為替介入とは?過去事例を振り返りながら分かりやすく解説
2023/03/03

2022年は米ドル/円相場が大きく変動し、2022年10月20日には32年ぶりに1ドル=150円を突破するなど、歴史的な円安を記録しました。また、進行する円安を食い止めるため、24年ぶりに政府・日銀による「為替介入」が行われ、大きなニュースとなったことは記憶に新しい方も多いことと思います。
本記事では、為替相場の歴史や過去の為替介入事例、為替相場を見通すにあたってのポイントについて分かりやすく解説します。
為替介入とは?
そもそも為替介入とは、為替相場が急激に変動した際に、通貨当局である財務省と日本銀行が保有する通貨を市場で売買することで急激な変動を抑える仕組みのことです。
2022年のように、急激な「円安・ドル高」となった場合は保有するドルを売却して円を購入する、いわゆる「ドル売り・円買い介入」を行うことで円安の進行を食い止めようとします。
反対に、「円高・ドル安」が急激に進行している場合は、保有する円を売ってドルを購入する、いわゆる「円売り・ドル買い介入」を行うことで円高の進行を食い止め、為替相場を円安に誘導しようとします。為替相場の安定を実現するため、通貨の供給量をコントロールする手段のひとつとして為替介入が用いられています。
なお、為替介入についての正確な定義については、日本銀行HP「日本銀行における外国為替市場介入事務の概要」に詳しく記載されています。
為替相場の長期推移と為替介入の歴史
続いて、過去の為替相場の推移と為替介入の歴史について確認してみましょう。米ドル/円レートの長期推移と、完全変動相場制に移行した1973年以降の政府・日銀による為替介入が行われた時期は以下の通りです。
米ドル/円レートの長期推移
※期間:1990年1月1日~2023年1月31日(日次)
※上記は過去の情報であり、将来の運用成果等を示唆保証するものではありません。
出所:ブルームバーグのデータをもとにアセットマネジメントOne作成
グラフに赤丸がついている箇所が、政府・日銀による主な為替介入が行われた時期になります。オレンジ色の矢印が「円売り・ドル買い介入」(=円高を是正し円安に誘導する)、紺色の矢印が「ドル売り・円買い介入」(=円安を是正し円高に誘導する)です。
介入時期 | 介入内容 | 金額 | 介入の背景 | |
---|---|---|---|---|
① | 1995年2月~1995年9月 | 円売り・ドル買い | 約5兆円 | 円高による日米貿易摩擦懸念の緩和 |
② | 1998年4月 | ドル売り・円買い | 約3兆円 | 円安是正 |
③ | 2001年9月 | 円売り・ドル買い | 約3兆円 | 9.11の影響による円高の防止 |
④ | 2003年5月~2004年3月 | 円売り・ドル買い | 約32兆円 | デフレ克服・円高是正 |
⑤ | 2011年3月~12月 | 円売り・ドル買い | 約14兆円 | 円高是正 |
⑥ | 2022年9月~10月 | ドル売り・円買い | 約9兆円 | 円安是正 |
出所:財務省
直近の為替介入では約9兆円の「ドル売り・円買い介入」が行われ、結果的に為替相場を反転させることに成功しました。一方で、1998年の「ドル売り・円買い介入」(上図②)のように、介入後一時的に円高となるも、その後再び円安が進行し一時1ドル=147円台を記録するケースや、2003~2004年、2011年の「円売り・ドル買い介入」(上図④・⑤)のように、介入後もしばらく円高が進行しトレンドが反転するまで1年以上を要した事例もあり、必ずしも介入後すぐに劇的な効果が表れるとは限らないといえます。ただ、いずれの事例においても、効果が発現するまでの期間に差こそありますが、為替相場の一方的な進行を食い止め相場のトレンドを転換させることに成功しています。これは、為替介入によって通貨の供給量をコントロールしたことに加えて、「政府・日銀が介入を行った」ことによる心理的効果も加味されていると考えられます。
今後の為替相場を見通すにあたってのポイント
2023年2月に入り、為替相場は再び円安に振れはじめています。円高に誘導するために政府・日銀が再び為替介入に踏み切る可能性もゼロではありませんが、為替介入はあくまで対症療法であり、抜本的な対策ではありません。2022年以降円安が進行した主な要因として、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策金利引き上げにより日米の金利差が拡大したことが挙げられます。このため、ドル円相場が円高トレンドへと転換するポイントとして、まずは日銀による超低金利政策の是正やFRBの利下げによる日米金利差の縮小が考えられます。
この点を踏まえると、今後の為替相場を見通すにあたっては日銀やFRBの金融政策はもちろんのこと、物価や景気動向にも注目する必要があります。また、ロシアのウクライナ侵攻や米中対立などの地政学リスクも為替相場に大きな影響を与え得るため、注意を払うべきでしょう。
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