水道料金が値上がりするって本当?日本の水道インフラ事情を紹介
2025/01/17

皆さまは最近、水道料金がさらに値上がりするという話を耳にしたことがありますか?水道は私たちの生活に欠かせないものであり、その料金がどのように変動するのかは気になるところですよね。しかし、水道料金が上がる背景にはどのような理由があるのでしょうか。
本記事では、日本の水道料金の現状と今後の値上がりについて解説します。これらの情報を通じて、私たちの生活に密接に関わる水道の現状を一緒に考えてみましょう。
現在の日本の水道料金と値上げの背景
皆さまのご家庭の水道料金は毎月どのくらいかかっていますか?全国平均では、1ヵ月で約3,300円*と言われていますが、今後は値上げが避けられない状況にあります。なぜでしょうか?
その背景には、まず水道インフラの老朽化があります。1970年代から整備された多くの水道管が今ではその寿命を迎えつつあり、整備の必要性が求められています。
また、日本の水道事業は「独立採算制」という制度で運営されています。これは、利用者からの料金で運営費をまかなう仕組みです。そのため、少子高齢化や人口減少により利用者が減ると、水道事業の収入が減少してしまいます。さらに、近年のインフレによるコストの上昇も水道料金値上げの避けられない要因となっています。
こうした主な背景があり、収益を確保するためには水道料金の値上げが必要になってしまうのです。
*20㎥使用(20,000リットル。1世帯当たり(3人家族)おおよその一般的な水道使用量)、下水道料金は含まれません。(厚生労働省 医薬・生活衛生局 水道課資料より)
水道インフラの老朽化
特に大きな問題となっているのが、高度経済成長期に整備された多くの水道管です。現在、日本全国の水道管の長さは約74万㎞(地球から月への距離約38万㎞のほぼ倍!)ありますが、その一部である老朽化した水道管はおおよその寿命である40年を迎えており、今まさに更新が必要な状態にあります。40年以上使われている水道管の割合は令和2年度末時点で20.6%となっていますが、その割合は今後さらに増加するものと予想されています。それに対して、管路(地下に埋没するための専用の管)を1年間にどれだけ更新したかを表す「更新率」は年々低下し0.65%にとどまっているため、このままだと管路の老朽化がどんどん進んでしまうことが想定されるのです。
【管路の更新率と経年化率の推移】
※「H」は平成、「R」は令和を表します。
※今後の老朽化の進展の目安となる数値であり、40年で直ちに管路の更新が必要となるわけではありません。
出所:厚生労働省 医薬・生活衛生局 水道課資料よりアセットマネジメントOne作成
老朽化に伴う問題には、水質の低下や漏水など、単に水道の供給に支障をきたすだけでなく、大規模な水害や健康被害を引き起こす恐れがあります。水質が悪化すると、飲料水や生活用水としての安全性が損なわれ、私たちの健康にも悪影響を及ぼします。
近年、水道管の破裂事故などもみられるようになりました。破裂事故による水害は、道路の陥没、建物の浸水、交通の妨げなど、多方面にわたる影響をもたらすことがあります。一度発生すると修復には多額の費用と時間が必要で、地域住民の生活に大きな影響を与えます。
現在、日本全国で毎年更新される管路の延長は限られており、一部の専門家はすべての管路を更新するには130年以上かかると指摘しています。このような更新ペースでは、とても追いつかない状況です。そして、更新が遅れるほど、老朽化の問題は深刻化してしまいます。
水資源の未来
私たちの生活に欠かせない水資源ですが、その未来はどのようになるのでしょうか。 まず、水資源の保護には森林の重要性が挙げられます。森林は水源地としての役割を果たし、雨水を地中に浸透させ、地下水として蓄える働きがあります。このため、適切に管理することで水資源の保護につながり、安定した水供給が維持されるのです。近年、森林に影響を与える、もしくは水源地周辺における土地の利用目的が明らかでない土地取引が認められることを背景として、水資源保全に対する関心も高まってきており、自治体の水源地の保護活動も進められています。
一方で、昨今の気候変動は水資源に大きな悪影響を与えています。例えば、大雨や台風の頻度と強度の増加は、洪水や土砂災害を引き起こし、逆に長期間の乾燥した気候は渇水を招きます。気候変動により水資源が不安定になることで、水供給の安定性が脅かされる可能性があります。 このように、水資源の未来を考える上で、私たちは森林の保護と気候変動対策について真剣に取り組む必要があります。持続可能な水利用を実現するためには、個人の節水努力だけでなく、地域社会全体での理解と取り組みが求められています。
日本と海外の水道事情
日本の水道インフラは、世界的に見ても高い品質を誇ります。水道水をそのまま飲むことができる国は世界中で11ヵ国しかなく、日本はその数少ない国の1つなのです。その国内供給率はなんと約98%。
一方で、日本の水道料金は他の国々と比較しても比較的安いと言われています。東京都の水道料金は10㎥(10,000リットル)あたり約1,560円です。一方、米国ニューヨークでは約3,890円、英国ロンドンでは約3,380円と、日本の料金はかなり低い水準にあります。 マップをご覧いただくと、水道料金にお金をかければおいしい水が手に入るわけではないということがうかがえるのではないでしょうか。
【水道水が飲める国と水道の平均料金】
※2023年5月1日時点
※上記料金に下水道料金は含まれません。
※日本の水道料金は令和2年度(2020)水道統計「家庭用料金/月10㎥使用料金」を単純平均した料金です。
出所:公益財団法人水道技術研究センター、公益財団法人日本水道協会の資料よりアセットマネジメントOne作成
おわりに
水道料金の値上げは、多くの人にとって関心の高い問題であり、その背景には老朽化したインフラの更新や水資源の保護といった、日本の未来につながる重要な課題が存在します。私たちの生活に欠かせない水道サービスを持続可能にするために、これらの問題に対する理解と協力が求められています。ぜひ、単に価格だけではなくその動向やインフラの状況にも注目してみてください。
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