推し活とは?市場規模にも表れる意外な事実 ―あなたも実は推している!?―
2023/02/17

突然ですが、皆さまには「推し」がありますか?もしくは「推し活」を行っていますか?
実は筆者、「推し」があります!「プロレス」と「競馬」です。特定のレスラーや馬と言うよりは運営団体や血統を「推し」ているのですが、例えば「プロレス」ですと、2つのプロレス動画配信サービスをサブスクで購入しています。また、それらの動画配信サービスで試合の配信をライブ観戦したり、選手・関係者が配信しているYouTube動画を観たり、実際に見たい試合があると会場にも足を運びます。Tシャツなどのグッズも買います。
また、「競馬」はギャンブルのイメージが強いですが、推している馬たちを応援してレースを楽しむのが筆者の「推し活」です。休日に開催している中央競馬を中心に、来週のレースはどの馬が走るのか、調教の調子はどうかといった情報をチェックしています。その他にも、地方競馬の結果や海外競馬の結果など日々新しい情報が配信され、できるだけチェックするようにしています。
正直なところ「推し」への興味は尽きることなく、チェックしきれません!「推し」に対して、ハマればハマるほど時間が足りなくなります(ほどほどが大事だとは思うのですが…)。
ではなぜ、限りある時間をこれらに費やしているのか?筆者自身改めて考えてみると、やはり「推し活」によって人生・生活が豊かになっている実感があるからだと思います。前置きが長くなってしまいましたが、そんな人生を豊かにしてくれる「推し活」について書いていきたいと思います。
そもそも「推し活」とは何なのか?この疑問を調べるうちに、意外な事実も発見でき、それは市場規模にも表れていることが分かりました。本記事では筆者が個人的に行った調査結果を報告したいと思いますので、ぜひ気楽な気持ちでご覧ください。
「推し」とは?「推し活」とは?
今やだいぶ世間に定着した言葉ですが、応援している対象のことを「推し」と言います。また、その「推し」を様々な形で情熱的に応援する活動のことを「推し活」と言います。
なぜ、「推」すという言葉なのでしょうか?ライターとして広く活動する横川良明さんの著書『人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた』(サンマーク出版)にはその理由が下のように書かれています。
「「応援」とは読んで字のごとく「援ける者」と「応える者」、この二者によって成立しています。一方、「推す」とはつまり「推薦する」こと。この「推し」という言葉には、ファンと芸能人の二者にとどまらず「推薦される」第三者の存在が含まれています。単に対象に声援を送っているだけなら「応援する」で事足りる。第三者に推しの良さを語り、あわよくば好きになってもらいたい。この布教精神が、自己完結型の「応援」とは異なる熱狂を生んでいるのです。」
冒頭で感じ取れた方もいるかもしれませんが、確かに筆者は「推し」について語る時、「相手にも知ってほしい、まずは少しでも体験してもらいたい」という気持ちがこもっている節があります。
未経験者・初心者の方には、「こんなに面白いことがあるのよ」「思ったより簡単にはじめることができるのよ」と勧誘するがごとく相手に語り(引かれていなければいいのですが…)、「推し」が共通な相手に対しては「やっぱりあの試合(レース)は良かったね」といった共感などを目的として熱く語っていることに気づきます。
メディア等に出てくる「推し活」は強烈なキャラクターの人を目にすることもあり、少し遠い世界であるように感じるかもしれません。しかし、実は自覚していないだけで、「周りにも良さを共感して欲しい」人やモノは何か?と探してみると、自らの「推し」という存在がすぐに思い浮かび、実際に人に勧めた経験があるのではないでしょうか。
様々な「推し」の対象
「推し」と言えば、アイドルや俳優などの実在の人物が先ずは頭に思い浮かぶかもしれませんが、アニメやゲームのキャラクターなども「推し」として大きな支持を得ていますし、それこそ鉄道や城、仏像、動物などありとあらゆるものが「推し」となりえます。
また、筆者は「競馬」では元々好きだった馬の血統が入った馬たちを応援しながらレースを見るという、少し変わった楽しみ方をしています。同じジャンルの「推し活」でも楽しみ方は様々と言えるでしょう。
「競馬」と言えば、実在の馬をかわいい女の子へと擬人化させたスマホゲーム「ウマ娘」が大ヒットし、実際に競馬人口自体も増えたと耳にします。キャラクターへの「推し活」が少なからず競馬人口増加の要因になっていると推測でき、その影響力の強さがうかがえます。 千差万別の「推し」の対象、千差万別の「推し活」としての楽しみ方があり、周りの人とそれぞれの「推し」について話してみると、新たな発見があるかもしれません。
多様化する「推し活」の方法
「推し活」とテクノロジーの進化は親和性が高いと言えそうです。新たな技術・仕組み・サービスの登場が、「推し活」方法の多様化にも影響を与えています。
おそらくインターネットが発展する前の「推し活」(当時はこの言葉さえもなかったと思われますが…)は自己完結型で、共感の範囲も身近な人々が中心、ファンクラブや同じ対象を応援している人たちが集う施設(ライブ会場、イベント会場等)まであたりが精一杯の共感の範囲であったのではないでしょうか。
ところが、インターネットが普及すると情報の受発信の制限がなくなり、究極的には世界中の人々と共感が出来るようになりました。ブログやSNSで自らの「推し」に関する情報を簡単に発信することが出来るようになり、情報を見た人からコメントをもらうこともありますし、発信した情報を拡散してもらえると、さらに多くの人に情報が波及します。
「推し活」の方法についても、以前は「ライブや舞台、イベント等に参加する」、「ビデオ・DVD・CD等を購入・レンタルし鑑賞する」、「グッズを集める」というように、外出するなどの行動を伴いましたが、今やスマホ一台あれば様々な「推し活」が可能です。
<例>
- SNSで「推し」に関する情報をチェックする。「推し」の魅力を発信する・布教する。
- ECで「推し」の公式グッズを購入する。「推し」が使っていたモノを購入する。
- 「推し」のライブ配信で投げ銭を行い応援する。
- 「推し」が何かしらのプロジェクトを行うため、クラウドファンディングで資金を集めているので支援する。
「推し活」の市場規模
株式会社矢野経済研究所が「オタク」市場に関する調査を行っており、主要14分野の市場規模について公表していますので、確認してみましょう。
単位:億円
分野 | 算出ベース | 2021年度 |
---|---|---|
アニメ | 製作事業者売上高ベース | 2650 |
同人誌 | 小売金額ベース | 800 |
インディーゲーム | ユーザー消費金額ベース | 28 |
プラモデル | 国内出荷金額ベース | 415 |
フィギュア | 国内出荷金額ベース | 346 |
ドール | 国内出荷金額ベース | 104 |
鉄道模型 | 国内出荷金額ベース | 118 |
トイガン | 国内出荷金額ベース | 92 |
サバイバルゲーム | 事業者売上高ベース | 77 |
アイドル | ユーザー消費金額ベース | 1500 |
プロレス | ユーザー消費金額ベース | 110 |
コスプレ衣装 | 国内出荷金額ベース | 250 |
メイド・コンセプトカフェ、 コスプレ関連サービス |
事業者売上高ベース | 95 |
ボーカロイド | 小売金額ベース | 102 |
(出所)矢野経済研究所「「オタク」市場に関する調査を実施」(2022年)よりアセットマネジメントOne作成
市場規模が最も大きい分野は「アニメ」で2,650億円。次に「アイドル」の1,500億円、以降は「同人誌」(800億円)、「プラモデル」(415億円)、「フィギュア」(346億円)と続いています。
これらの14項目を単純に足し合わせると約6,700億円となりますが、その他の分野への波及効果はずっと大きなものになると考えられます。 例えば、アニメから入った視聴者はアニメのもととなったコミックスやノベルを購入することも十分考えられますし、人気アニメはゲーム化されたり、中にはパチスロ機種となることもあったり、興味・関心、そもそも存在すら知らなかった人もその市場に入り込んだりします。一つの「推し」から直接的・間接的な市場が発生し、経済圏として拡大するものも多くあります。
特に日本では、例えば「マリオ」や「ドラえもん」、「ガンダム」、「ドラゴンボール」、「ポケモン」などのアニメやゲームは世界中でも高い人気を誇り、コンテンツIP(Intellectual Property:コンテンツの知的財産)に優位性があると言われています。同じく矢野経済研究所のキャラクタービジネス市場に関する調査では、2020年度に2兆5,235億円もの市場規模となっており膨大な額であることが分かります。これは日本国内の市場規模であり、海外市場を含めると更に大きな規模であることが容易に想像されます。皆さまも知らず知らずのうちに誰かの「推し活」に協力していたというケースがあるかもしれません。
「推し活」を楽しむために
最後に、「推し活」を楽しむために注意したいことがあります。 大きく分けると、自分に向けて注意することと、会話の相手に向けて注意することの二つがあると思います。なお、これは筆者個人が注意していることですが、「推し活」を楽しむうえで「皆がそうだったらいいな」と思うことを記します。
<自分に向けて>
- 家計を圧迫しない範囲内でお金を使う。
- 自分と同じ「推し」に足を踏み入れだした人に対して、マウントをとらない(上から目線にならない)ことを意識する。
- 自分の「推し」に批判的な発言・発信を聞いたり、SNS等で見かけても、「そういう人もいるよね」と飲み込む。
<相手に向けて>
- 相手が「推し」について熱く語っている時は、自分が興味なくても最後まで話を聞く努力をする。
- 相手の「推し」「推し活」に対してネガティブなことを言わない。
- 相手の対象へのハマり方の「深さ」「浅さ」についてあれこれ言わない。
「推し活」自体が強い情熱を含んでいるので、周りが見えなくなる場合もあるかと思いますが、そんな時こそ客観性を大事にして立ち止まることで、長く楽しく「推し」に寄り添っていけるのではないでしょうか。
最後に、本サイト「わらしべ瓦版」は金融系情報メディアですので、金融メディアらしく締めくくりたいと思います。
お金の使いすぎにはご注意ください。「推し」もそれを望んではいないでしょう。
資産運用の基本は長期投資ですが、「推し活」も長く活動することで「推し」への知識や想いを積み上げていくことが大事だと考えます。
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