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FPシリーズ(1):社会保険のイロハ…社会人の必須知識をわかりやすく解説

2022/02/02

知恵のハコ

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「資産運用で大切なのはライフプランニングだ。」とお聞きになられた方は多いのではないかと思います。というのも、「2,000万円問題」で話題となった「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書」には「ライフプラン」というキーワードが実に20回も出てきており、メディアでも取り上げられたからです。

では、なぜ資産運用でライフプランを考える必要があるのでしょうか?
筆者は、人生を俯瞰してキャッシュフローがどのように変化していくのかを把握し、それを改善しながら適切な運用を継続することで、一生涯にわたって金融資産が枯渇しないようにすることが大切だと考えています。そのためにも、社会保険を理解しておくことが大きなプラスになると思います。

資産運用はライフプランニングから

ライフプランに沿った資産運用を考える際に「ゴールからさかのぼって考える」というものがあります。米国で提唱されたこの考え方は、「ゴール・オリエンテッド・アプローチ」(明確な目標を設定した手法)や「ゴールベース・アプローチ」(目的に基づいた手法)などと呼ばれています。

「ゴール・オリエンテッド・アプローチ」で最も大切だと考えられるのが、「収入」と「支出」をあらかじめ想定しておくことです。
「支出」はコントロールが可能ということもあり、金融機関の方やファイナンシャルプランナーがライフイベントをヒアリングし、「それを実現するためにはこれくらいの金融資産を準備しておかなければいけないので、何に、いくら、どれくらいの期間、投資しましょう」などと提案されたりしていますね。
一方で「収入」面で最初に思い浮かぶのは、将来の給料と老後に受け取る年金ではないでしょうか。
筆者は、公的年金はどれくらいもらえるのか、公的な保障制度にはどのようなものがあるのか等々、社会保険に関する知識があるかどうかで、実際の人生が左右される可能性があると考えています。

社会保険はこうなっている

皆さんが受け取っている給与明細には、控除項目として税金(所得税、住民税)と社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料)の記載があると思います。
社会保険料については気にされている方も少ないかもしれませんが、実は税金に次いで大きな控除額ですから、改めて見てみると驚かれる方も多いのではないでしょうか。

一般的な給与所得者であれば、給料から控除されるのは上記4項目となりますが、わが国の社会保険制度の主なものとしては、下表のようなものがあげられます。

【 主な社会保険制度 】

対象者社会保険制度保険の概要(保険事故、範囲等)
(a)会社員等 労災保険 業務上の事由等による負傷、疾病、傷害、死亡等
(自営業者等も特別加入が可能)
雇用保険 失業、雇用継続が困難、教育訓練、育児休業・介護休業等
健康保険 業務災害以外の疾病、負傷、死亡、出産
厚生年金保険 老齢、障害、死亡
(b)自営業者等 国民健康保険 疾病、負傷、出産、死亡
国民年金 老齢、障害、死亡
(a)/(b) 双方 介護保険 要介護状態

出所:各種資料よりアセットマネジメントOne作成

こうして見ると、

  • 給料から労災保険の保険料が天引きされていないのは、なぜ?

  • うちの妻は専業主婦なのだけど、年金ってどうなっているの?

  • まだ40歳になっていないのに、どうして介護保険料が天引きされているの?

と色々な疑問を持たれる方も多いのではないでしょうか。
今後、そうした疑問にお答えしていくことにしましょう。

社会保険を知ろう

では、まず主な社会保険について、どのようなものであるのかお話しましょう。

労災保険

先ほどの疑問の中に、労災保険の保険料が天引きされていないというものがありましたが、安心して下さい。それで良いのです。というのも、労災保険は労働基準法で定められている事業主の災害補償責任をカバーするために、事業主が国の運営する保険に加入し、従業員が業務上のケガをした際に保険金が下りる仕組みになっています。ですから、労災保険の保険料は、事業主が全額負担し、給付の内容も、とても手厚いものになっています。以前、筆者も出勤時に駅の階段で滑ってケガをしたことがありましたが、治療費は全額、労災保険から支払われました。
こう聞くと、自分の会社が労災保険に加入しているのか気になると思いますが、大丈夫です。労災保険法においては、一部の事業(個人経営で従業員5人未満の農林水産業など)やフリーランスといった個人事業主を除いて、1人でも労働者を雇用している法人の場合は、事業主に労災保険に加入する義務があるのです。

雇用保険

昭和22年の戦後混乱期に失業者救済策として失業保険法が施行されました。その後、昭和50年に雇用保険法に改称され、失業以外の場合にも給付が行われるようになり、現在では総合的な雇用のための保険制度となっています。
失業時の生活資金をまかなう「基本手当」を始めとして、筆者もお世話になったことのある「教育訓練給付金」や女性労働者の離職を防ぐのに役立っている「育児休業給付金」、60歳以降の雇用継続で年収が大幅減となった時に補助をする「高年齢雇用継続基本給付金」などがあります。また、コロナ禍によって事業活動の縮小を余儀なくされた事業主に支給する「雇用調整助成金」なども雇用保険から支給されています。
雇用保険の保険料は、一般企業で勤めている方であれば給料の0.3%となります。これは、事業主が負担する雇用保険二事業(雇用安定事業、能力開発事業)分を除いた部分を労使折半とした料率です。ただし、昨今の厳しい財政状況において、来年度には雇用保険率が引き上げられるという報道もされています。

健康保険

健康保険証を使ったことがないという方はほとんどいないと思いますので、最も馴染みのある制度だと思います。業務災害が労災保険でカバーされるようになったため、健康保険は業務災害以外の保険事故(疾病、負傷、死亡、出産)に対応しています。一般保険料率は3~13%の範囲内で定められ、労使折半で負担することになっています。
健康保険法はわが国の社会保険の中では最も古く、大正11年(1922年)に制定され、関東大震災の影響で施行は昭和2年(1927年)となりました。当初は工場や鉱山等で働く労働者のみを対象としていましたが、昭和14年(1939年)に一般事務職にも拡大されました。
その他の医療保険としては、昭和13年(1938年)に国民健康保険法が制定され、その後全国民に加入が義務化され、昭和36年(1961年)には国民皆保険(こくみんかいほけん)体制が実現しました。昭和57年(1982年)に老人保健法が制定されましたが、平成12年(2000年)に介護保険法、平成20年(2008年)には高齢者医療確保法が施行され、高齢化の進展に対応するため拡充が図られています。

厚生年金保険/国民年金

厚生年金保険法は、昭和16年(1941年)に制定された労働者年金保険法が、昭和19年(1944年)にそれまで加入できなかった女性や一般事務職の男性にも拡大されて誕生しました。昭和36年(1961年)には国民年金が拠出制となり、国民皆年金(こくみんかいねんきん)制度が確立されました。
その後、昭和61年(1986年)に厚生年金(定額部分)と公務員や私立学校教職員の共済年金(定額部分)が国民年金と統合されて基礎年金となり、平成27年(2015年)には、会社員の厚生年金(報酬比例部分)と共済年金(報酬比例部分)が一元化されて現在の形となりました。
自営業者等(20~60歳)は国民年金第1号被保険者となりますが、厚生年金の加入者は自動的に国民年金第2号被保険者となり、その被扶養配偶者(20~60歳)は国民年金第3号被保険者となります。
厚生年金保険の保険料は、上限は決められていますが、給料の9.15%です(事業主も同額を負担します)。これが65歳から受け取る老齢基礎年金と老齢厚生年金の支給額に反映されます。

今回は社会保険の全体像をざっくりとお話しましたが、今後はライフプランを考える上で押さえておきたい社会保険のポイントについて解説していくことにしたいと思います。

執筆:1級ファイナンシャル・プランニング技能士/1級DCプランナー 花村 泰廣

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