財形貯蓄制度とは?メリット・デメリットについて詳しく解説
2024/03/08
結婚や出産などのライフイベントや老後の暮らしを考えるうえでお金の悩みはつきもの。貯めようと思っていても、つい使いすぎてしまってなかなか貯金が捗らない、という方も少なくないのではと思います。その悩み、「財形貯蓄制度」をうまく活用することで解決できるかもしれません。本記事では「財形貯蓄制度」の仕組みやメリット・デメリットなどを解説します。
財形貯蓄制度とは?
財形貯蓄制度とは、勤労者が会社の協力を得て給与からの天引き(賃金控除)で行う貯蓄制度のことをいいます。制度の利用対象となる“勤労者”は、職業の種類や雇用の形態にかかわらず事業主に雇用されている方をいい、条件*1によってはアルバイト・パートタイマー・契約社員・派遣社員の方も含まれます。ただし前提として、その企業・団体が財形貯蓄制度を導入していることが必要です。
財形貯蓄は下記表のとおり資金使途などが異なる3つの種類があり、1つだけ利用することも、3つを併用することも可能です。
一般財形貯蓄 | 財形住宅貯蓄 | 財形年金貯蓄 | |
対象者 | 従業員 | 満55歳以下の従業員(※1人1契約) | 満55歳以下の従業員(※1人1契約) |
資金使途 | 制限なし | 住宅の建設、購入 工事費が75万円を超えるリフォーム |
年金 ※満60歳以降の5年以上20年以内に受取り |
積立期間 | 原則3年以上 | 5年以上 | 5年以上 |
利子等の 非課税措置 |
対象外 | 「財形年金貯蓄」と合わせて下記限度額まで非課税
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下記限度額まで非課税
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その他特徴 |
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貯蓄商品 | 預貯金(定期預金・定期貯金など)、合同運用信託 有価証券(国債などの公社債・証券投資信託の受益証券・金融債・株式投資信託)、生命保険、生命共済、損害保険 |
出所:独立行政法人 勤労者退職金共済機構HP・厚生労働省HPをもとにアセットマネジメントOne作成
一般財形貯蓄は、年齢や資金使途が定められていないため最も汎用性が高く、他の2種類と違い一人で複数の積立契約が可能です。結婚、出産などのライフイベントや自動車の購入など、どのようなケースにも備えることができて利便性が高い一方、他の2種類にある利子等の非課税措置は受けることができませんので注意が必要です。
財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄は、それぞれ貯まったお金の使い道が限定される代わりに一定の限度額まで利子等が非課税になることが大きな特徴です。ただし、目的外の払い出しを実施した場合は非課税措置が適応されないため、家を買いたい、老後の生活資金を備えておきたいなど貯蓄の目標が明確な場合に利用することが好ましいでしょう。
また、貯蓄商品については様々なものが対象となりますが、実際には預貯金が中心のところが多く、幅広い商品を採用している企業は少ないと思われます。
*1 継続して雇用関係が見込まれる場合、積立期間が「一般財形貯蓄」は3年以上、「財形住宅貯蓄」「財形年金貯蓄」が5年以上など。
メリット・デメリットは?
それぞれの特徴が分かったところで、財形貯蓄を利用することのメリット・デメリットについて、他の資産形成手段とも比べつつご紹介します。
【メリット】
① 手間なく、着実に貯蓄できる
財形貯蓄は会社が給与から一定額を天引きして貯蓄する仕組みですので、利用者は最初の契約手続きさえ済ませてしまえば放っておいてもお金が貯まります。また、最も自由度の高い一般財形であっても原則3年間は継続する必要があり、部分的に引き出すことができるのも開始後1年以降であるなど、お金を引き出す際は少しハードルが上がる点も、「お金があるとつい使ってしまう」といった方が貯蓄に失敗するリスクを減らすことができます。
② 住宅ローンがお得に借りられる
財形貯蓄を1年以上利用していて残高が50万円以上ある場合は「財形持家融資制度」を利用できます。これは、貯蓄残高の10倍(上限4,000万円)の範囲内で住宅取得やリフォームのための資金を借りることができる制度です。最大35年と長期間かつ低利で借りることができるほか、子育て世代や中小企業に勤めている場合などにはさらに金利優遇を受けられる場合もあります。
なお、財形持家融資制度は「財形住宅貯蓄」だけでなく、3つの財形貯蓄のいずれの利用者にも適用されます。
③ 利子等の非課税措置を受けられる
通常、預貯金等から生じる利子には税金がかかります。しかしながら先に述べたように、「財形住宅貯蓄」「財形年金貯蓄」については、単体または2つの元本の合計550万円*2から生じる利子に対しては非課税措置が適用されます。
*2 単体で財形年金貯蓄を利用する場合で、保険型商品の場合は払込額385万円まで
④ 財形貯蓄制度利用者向けの施策
財形貯蓄制度の利用者がより効率的に資産形成を進めることができるよう、国や企業が支援しています。事業主が厚生労働大臣の承認(認可)を得て実施する「財形給付金制度」「財形基金制度」が代表的です。2つは仕組みが少し異なりますが、いずれも会社が毎年一定額の拠出を行い、7年経過ごとにその拠出金と運用益の合計を給付金として従業員に支払うものです。給付金は一時所得の扱いとなり、50万円までは非課税で受けとることができます。また、財形貯蓄の利用者に対して一定程度の奨励金を支給する奨励金制度を実施している企業もあります。
【デメリット】
① 勤め先が制度を導入していなければ利用できない
財形貯蓄制度は、あくまで会社に制度がなければ利用することができません。最初からなければ他の方法で資産形成をすれば良いのですが、例えば現在勤めている会社で財形貯蓄をしていても、転職先に制度がない場合は継続することができなくなってしまいます。
② 解約には手間と時間がかかる
メリットのところでも触れましたが、財形貯蓄を解約する際は所定の書類を準備しなければならないなど手間がかかるほか、定期預金などと違い解約を申し込んでからお金が手元に入るまでに時間がかかります。無駄遣いを防ぐという点においては良いのですが、急にまとまったお金が必要となった場合へのリスクヘッジには不向きといえるでしょう。
③ 大きなリターンは期待できない
前述したとおり商品は預貯金が中心のため、今の日本の低金利下で大きなリターンは期待できません。このため、基本的には大きなリスクを背負わず着実に貯蓄を進めたい人向けの制度と言えます。勤め先の企業が投資信託などの商品を採用していない場合、リスクを取ってでも一定程度のリターンを追求したいなら、NISAやiDeCoなどの制度を活用して株式や投資信託などへの投資を検討すると良いでしょう。
④ 本来の目的以外で解約する場合は課税される
財形住宅貯蓄や財形年金貯蓄のメリットとして、一定額までの元本から生じる利子等が非課税となることを挙げましたが、それはあくまで「住宅の購入資金」「年金としての受け取り」など、本来の受け取り方をする場合の話です。住宅を購入しようと思っていたけれどやめてしまったので払い戻したい、年金ではなく一括で受け取りたい、といった場合、非課税措置は適用されませんので気を付けましょう。
実際に活用してみて…投資と比較した感想
筆者は新卒入社時より一般財形貯蓄を始め、現在も継続しています。使っていてよかったと思う点は、やはり給与天引きなので放っていても勝手にお金が貯まっていくことです。特に意識しないまま約6年間、気づけばそれなりのまとまった金額になっています。仮に普段使いの口座で貯めようとしていたら、全額とは言わないまでもいくらかは自分へのご褒美と称して使っていたように思います。また、筆者の勤め先では財形貯蓄利用者に対して奨励金が支給される制度があったため、普通預金で貯めていくよりは効率的に資産形成ができると感じていました。
一方、やはり投資と比べるとリターンには物足りなさを感じてしまいます。新入社員の時は投資に関する知識が乏しく、将来に備えてまとまったお金を着実に確保したいという思いで始めたため満足していましたが、現在は運用会社に勤めていることもあり「もう少し効率よく資産を増やしたい」と考えるようになりました。
そこで現在は、従来の財形貯蓄を継続しつつ、NISA口座で投資信託を積み立て購入しています。今のところ運用益が出ており、同じ金額をすべて財形貯蓄に上乗せした場合と比べると資産額はかなり大きくなっています。2024年からNISA制度が改正され投資枠が広がったこともあり、今後は財形貯蓄の積立額を減らして投資信託の積立額を増やすことも検討しています。
貯蓄額はある程度確保したいけど、全額投資に回すのは怖いと感じるなら、筆者のように財形貯蓄から始めて、他の資産形成手段を組み合わせるといったステップアップも一つの手かもしれません。どんな手段であれ、資産形成は継続して積み立てることが重要です。その効果を実感する手段として財形貯蓄は確実性の高い制度と言ってよいでしょう。
おわりに
いかがでしたでしょうか?財形貯蓄はリターンこそ大きくはありませんが、安全かつ着実にまとまったお金を貯めたいというニーズに対しては有効な方法であることがお分かりいただけたかと思います。今後のライフイベントや老後に向けて備えたいけどなかなか貯金が進まない、といったお悩みのある方は、資産形成の手段の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。
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