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地域通貨とは?地方創生の新たなけん引役として期待大!

2023/02/24

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先日、筆者の自宅近所の商店街で長い行列を見ました。ずいぶん賑わっているので、何かのイベントかなと思って近づいてみると、その商店街限定で使える「プレミアム付き商品券」を販売していました。1冊4,000円で、500円券が10枚(5,000円分)付いてくるという内容で、お得さに驚きました。毎週末のようにその商店街に出かけている筆者にとって、5,000円は日用品の購入で確実に使う金額です。いそいそと行列に並びました。
普段はあまり賑わっている印象のない商店街なのですが、行列に並んでいる人たちの生き生きとした表情が印象的でした。加盟店の一覧を見ながらどこのお店で使おうかと相談している家族も見かけました。使える場所が限定されているというのは、一見すると不便なようですが、その地域に根差して消費をしている人たちには、お得さと相まって特別の嬉しさがあるものなのかもしれません。筆者の幼いころ、「地域振興券」というものが発行された思い出もよみがえり、地域限定のお金の在り方に強く興味を引かれました。本記事では地域限定のお金である「地域通貨」の新しいトレンドを探ります。

地域通貨の歴史

地域通貨は、特定の地域での消費の促進を主な目的として利用される通貨です。金銭に近い紙幣のようなものもあれば、商品券やポイントなどの形をとることもあります。いわゆる法定通貨(日本における円など)の発行は国だけが行うのと異なり、地域通貨の発行体は地方自治体、商店街、地元企業、NPOなど様々です。
実は、地域通貨は1980年代以降の欧米で盛んに発行されてきた歴史があります。人々の相互扶助、地域コミュニティの活性化、地域内の消費の促進が目的とされたようです。そして、日本においても1990年代後半から2000年代前半にかけて地域通貨ブームが起きました。しかし、2005年あたりをピークとし、地域通貨ブームは下火となっていきます。その背景には、利用者側にとっては利便性の低さにより普及しなかったこと、運営側にとっては地域通貨を紙幣として発行する際の労力やコストの増大があったと考えられています。

地域通貨の歴史

デジタル地域通貨による再注目

一時は衰退したかに思われた地域通貨ですが、近年再び脚光を浴びることになりました。そのきっかけとなったのが「地方創生」と「フィンテック」です。

「地方創生」は人口の東京一極集中を是正し、地域の特性に即した地域課題の解決を通じて、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくことを目指すものです。政府が定める「まち・ひと・しごと創生」の長期ビジョンのなかで地方創生の4つの目指す方向 が示されています。

地方創生が目指す方向

  • 自らの地域資源を活用した、多様な地域社会の形成を目指す。
  • 外部との積極的なつながりにより、新たな視点から活性化を図る。
  • 地方創生が実現すれば、地方が先行して若返る。
  • 東京圏は、世界に開かれた「国際都市」への発展を目指す。

地方の活性化を目指す地方創生と、地域内での消費の活性化を促す地域通貨は非常に相性が良いと言えます。

そして、「フィンテック」は金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語で、金融サービスとテクノロジーを結びつけたさまざまな新しい動きを指します。スマートフォンの普及に加えて、コロナ禍を背景にキャッシュレス決済が大きく進展したことで、フィンテックは私たちの生活にも非常に身近なものになりました。筆者も初めてQRコードにより支払い行った際に、その便利さに驚いた記憶があります。

現在の地域通貨においてもテクノロジーの力は大いに活用されています。過去の地域通貨との違いを2点、見ていきましょう。1点目は、テクノロジーが地域通貨に組み合わさることにより参加人数の規模を拡大することが容易になったということです。過去には「地域通貨を紙に印刷し、それを利用者に手渡し」、利用者も「地域通貨を受け取ってからそれを持ち運んで使う」、という行為が必要でした。テクノロジーの力により、利用者はスマートフォンさえあれば家にいながら地域通貨を手に入れることができるようになりました。発行者側の手間も減りました。双方にとって利便性は格段に向上したと言えるでしょう。その結果、1つの通貨について過去は多くても千人規模の利用であったものが、現在では数万人の参加が可能となっています。
2点目は、「地域」(そこに住んでいる人)に限定せざるを得なかった地域通貨の概念が「コミュニティ」にまで広がっており、地域外の人を利用可能にすることもできるという点です。関係人口という考え方をご存知でしょうか?「関係人口」とは、 移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指す言葉です。地方の人口減少が進む中で、その地方のファンとも呼べる存在である関係人口は、新たな経済活性化の鍵として注目されています。また、人間関係が希薄化している現代において、住民のつながりを再構築する役割も地域通貨に期待されています。その地域に住んでいる人も、住んでいないけれど愛着を持っている人も、一緒になって地域を支えていく1つのコミュニティを形成できるというのもデジタル地域通貨の新たな魅力と言えるのではないでしょうか。

最新のデジタル地域通貨

最新のデジタル地域通貨

デジタル地域通貨の最新トレンドとして、筆者が興味を引かれた具体例をご紹介します。

1. 共感コミュニティ通貨 eumo(ユーモ)

eumoは「共感」をキーワードに登場した新しい電子マネーです。例えば「飯能市山間エリア」や「信州まつもとエリア」などの地域単位や、「フェアトレード」などの価値観に共感するお店が集まるコミュニティ単位で、通貨を発行しています。ユーザーはクレジットカードや店舗でスマートフォンのアプリにチャージし、加盟店で使用します。アプリでQRコードを読み取り、お会計金額を入力するので、使い方は簡単。お店への支払いに限らず、eumoアプリを持っている個人間の送金も可能です。「共感」を形にする手段として、お店にメッセージを送る、他ユーザーにギフトを贈る、感謝の気持ちを支払金額に上乗せして払う(チップ)などの機能もあります。
eumoでは、チャージしたお金に3か月という有効期限があります。一般的に、お金の大きな特徴として言われているのが「価値保存(貯蔵)」、つまりお金は価値を貯め、保存しておくことができる(腐らない)ということです。これに対しeumoは「腐るお金」を標榜しています。有効期限を設けることで、チャージされたお金を使うモチベーションを高め、よりコミュニティ経済での流通を促しやすくなるといったメリットがあります。では、使えなくなってしまったお金はどこに行くのでしょうか?通常の電子通貨であれば、有効期限経過後の通貨は発行元の収入となります。しかしeumoでは、一定のルールに基づいて対象ユーザーや加盟店に再配布するそうです。eumoによるとそれは「みんなで一つの財布を持ち、その中で通貨と共感の気持ちが循環しているイメージ」なのだそうです。
eumoのウェブサイトでは、通貨の流通量、ユーザー数、加盟店数などをすべて公開しています。徹底して透明性を確保することもeumoの大切なビジョンであるようです。

2.まちのコイン

まちのコインは2023年2月現在で25地域に導入されている地域通貨です。それぞれの地域で特徴的なコインがラインナップされています。コインの名称も面白く、例えば琵琶湖で有名な滋賀県なら「ビワコ」、金属加工で有名な新潟県燕三条なら「メタル」など、眺めているだけで地域のイメージが浮かんで楽しくなってきます。使い方もとても簡単です。「まちのコイン」アプリをダウンロード後、自分がコインを使いたい地域を登録します。「まちのコイン」では、現金のチャージ機能がありません。利用者は各地域の加盟店で「チェックイン」することでコインをもらえます。地域のイベントに参加したり、誰かのちょっとした困りごとを解決することによってコインをもらうという手段もあります。筆者が確認した時点では、庭園の草取りや日本酒の空き瓶のリサイクルに対して数百ポイントが付与されるなど、ユニークな体験がたくさん用意されていました。
集めたコインは地域のお店でスペシャルなメニューや体験と交換できます。「お金で買えない経験」を買えるコインの存在によって、地域の人々のきずなが強まり、結果として経済の活性化につながっていくことを狙いとしているようです。

いかがでしたでしょうか。皆さまの住んでいる地域、大好きな地元、お気に入りの旅行先などの地域通貨を調べて使ってみると、お得さに加えてその地域とより強い心の結びつきが生まれ、皆さまにとって特別な場所がまた一つ増えるのではないでしょうか。

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