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【2025年】円安水準はいつまで続く?短期・長期要因に分けてドル円相場の見通しを徹底解説!

2024/08/29

ふやす

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2025年に入りドル円相場は不安定な状況が続いています。米連邦準備理事会(FRB)が利上げを開始した2022年3月に121円台だったドル円相場はその後大きく円安方向で推移し、この円安傾向がいつまで続くのか見通し難いと感じている投資家の方も多いのではないでしょうか。
そこで、本記事では2024年1月から2025年2月末までのドル円相場を整理し、相場への影響が大きいと考える短期要因と長期要因を洗い出しながら、今後の動向を見通したいと思います。

2024年1月から2025年2月までのドル円相場

ここ1年程度のドル円相場を振り返ると、2024年前半はFRBが利下げに慎重な姿勢を示す中、日銀の金融政策の正常化が緩やかに進むとの見方から、日米金利差は当面開いたままとの見方が強まりました。こうした背景から円安が進行し、2024年初めに1ドル141円程度だったドル円相場は7月上旬には161円台となるなど、歴史的な円安水準を記録しました。しかしその後、米国の6月のCPI(消費者物価指数)の下振れや、日本の金融当局による円買い為替介入、7月末の日銀による政策金利の引き上げなどから、急速に円高が進みました。10月以降、底堅い米景気や米大統領選でのトランプ氏勝利を見込む動きなどから米長期金利が上昇する中、日米金利差の拡大を背景に、総じて円安方向で推移しました。2025年に入りトランプ政権の経済政策を巡る不透明感が意識されるなか、日銀の追加利上げ観測などが材料視され、再び円高圧力が高まっており、2月末時点では1ドル150円程度の水準となっています。

2024年1月から2025年2月までのドル円相場

※期間:2024年1月1日~2025年2月28日(日次)

出所:ブルームバーグのデータをもとにアセットマネジメントOne作成

急激な円高が起こる原因とは?

2024年7月の利上げでは、日銀がタカ派に転じたとの受け止めから、為替市場ではこれまで積み上がっていた海外投資家の円売りポジションの急激な解消(円の買戻し)が起こり、ドル円相場で大幅な円安修正が起きました。円売りポジションの背景として、円キャリー取引が指摘されています。
円キャリー取引とは、低金利の円建てで資金を借り入れ、その資金を外貨に転換し、米国のような高金利国の金融資産で運用し、その運用益に加えて金利差による収益も狙う取引です。こうした円キャリー取引の資金は、米国株の上昇をけん引してきたAI(人工知能)関連などハイテク銘柄にも向かっていたとみられます。
また、海外投資家の日本株買いに伴う円売りポジションも考えられます。海外投資家が日本株に投資する際には、為替市場で円を買いその資金で日本株を買うことになりますが、そのままでは円の為替リスクを負うことになります。したがって円安が進展するなかでは、為替リスクを回避するための手段として、日本株を買い入れる際に為替市場で円売りの為替予約を行うことが考えられます。日銀の金融政策の緩やかな正常化を想定して、こうしたポジションを構築していた海外投資家にとって、日銀のタカ派的な情報発信は想定外だったとみられ、円売りポジションの解消につながったと考えられます。

短期的には日銀の金融政策が円高要因に

円安が国内経済等に与える影響については、主なメリットとして以下の4点が挙げられます。

  1. ① 輸出企業の価格競争力改善を通じた財輸出数量の増加
  2. ② 円ベースでみた輸出額の増加を通じた企業収益の改善
  3. ③ サービス輸出(インバウンド消費)の増加
  4. ④ 海外からの所得の受け取り額の増加

一方デメリットとして、以下の2点が挙げられます。

  1. ① 輸入コスト上昇による国内企業収益の下押し
  2. ② 消費者の購買力低下

長引く物価高の状況では、円安のデメリットを懸念する声がみられます。しかし、日銀は2024年3月にマイナス金利を解除して以降、7月と2025年1月に追加利上げを行ったものの、日本の金融環境は依然緩和的です。日銀の分析によれば、日本の中立金利(景気を冷やしも過熱もさせない実質金利)は▲1.0~0.5%程度と推計されています。これに物価安定の目標2%を勘案すれば、日本の名目中立金利は1.0~2.5%程度ということになります。2025年1月に政策金利は0.5%程度へ引き上げられましたが、名目中立金利の同下限値には及ばず、現状の金融環境はまだ緩和的といえます。したがって、日銀は足もとの金融市場環境が落ち着いてくれば、金融緩和度合いを調整するため、さらなる利上げを行う可能性があり、利上げが実施されれば円高圧力が高まります。

長期的には構造的な円安要因に注目

日銀がさらなる利上げに動けばドル円相場では円高が進展する可能性がありますが、構造的な円安要因を鑑みれば、円高圧力は限定的となる可能性もあります。

こうしたなかで、最近注目されているのが日本の「デジタル赤字」です。DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展などに伴い拡大するサービス収支における赤字のことです。「サービス収支」は、インバウンドの増加を受けて「旅行収支」は黒字である一方、「著作権等使用料(ライセンス料)」の支払い増や、「コンピュータサービス(サブスクリプション代金やクラウドサービス利用)」、「専門・コンサルティングサービス(ウェブサイトの広告スペースを売買する取引)」など、グーグルやネットフリックスに代表される海外企業へのネット支払いが増加しており、サービス収支の赤字に繋がっているとの指摘があります。

また、NISA(少額投資非課税制度)を通じた個人の海外投資の拡大も構造的な円安要因として挙げられます。財務省が公表する「対外及び対内証券売買契約等の状況」によれば、投資信託を通じて取引された海外の株式等の金額*は、2023年の月平均額約2,900億円の買い越しに対し、NISA制度が変わった2024年1月は1兆2,104億円の買い越しと統計開始以来の高水準に跳ね上がりました。その後も毎月9,000億円から1兆円程度で推移し、8月以降はペースが鈍化したものの、2024年通年では10兆494億円の買い越しとなり、統計開始以来で最大の記録となりました。米インフレが鈍化し景気下支えのためFRBは利下げを継続し、これが株式などリスク資産の支えとなるとみられるなかで、個人の海外投資に関連した円売りの動きが注目されます。

*株式・投資ファンド持分における投資信託会社等の金額

※個別企業の記載はこれら企業への投資を推奨するものではありません。

トランプ政権の為替相場への影響は?

トランプ政権の経済政策で為替相場に影響を及ぼすとして注目されるのは、関税引き上げや移民政策です。これらはインフレ要因となり、FRBの利下げペースを減速させる可能性があることから円安につながりやすいと考えられます。ただし、関税の引き上げついては、米国経済に大きなマイナスの影響を与えるリスクもあり、トランプ大統領の言動によって短期的にリスク回避の円高が起こる可能性もはらんでいます。

このように、経済政策一つとっても円高、円安両方につながり得る側面を持ちます。政策によって何がもたらされ、それがどのように市場に波及していくのかという、時間軸も考慮して整理する必要があると考えます。

まとめ

今後のドル円相場は、日米の金融政策の行方やトランプ政権の政策などの要因によって変動性が高まる局面が予想されるため、留意が必要です。日銀の追加利上げの可能性が高まれば円高圧力が働きます。また、デジタル赤字やNISA制度普及に伴う個人の円売りなど、構造的な円安要因が円高圧力を抑制する可能性もあります。

円高要因と円安要因が混在する中で、当面注目すべきはやはり日銀の金融政策です。日銀の植田総裁は2025年1月の会見にて、「この先も経済・物価の改善が続く見通しであればさらなる利上げを検討する。」との考えを明らかにしています。今後利上げのペースが加速したり、到達点が引き上がる場合、現在の円高トレンドも加速させる可能性があるでしょう。

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