空飛ぶクルマとは?関連企業や将来性をわかりやすく解説
2024/09/13
近年ニュースなどで目にすることも増えてきた「空飛ぶクルマ」。
“次世代の空の移動手段”として注目を集めるとともに、実用化に向けていま世界中で開発が進められています。
本記事では、「空飛ぶクルマ」について改めて知っておきたいポイントと、関連する国内企業について解説します。
そもそも「空飛ぶクルマ」って?
現在日本における明確な定義はありませんが、経済産業省では「電動垂直離着陸型無操縦者航空機」を正式名称としています。諸外国では、eVTOL(イーブイトール、Electric Vertical Take-Off and Landing aircraft:電動垂直離着陸機)や UAM(ユーエーエム、Urban Air Mobility:都市型航空交通)とも呼ばれており、新たなモビリティとして世界各国で機体開発の取り組みがなされています。
海外では、人口が密集した都市部での利用などが想定されていますが、日本では都市部だけでなく地方でも導入を検討しており、離島や過疎地に住む人への生活物資の輸送、観光・レジャーでの活用、ドクターヘリといった緊急医療などの利用を想定し、社会実装に向けて計画を進めています。
画像出典:経済産業省ウェブサイト
ヘリコプターと「空飛ぶクルマ」の大きな違いは?
「空飛ぶクルマ」は、見た目がヘリコプターに似ていますが、3つの異なる特徴を持っています。 まず一つ目に、「電動」であること。動力源が電気である為、ヘリコプターと比較して騒音が少なく、また二酸化炭素が発生しません。加えて構造がシンプルな為、部品数がヘリコプターよりも少なく、機体の製造コストや整備費用を抑えて生産することができます。
次に「自動(操縦)」が可能な為、パイロットが不要であること。これにより運航コストを抑えることができ、ヘリコプターよりも安価な料金での利用が見込まれています。
最後に「垂直離着陸」であること。ヘリコプターも垂直での上昇・下降ができないわけではないですが、機体への負荷から垂直離着陸は非常に苦手で、着陸する際には障害物のない広い場所が必要です。しかし、「空飛ぶクルマ」は、離着陸場があれば狭い場所でも着陸することができるため、ヘリコプターよりも幅広い場所での利用が期待されています。
特徴 | |||
ヘリコプターとの比較 | |||
電動 | 部品点数 | : 少ない | → 整備費用:安い |
騒音 | : 小さい | ||
自動飛行との親和性 | : 高い | ||
自動(操縦) | 操縦士 | : なし | → 運航費用:安い |
垂直離着陸 | 離着陸場所の自由度 | : 高い |
出所:国土交通省 航空局「空飛ぶクルマについて」の資料をもとにアセットマネジメントOne作成
「空飛ぶクルマ」はいつ頃から乗れるの?
国内での運航は、2025年開催予定の大阪・関西万博で会場間を結ぶ交通手段として、実際に人を乗せることを目指して準備を進めています。
また愛媛県では、2027年以降に「空飛ぶクルマ」の運航開始を計画しており、観光・都市間交通、過疎地域や離島に住む人への生活物資の輸送手段、災害救助・緊急医療の分野での活用を目指しています。
経済産業省・国土交通省が作成した「空の移動革命ロードマップ」では、2030年から本格普及と量産を目指しており、大阪・関西万博以降は物流や旅客輸送のサービス拡大を計画しています。
画像出典:経済産業省ウェブサイト
「空飛ぶクルマ」に関連する国内企業について
「空飛ぶクルマ」は、機体・部品製造を中心としてさまざまなビジネスが立ち上がり、発展していくことが見込まれています。
具体的な産業としては、機体製造、部品・要素技術製造以外に運航サービス、ライドシェアサービス、機体リース、管制システム、離発着場の設置・運営、機体メンテナンス・金融サービス、通信サービスなどの幅広い分野に波及することが見込まれています。また、内需産業としてだけではなく、輸出産業としても成長する可能性も秘めています。
本記事では、「空飛ぶクルマ」の部品製造に関連する国内企業についていくつかご紹介します。
モーター
ニデック
世界有数のモーターメーカーであるニデックは、ブラジルの航空機メーカーEmbraer(エンブラエル)と、航空産業向けの「電動推進システム」を開発・製造・販売する合弁会社を設立し、開発を進めています。開発した電動推進システムは、Embraerの子会社で「空飛ぶクルマ」を開発する米Eve Air Mobility(イブ・エアモビリティー)の機体に搭載される予定です。ニデックでは、「空飛ぶクルマ」以外にもさまざまな電動航空機に電動推進システムを提供する予定としています。
デンソー
デンソーは、航空機装備品の米大手Honeywell International(ハネウェルインターナショナル)と協力し、軽量・高出力の電動モーターを共同開発しました。この電動モーターは、ドイツのベンチャー企業Lilium(リリウム)が開発したeVTOL機の「Lilium Jet」に採用されています。「Lilium Jet」は、「空飛ぶクルマ」の中でも飛行効率が特に高い機体として航空業界関係者などから大きな注目を集めています。デンソーは、電動モーターの提供以外にも「Lilium Jet」の電動エンジン(電動推進システム)の量産化に向けた生産の立ち上げや自動化についても支援を行うと発表しています。
「空飛ぶクルマ」用ボディー
東レ
炭素繊維世界トップシェアの東レでは、「空飛ぶクルマ」用のボディーや主翼に使用する炭素繊維複合材料を開発しています。開発した炭素繊維複合材料は、供給契約を結んでいる「Lilium Jet」に使用されることが決まっています。炭素繊維複合材料を使用することにより、機体の軽量化に大きく貢献することが期待されています。東レは、今後も複数の「空飛ぶクルマ」製造企業と協業し、材料開発などを拡充していく方針を示しています。
※上記の企業名や商品名は一例として挙げており、これらの企業や商品への投資を推奨するものではありません。
「空飛ぶクルマ」の将来性に期待
2023年に矢野経済研究所が発表した「空飛ぶクルマ」の世界市場に関する調査結果によると、2050年の「空飛ぶクルマ」の世界市場規模は180兆円を超えると予測されており、今後さらなる発展が見込まれています。
本記事で取り上げた産業以外にも、この先新たなビジネスモデルや事業・サービスなどが生まれ、「空飛ぶクルマ」市場に参入することで、さらなる経済効果が期待できます。また、「空飛ぶクルマ」の普及によって、今後私たちの働き方や生活にも大きな変革が起こるかもしれません。 「空飛ぶクルマ」による多様な未来を思い描くと、とてもワクワクしてきますね。
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