資産運用会社大解剖⑤:ファンドはどうやってつくられてるの?
2019/09/17
投資信託とは、「投資家から集めたお金をまとめて、運用の専門家(ファンドマネジャー)が株式や債券などに投資・運用し、その運用成果を投資家それぞれの投資額に応じて分配する仕組みの金融商品」とされています。投資信託はこれといった形をもたず、目に見えないとも言われています。そんな投資信託がどのようにつくられているのか、ご存知の方は少ないのではないでしょうか。
そこで今回は皆さまに、より投資信託を身近に感じていただくために、投資信託(以下、ファンド)が運用会社でどのように作られ、皆さまの元に届くのかをご紹介します。
まず、新規ファンドは次のようなプロセスを経て設定されます。
※上記はイメージであり、すべてを表したものではありません。
各プロセスで何が行われているのか詳しく見ていきましょう。
① アイデアの検討
第一歩として、どのようなコンセプトのファンドをつくるか議論します。
例えば、ファンドマネジャーや商品開発の業務に携わる職員がアイデアを持ちより、商品コンセプトを決定する方法があります。他には、営業部門の職員が、販売会社や投資家からのニーズをもとに、ボトムアップで商品アイデアを提案することもあります。アイデアの具体的な例として、AI(人工知能)や5G(第5世代移動通信システム)など長期成長が見込まれる分野に投資を行うといった、あるテーマに沿ったアイデアをもとにファンドが作られることもあります。他には、多資産に投資しリスク抑制を目標とするファンド、手数料等を極力抑えた低コストのファンドなど、アイデアの種類は多岐にわたります。
このようにアイデアをいくつか持ちより、ファンドのコンセプトを固めます。次に、そのアイデアを商品化するにあたって、実現が可能かを検討します。
② 実現可能か検討
アイデアを商品化するにあたって検討する課題も多岐にわたります。具体的な検討課題として、ファンドの形態や運用方針が、投資信託法(投資信託及び投資法人に関する法律)等の法律や投資信託協会が定める規則を遵守したものとなっているのかなどを調査し、議論します。他には、そのファンドが投資対象とする市場は、多くの投資家から資金を集めて多額の運用を行うのに十分な流動性があるかの確認や、実際に試作段階でファンドのバックテストなどを行い、商品性を確かめていきます。
また、運用会社にはフィデューシャリー・デューティ(受託者責任)という、顧客本位の業務運営を履行していく義務があります。もう少しわかりやすく説明すると、運用会社は投資家の資産を預かる者として、投資家が最善の利益を享受できるよう、業務運営を行う必要があります。そのため商品開発においても、投資家の利益に対して最善が尽くされているか、投資家の目線に立った議論を行います。
このファンドの実現性に係る検討は商品開発のプロセスの中でも極めて重要であり、高度な専門知識と経験を必要とします。ここでファンドの実現性が確定すると、各種書類を作成し、新商品の届出を行う準備を始めます。
③ 各種書類の準備
ファンドの募集にあたって必要な書類は多くありますが、ここでは代表的なものをご紹介します。
1. |
有価証券届出書 |
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ファンドの概要が確定したら、金融商品取引法に基づき有価証券届出書の作成を行います。この有価証券届出書には、発行者の営業および経理の状況、その他の事業の内容に関して重要な情報およびファンドの発行条件などが記載されています。 |
2. |
投資信託約款 |
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投資信託約款は、運用会社と受託銀行との間で締結される契約で、ファンドの主要投資対象、運用方針、投資制限から運用会社、受託銀行、受益者の権利義務などが規定されています。 |
3. |
目論見書 |
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目論見書は購入しようとする投資信託について、投資判断に必要な重要事項を説明した書類で、その特徴やリスク、手続・手数料等などが記載されています。ファンドを購入する際は必ず目を通す必要のある書類です。 |
4. |
販売用資料 |
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販売用資料は主に投資家に商品内容を説明するための資料です。販売用資料では、目論見書で記載している内容のほかに、ファンドに関わる市場環境の情報などを掲載することで、より具体的にファンドの特徴を理解するのに役立ちます。 |
④ 募集の開始
有価証券届出書を提出し、ファンドの募集を開始します。募集期間を設けているファンドでは、運用がスタートする前に、ファンドの購入が可能です。現在の購入方法は主に2通りあります。
1. |
証券会社や銀行などの販売会社の店頭で販売員を通して購入する |
2. |
販売会社などが運営するウェブサイトから購入する |
販売会社を通して購入すると、販売員からファンドの内容や申込みの手続きなどの説明を受けることができます。一方、ウェブサイトから購入する場合、店頭で購入するより購入時手数料が低く設定されているケースが多くみられます。
募集期間内にファンドを購入すると、設定時から運用に参加することができます。基準価額は通常10,000円から始まるため、その後の運用成績を把握しやすいというメリットがあります。
⑤ ファンドの設定
募集期間が終了し、資金が集まったら、いよいよファンドの運用が始まります。
以上がファンドの商品設計から、運用開始までの流れとなります。アイデアの検討から実際にファンドが設定されるまで、ファンドの内容にもよりますが、最低でも約2~3ヵ月の期間を要します。ファンドの実現性の検討について、投資家の不利にならないよう、慎重な議論、調査、擦り合わせを行うことに最も時間を必要とするため、長い時は1年以上の期間を要することもあります。
まとめ
今回は、投資信託がどのようにつくられ、設定されているのかをご紹介しました。
皆さまにとっては、ファンドがどのようにつくられているかということよりも、何のファンドを選べばよいのか、といったことの方が関心は高いかもしれません。ですが、今回のように自分が購入するファンドがどのような過程で設定されているのかなどを知っていただくことで、投資信託に対する知識が更に深まるのではないでしょうか。今回の記事をきっかけに、投資信託をより身近に感じていただければ幸いです。
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