低下、交通コストの低下による観光業への好影響など、複合的な価格低下が見込まれます。

●地方活性化の可能性

地方は自家用車が生活に不可欠な存在であるため、都心に比べてガソリンの消費ウエイトも大きくなる傾向があります。そのため、「ガソリン購入価格の低下→その分他の消費活動へ→消費活動の広がりや活発化」という流れは地方でより顕著に現れる可能性があります。

●税収減少の懸念

特に地方では暫定税率の税収がなくなることにより、道路整備等の財源不足の懸念が大きくなります。そのため、政府は他の財源から補填をする方向になるため、財源調整の必要性が出てきます。

●脱炭素との乖離

暫定税率の廃止によってガソリン価格が低下すると、消費が促進される可能性があります。これは、脱炭素の流れに逆行する懸念を引き起こす要因となります。世界的に脱炭素が進められている中で、化石燃料の使用が増加するリスクも浮上しています。このような動きは、持続可能な社会の実現という目標と相反し、長期的には環境問題の悪化や気候変動の進行を助長する可能性があります。

冒頭にも記載の通り今後の見通しの中で議論が進むことも予想されるため引き続き、今後の動向に注目です。

ガソリン価格の推移

ガソリン価格は2004年以降、上昇傾向が徐々に強まりました。経済産業省の給油所小売価格調査によれば、2008年にはレギュラーガソリンの価格が1リットルあたり150円を超えることが頻繁にありました。直近では2023年以降、ガソリン価格が170円を超える推移を見せており、高値の水準を記録しています。

このようなガソリン価格の高騰を緩和するために、政府は補助金政策を導入しました。この政策は、消費者の負担を軽減し、経済活動への影響を抑えることを目的としています。

【レギュラーガソリン価格推移(全国)】

レギュラーガソリン価格推移(全国)

出所:経済産業省資源エネルギー庁「給油所小売価格調査(ガソリン、軽油、灯油)」をもとにアセットマネジメントOne作成

※期間:1990年8月27日~2025年6月23日(日次)

ガソリン価格が10円の値下げ?政府の補助金政策とは

政府は、世界的なエネルギー価格の上昇による物価高騰に迅速に対応するために、「燃料油価格定額引下げ措置」として、ガソリン1リットルあたり定額で10円を補助する政策を発表しました。
2025年5月22日から施行され、補助は急激な価格変動による混乱を避けるため、1回あたりの変動幅を最大5円程度に抑えながら、2025年7月を目安に段階的に移行する予定となっております。経済産業省資源エネルギー庁のウェブサイトによると、以下の減額内容が発表されています。

  • 旧暫定税率が課されているガソリン・軽油については10円
  • 旧暫定税率が課されていない重油・灯油については5円、航空機燃料については4円

ガソリン価格が10円の値下げ?政府の補助金政策とは

画像出典:経済産業省 新たな燃料価格支援策(燃料油価格定額引き下げ措置)についてより

2025年4月上旬のレギュラーガソリン価格は全国平均で1リットル185円程度ですが、10円の補助が適用されると175円程度になり、2022年3月の水準を目標に、負担軽減が期待されています。

結果的に、ガソリン価格の上昇を抑制し、生活必需品としてのガソリンを利用する家庭に対して直接的な支援を行う方針です。暫定税率廃止と併せて、生活費の圧迫を軽減し、経済活動をサポートすることが期待されています。

ガソリン価格の未来予測とその影響

ガソリン価格はさまざまな要因によって変動するため、未来の価格を正確に予測することは困難ですが、いくつかのトレンドや影響を考察することは可能です。特に、再生可能エネルギーの普及やエコカーの増加が、ガソリン価格に与える影響が注目されています。

ガソリン価格の未来予測とその影響

ガソリン価格を見通す際の注目材料

●再生可能エネルギーへの転換

近年、環境問題への関心が高まり、再生可能エネルギーの導入が進んでいます。太陽光や風力、バイオ燃料などの代替エネルギーの普及は、ガソリン需要に影響を与える可能性があります。エネルギー自給率の向上や温室効果ガスの削減を目指す政策が進む中、これらの新しいエネルギーへの転換は、ガソリン価格変動要因の一つとなるでしょう。再生可能エネルギーが主流になることで、化石燃料の需要が減少し、価格が安定する可能性もあります。

●電気自動車の普及

電気自動車(EV)の普及は、ガソリン価格に影響を与える重要な要因です。政府はEVの普及を促進するために、補助金や税制優遇措置を導入しています。EVの普及が進むことで、ガソリンの需要が減少し、結果としてガソリン価格にも影響が及ぶと考えられます。しかし、充電インフラの整備や電池技術の進展に関する課題が解決されるまでには、当面時間がかかるでしょう。

●ライフスタイルの変化による影響

近年のライフスタイルの変化は、ガソリン需要に影響を与えています。少子高齢化や都市部への人口集中により、自動車の保有をしない傾向が強まっています。また、公共交通機関の利用やシェアリングサービスの普及、リモートワークの普及も移動の必要性を減少させています。
これにより、ガソリン消費量が減少し、結果としてガソリン価格にも影響を及ぼす可能性があります。ライフスタイルの変化は、今後のエネルギー市場における需給バランスを変える重要な要因となるでしょう。

●地政学的リスクと供給の不安定さ

前述のとおり、原油価格は地政学的リスクや供給の不安定さによって影響を受けます。世界の紛争や中東地域の情勢変化、OPECの生産調整は国際価格に直結するため、ガソリン価格が急激に変動する可能性があります。

ガソリン価格の今後の見通し

国際エネルギー機関(IEA)は2024年6月に、2030年までの石油市場の見通しを発表しました。石油の需要は2029年にピークを迎え、その後減少する見込みとしています。2024年には大幅な供給不足が発生したものの、その後は余剰生産能力が増加し、供給過剰が続くと予測されています。 EVの普及によってガソリン需要は2025年に減少に転じ、その後はマイナス成長となる見通しです。さらに、全体的な石油製品に関する需要は2026年から下降傾向に入るとされています。 これに伴い、「価格」は供給量に影響を受けながらも石油製品全体で下降トレンドを形成すると考えられます。

【基本シナリオの石油需給バランス】

基本シナリオの石油需給バランス

画像出典:国際エネルギー機関(International Energy Agency)IEAによる石油市場中期見通しより

※mb/d(million barrels per day:日量百万バレル)

【製品別需要成長】

製品別需要成長

画像出典:国際エネルギー機関(International Energy Agency)IEAによる石油市場中期見通しより

まとめ

なんとなく耳にした「暫定税率」の正体について、より鮮明になったのではないでしょうか。

身近な「ガソリン」について、価格の変動要因やその影響、政策的対応についても詳しく解説しました。ガソリン価格が安くなることは、私たちに多大な影響を及ぼします。また最近では、ガソリン燃料だけでなく、環境への配慮から他のエネルギーへの転換が世界的に進んでいます。これらのエネルギー転換は相互に関連し合い、将来的に価格に変動をもたらす大きな要因となるでしょう。

暫定税率廃止の動きは今後の見通しの中でも議論が進むことが予想されますので、政府の動向には注視する必要がありそうです。もしガソリン価格が安くなれば、私たちにとって嬉しい変化をもたらすかもしれません。引き続き、これらの状況を見守っていきたいと思います。

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