信託報酬とは?高いとダメなの?正しく知って賢く資産形成を
2021/03/12
投資家のみなさまが投資信託を選ぶ際は、どんなことに着目しますか。やはり運用成績が一番重要でしょうか。手数料の有無や換金時の費用も気になるところですね。今回は、投資家のみなさまが投資信託の保有期間中、日々負担しているにもかかわらず、やや注目度が低いと思われる“信託報酬”についてご説明させていただきます。
信託報酬とは
”信託報酬“とは、投資信託の運用や管理にかかる費用です。どの販売会社で購入したかに関係なく、目論見書に記載されている年率の値が日割りされ、基準価額の計算時に費用として信託財産から差し引かれます。毎営業日公表される基準価額には、すでに信託報酬が差し引かれており、投資家が別途支払うことはありません。信託報酬は固定されている場合もあれば、ファンドの純資産総額に応じて料率が変動する場合もあります。
信託報酬の水準に大きな幅があるのはどうして?
信託報酬はファンドによって異なり、年率0.0~2.6%程度(税込)とばらつきがあります(2020年12月末時点)。
こうしたばらつきが生じる理由の1つに運用手法の違いが挙げられます。
例えば、株式運用にはパッシブ運用(インデックス運用)とアクティブ運用があります。
パッシブ運用とは、市場全体(インデックス)の動きと同様の運用成果を目指す運用手法です。パッシブファンドの場合は、銘柄選定のプロセスが少なく運用会社の報酬などが低水準であることに加え、銘柄の入れ替えがアクティブファンドよりも少ないことから、売買手数料などのコストも小さく済みます。一方、アクティブ運用は、ファンドマネジャーやアナリストが今後上昇の期待できる銘柄を厳選し、運用成果を上げることをめざす運用手法です。アクティブファンドは、情報収集や調査、分析、意思決定、取引執行などのプロセスが多いことや、収益を求めて積極的な売買を行い、コストもかさむことから信託報酬が高い傾向があります。
※公募株式投資信託(追加型、除くETF)
※2020年12月末現在
出所:QuickのデータをもとにアセットマネジメントOne作成
信託報酬の多寡は運用成果にどう影響するの?
下の図は異なる信託報酬のファンドを20年間保有した場合(100万円を年率5%で運用)の結果を表しています。
毎年、少しずつですが確実に運用結果に差が開き、10年後には約20万円、20年後には約60万円もの差になります。実際には投資信託のリターンにはばらつきがあり、収益を予測するのは難しいですが、信託報酬はあらかじめ把握することができます。中長期で運用を考えた場合、信託報酬が大きくなるほど投資家にとっては実質的な利益が減るため、コストを抑えることが、運用成果をより大きくすることにつながるといえるでしょう。
※信託報酬以外は考慮していません。
※信託報酬は簡便化のため年次で計算しています。
※信託報酬 ゼロ:最低の信託報酬
※信託報酬 年率1.323%(税込):公募株式投資信託(追加型、除くETF)の平均(2020年12月末時点)
信託報酬が高いファンドはダメなファンド?
前述のように、信託報酬が中長期的なパフォーマンスに与える影響は小さくないため、コストを抑えることが大事とご説明しました。
しかし、信託報酬が高いファンドはダメなファンドなのでしょうか?確かに同じインデックスを参照したパッシブファンドの場合は、中身がほぼ同じですから、信託報酬が低いファンドを選ぶのが合理的といえるでしょう。
しかし、ファンドの良し悪しは信託報酬だけで判断できるものではありません。2020年は2月下旬からコロナ・ショックに見舞われました。弊社の日本株のインデックスファンドAと日本株ファンドで2020年にもっともパフォーマンスが高かったアクティブファンドBを比較してみると、信託報酬の水準はそれぞれ異なりますが、パフォーマンスも大きく異なります。このように、同じ資産クラスのファンドでも、インデックスファンドとアクティブファンドとではそもそも投資銘柄が大きく異なる場合も多く、信託報酬の多寡のみで運用成果の優劣が決まるわけではありません。特に、コロナ・ショックのような相場環境が大きく変化する局面では、銘柄の入れ替えが柔軟にできるというアクティブファンドの優位性を上手く発揮できれば、相応のパフォーマンスが期待できると言えるでしょう。
※期間:2019年12月30日~2020年12月30日(日次)
※2019年12月30日を100として指数化
※インデックスファンドAの信託報酬:年率0.187%(税込)
※アクティブファンドBの信託報酬:年率1.672%(税込)
※上記は信託報酬の多寡でパフォーマンスの良し悪しが決まるものでないことをわかりやすく説明するために例示したものであり、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。また、一定期間の比較であり、アクティブファンドBがインデックスファンドAに劣後する場合もあります。
まとめ
信託報酬は、信託財産から毎日自動的に差し引かれているため、コストがかかっているという認識が薄れがちです。しかし、「ちりも積もれば山となる」ということわざにもあるとおり、中長期では運用成果に大きな差が出ていることがわかりました。このことから、中長期で資産形成を考える場合は信託報酬が低水準なものを選択するのは理にかなっていると言えるでしょう。 一方で、これまで見てきたように信託報酬が相対的に高いアクティブファンドには、ファンドマネジャーが丹念に投資先をリサーチし、厳選した銘柄に投資することで非常に優れたパフォーマンスを誇るものも多く存在します。したがって、信託報酬の高い、低いだけにとらわれず、その時の相場環境や資金の性質などに合わせて、適宜ファンドを選択していく必要があると言えるでしょう。 さらに、最近ではテーマ型インデックスファンドといった、単に信託報酬が低水準なだけでなく、インデックスファンドに付加価値を加える新たな潮流も生まれており、投資家の選択肢も広がっています。 投資家のみなさまが“信託報酬”をよく知ることによって、上手にファンドを使い分け、かしこい資産形成を実践していく一助となれば幸いです。
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