米国株を代表するマグニフィセント・セブンとは?名前の由来や銘柄をご紹介
2024/09/09
AIブームに伴い、米国の代表企業を総称する新たな言葉が生まれたのをご存じでしょうか?
その名も「マグニフィセント・セブン」です。本記事では、投資や経済の世界で最近よく耳にする「マグニフィセント・セブン」について、名前の由来や構成する7つの銘柄、米国株式市場に与える影響を分かりやすく解説します。
マグニフィセント・セブンとは?
「マグニフィセント・セブン」は、米国株式市場を代表するテクノロジー企業7社を指し、アルファベット(グーグルの親会社)、アップル、メタ(旧フェイスブック)、アマゾン、マイクロソフト、テスラ、エヌビディアで構成されています。これらの企業は時価総額が非常に大きく、株式市場だけでなく社会や経済に大きな影響を与えています。近年では特にAI技術と関連して脚光を浴びている企業群であり、投資マネーが集中しています。
「マグニフィセント・セブン」の名前の由来は、1960年に公開されたアメリカの大ヒット西部劇映画「荒野の七人(英題:The Magnificent Seven)」にちなんで名付けられました。この映画は1954年に公開された黒澤明監督の日本映画「七人の侍」をハリウッドでリメイクしたもので、小さな村を守るために集まった7人のガンマンを描いた作品です。マグニフィセント(Magnificent)という英単語は、「壮大な」や「豪華な」、「すばらしい」という意味を持っています。この比喩は、大きな力を持つすばらしい7つの企業それぞれが米国のテクノロジー分野をリードし、米国株式市場に大きな影響を与えていることを象徴しています。
7つの企業の紹介
1.アルファベット
アルファベット(Alphabet Inc.)は持株会社で、子会社のグーグル(Google LLC)などを通じ、ウェブベースの検索や広告、地図サービスの「Google Maps」、「Android」などのモバイルオペレーティングシステムなどを提供しています。ネット広告事業を収益源として、成長分野であるクラウド事業も拡大しています。AI関連では、子会社のグーグルで生成AI*サービス「Gemini(ジェミニ)」を提供しています。
*生成AIとは、機械学習の一つで与えられたデータからテキストや画像、動画、音声などのコンテンツを新たに生み出す技術のこと。
【株価推移(直近3年)】
※Alphabetは議決権があるAと議決権がないCの2つが上場しています。
※期間:2021年7月末~2024年7月末(日次)
※上記は過去の情報であり、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。また個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
出所:ブルームバーグをもとにアセットマネジメントOne作成
2.アップル
アップル(Apple Inc.)は、iPhoneやiPad、MacBookなどの電子端末を中心に、Apple Watchを含むウェアラブル端末の設計、製造、販売に加え、各種関連アクセサリーの販売に従事しています。また、Apple Payのような決済サービスやデジタルコンテンツ、クラウド・広告サービスも手掛けており、消費者、教育、企業、および政府機関の各市場を対象に世界各地で事業を展開しています。売上高の半分をiPhoneの販売が占めており、収益源といえます。アップルも生成AIの開発に注力しており、2024年6月には「Apple Intelligence(アップルインテリジェンス)」を発表しました。
【株価推移(直近3年)】
※期間:2021年7月末~2024年7月末(日次)
※上記は過去の情報であり、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。また個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
出所:ブルームバーグをもとにアセットマネジメントOne作成
3.メタ
メタ・プラットフォームズ(Meta Platforms, Inc.)はソーシャルテクノロジー会社で、ユーザーをつなぎ、コミュニティを見つけ、事業の成長を支援するアプリケーションおよび技術を構築しています。代表的なものとしては、FacebookやInstagram、WhatsAppがあります。また、広告事業や拡張現実(AR)、仮想現実(VR)も手掛けており、主な収益源はインターネット広告事業です。メタは2013年からAIの基礎研究を行い技術の蓄積を図っており、2024年6月には生成AI基盤技術の「Llama(ラマ)3」を発表しました。
【株価推移(直近3年)】
※期間:2021年7月末~2024年7月末(日次)
※上記は過去の情報であり、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。また個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
出所:ブルームバーグをもとにアセットマネジメントOne作成
4.アマゾン
アマゾン・ドット・コム(Amazon.com, Inc.)はオンライン小売会社で、書籍、音楽、コンピューター、電子機器、その他多岐にわたる商品を世界最大級のECサイト「Amazon」で販売しています。この中では、顧客別にカスタマイズされたショッピングサービスを提供しているだけでなく、ウェブ上でのクレジットカード決済、および顧客への直接配送を手掛けています。また、世界各地でクラウド・プラットフォーム・サービスである「Amazon Web Services(AWS)」も提供しています。ECサイト「Amazon」で有名ですが、営業利益の半分以上をクラウド事業で稼いでいます。クラウドは大量のデータ処理を必要としている生成AIの開発や利用に欠かせない存在となっており、アマゾンのクラウド事業は今後も高い需要が見込まれます。
【株価推移(直近3年)】
※期間:2021年7月末~2024年7月末(日次)
※上記は過去の情報であり、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。また個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
出所:ブルームバーグをもとにアセットマネジメントOne作成
5.マイクロソフト
マイクロソフト(Microsoft Corporation)は、アプリケーションや追加クラウド・ストレージ、高度セキュリティソリューションを提供し、世界各地で事業を展開しています。代表的なものとしては、PC向けOSの「Windows」やビジネス向けソフトウエアの「Office」(Word、Execl、PowerPoint、OneDriveなど)を主力としており、クラウド基盤の「Azure(アジュール)」を提供しています。AI関連では、対話型AI「Chat GPT」を手掛けるOpenAIとの提携を活かし、法人向けサービスの「Azure OpenAI Service」を提供しています。
【株価推移(直近3年)】
※期間:2021年7月末~2024年7月末(日次)
※上記は過去の情報であり、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。また個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
出所:ブルームバーグをもとにアセットマネジメントOne作成
6.テスラ
テスラ(Tesla Inc.)は主に電気自動車(EV)を販売する自動車メーカーです。他にも家庭から送電するための蓄電装置、太陽光パネル、ソーラールーフタイル、関連製品とサービスの設計・製造を手掛けています。また、独自の販売網を保有し、電気パワートレイン部品を他の自動車メーカーにも販売しています。様々な製品を手掛けているテスラですが、やはり収益源は自動車販売です。テスラは自動運転の技術開発に取り組んでおり、完全自動運転の実現を目指しています。自動運転技術にはAIの存在は欠かせないものであり、2024年4月にはAI開発に100億ドルを投資する方針を明らかにしています。
【株価推移(直近3年)】
※期間:2021年7月末~2024年7月末(日次)
※上記は過去の情報であり、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。また個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
出所:ブルームバーグをもとにアセットマネジメントOne作成
7.エヌビディア
エヌビディア(NVIDIA Corporation)は、AI半導体の1つである3次元(3D)グラフィックスプロセッサー(GPU)と関連ソフトウエアの設計・開発・販売をしています。売上の大半が主力AI半導体の販売であり、これが収益源となっています。AI関連では、エヌビディアが提供するデータセンター向けGPUが「Chat GPT」(OpenAI社)などの生成AIの開発に必要な大量のデータ処理に使用されています。
【株価推移(直近3年)】
※期間:2021年7月末~2024年7月末(日次)
※上記は過去の情報であり、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。また個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
出所:ブルームバーグをもとにアセットマネジメントOne作成
なぜ「GAFA」ではなく、「マグニフィセント・セブン」?
米国を代表する企業群の呼称は時代の流れや社名の変更によって変遷してきました。多くの方が一度は耳にしたことがあるかもしれない「GAFA(ガーファ)」はその一例です。ただ、2024年現在、マグニフィセント・セブンが最も勢いのある米国企業群を表した新たな呼称であり、GAFAと呼ばれ始めてからマグニフィセント・セブンが誕生するまで、注目される企業の変化と共に呼称も変化してきました。呼称が誕生した大まかな時期は判明しているものの、時期が明確に定義されているわけではなく、これらの企業が世界経済において顕著な地位を築いていった過程で自然発生的に使われるようになりました。以下が代表的な呼称です。
① GAFA
GAFA (グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)は巨大テック企業の4社の頭文字を取った呼称で2012年ごろから使われているようです。GAFAはITを駆使して私たちの生活になくてはならないプラットフォームを提供するなど、社会インフラの一部ともいえる役割を果たしています。また、4社の時価総額は2021年7月に日本の株式市場全体の時価総額を超えるなど、その影響力の大きさが窺えます。2018年の「ユーキャン新語・流行語大賞」候補にノミネートされるほど日本国内でも広く知られており、最も知名度のある呼称ではないでしょうか。
② GAFAM(ガーファム)
GAFAM (グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)はGAFAにマイクロソフトを加えた呼称です。マイクロソフトはモバイル化やクラウド化の波に乗り遅れ、GAFAの台頭を許していました。しかし、3代目CEOとして就任したサディア・ナデラ氏のもとモバイル化とクラウド化を推し進め、マイクロソフトを復活に導いたことでGAFAに並ぶ影響力を持ちました。
③ FANG(/FAANG)(ファング)
FANG(フェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、グーグル)はIT大手4社の頭文字を取った呼称です。2013年ごろに米国の人気株式評論家のジム・クレイマー氏が「熊(ベア=弱気相場)に噛みつく牙(英語でfang)になる可能性がある銘柄群」という意味を込めて、FANGを提唱しました。これまでの呼称と違いネットフリックスが入れられている理由としては、2013年当時日本ではそれほど知名度がなかったものの、アメリカ国内では動画配信サービスで高いシェアを誇っていました。そのため、当時新興であった動画配信サービス業界においてはSNSのフェイスブックやeコマースのアマゾン、検索のグーグルと同等の地位を確立しつつあったことで高成長が期待され、入れられたと考えられます。2017年ごろにはFANGにアップルを加えた FAANG という呼称も生まれました。
④ Magnificent Seven(マグニフィセント・セブン)
Magnificent SevenはGAFAMにテスラとエヌビディアを加えた7社の呼称です。テスラはガソリン車からEV自動車への移行の期待を受けており、エヌビディアは生成AIブームに伴って提供するGPUの需要増加が期待されたことで徐々に株式市場での影響力を増加させていきました。そのため、EV化や生成AIブームといった時代の流れを反映して「GAFA」ではなく、「マグニフィセント・セブン」に移り変わったといえます。
「マグニフィセント・セブン」が米国株式市場に与える影響
2024年7月末時点で、S&P500全体の時価総額は約48.4兆USドルとなっており、マグニフィセント・セブンの時価総額は約15.4兆USドルです。500社の時価総額のうちたった7社で30%以上も占めており、7社の状況が米国株式市場に与える影響は大変大きいといえます。
【S&P500におけるマグニフィセント・セブンの時価総額の割合】
※期間:2021年7月末~2024年7月末(日次)
※上記は過去の情報であり、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。
出所:ブルームバーグをもとにアセットマネジメントOne作成
パフォーマンスを比較すると2021年7月末からの3年間でS&P500が25.6%上昇したのに対して、マグニフィセント・セブンは87.6%上昇しました。グラフを見ると、2023年5月ごろからマグニフィセント・セブンの上昇トレンドが顕著になり、足もとではS&P500を大きく上回るパフォーマンスが確認できます。このことから、直近の米国株式市場の上昇はマグニフィセント・セブンの上昇が牽引しているといえるでしょう。
【S&P500とマグニフィセント・セブンのパフォーマンス】
※期間:2021年7月末~2024年7月末(日次)
※2021年7月末を100として指数化
※上記は過去の情報であり、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。
出所:ブルームバーグをもとにアセットマネジメントOne作成
マグニフィセント・セブンの将来性は?
本記事ではマグニフィセント・セブンの名前の由来や構成銘柄、米国株式市場に与える影響力について解説しました。マグニフィセント・セブンの今後を占う上では、やはり生成AIがカギを握ると考えます。下図のように生成AI市場の世界需要額が2023年から2030年にかけて年平均53.3%増と順調に推移していく見通しも出ており、市場の成長と共にこれら企業の成長も期待できます。ただ、現在の市場で大きな影響力を持つマグニフィセント・セブンであってもAI技術に関連する事業展開の結果によって、それぞれの企業の成否が分かれる可能性もあるでしょう。
【生成AI市場の需要額見通し(世界)】
※上記は、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。
出所:一般社団法人 電子情報技術産業協会のデータをもとにアセットマネジメントOne作成
テスラはマグニフィセント・セブンの内のその他6社と比較して直近3年間は軟調な株価推移となっています。EVや自動運転技術への期待は引き続き高いものの、入れ替わりが激しい最先端の分野においてこのままの状況が続けばマグニフィセント・セブンの構成銘柄から除外され、代わりに新たな銘柄が追加されるかもしれません。また、他の銘柄に関しても今後の業績や外部環境の変化などによって株価の勢いが衰えれば、マグニフィセント・セブンから外れることや新たな呼称が誕生する可能性も考えられます。
いずれにしても、現在世界から注目されている企業であることは確かなので、投資家としても消費者としても関心をもっておくのはよいと思います。本記事が皆さまの投資や経済への理解を深める一助となれば幸いです。
※本記事は、個別銘柄の推奨を目的としたものではありません。
【指数の著作権等】
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