障害者割引とは?健常者にも知ってもらいたい制度と理由
2022/12/16

令和4年の障害福祉分野の最近の動向(厚生労働省)では、日本の障がい者の総数は964.7万人、人口の約7.6%に相当する掲載がありました。障がい者の割合は年々増加傾向にあり、それに比例して障害福祉サービスの予算額も拡充しています。
障がいのある方も普通に暮らし、地域の一員としてともに生きる社会作りを目指して厚生労働省をはじめ、多くの組織・団体が自立を助成する制度を採用し、障がい者の受け入れ態勢を強化しています。
今回は障がい者の方が、経済面や機会の不平等にならないように、国や自治体、民間企業が導入した「障害者割引」について理解を深めます。健常者の方もぜひお付き合いいただけたらと思います。
障害者割引とは
障害者割引はなぜあるの?と疑問に思う方もいらっしゃると思いますが、障がい者が健常者と同様な動作を達成しようとした場合、意図しない出費を余儀なくされるケースがあります。
具体的には、車移動を必要とする場合、生活に伴う増改築費用を伴う場合、補装具(補聴器や車いす)等の購入やメンテナンスをする場合、介助犬が住める住宅に転居する場合、といった日常生活の能率の向上を図るために必要な出費です。他にも、障がいのための治療費や思うような就労が困難となるケースもあり、経済的余裕が得にくい場合もあります。そのため社会へのかかわりに対してのハードルが健常者よりも高くなる傾向があります。
障害者割引は、障がい者の機会ハードルを下げ自立と社会活動への参加を支援することで、平等に社会参加ができるようにするために設けられた大切なサービスとなります。
障害者割引の対象者とは
では、障害者割引を利用するにはどのような条件が必要でしょうか。 割引を適用する際には、障害者手帳を所持している方がいること、「等級・度」と「種」が対象の割引に満たしていること、の2つの条件を確認する必要があります。
1.障害者手帳を所持している方がいること
単純に「障害者手帳を所持している方」と記述していないのには理由があります。障がいの程度によっては付添人(介護者)が必要であり、その場合、付添人の方も割引が適用されるケースがあるからです。
ちなみに厚生労働省では、「障害者手帳」は身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種の手帳を総称した一般的な呼称となります。
画像出典:厚生労働省HP
2.「等級・度」と「種」が対象の割引を満たしていること
初めに、「等級・度」や「種」について説明します。
「等級・度」とは、障がいの程度を示す単位です。身体障害、精神障害では「級」が用いられ、知的障害では、「度」によって、障がいの度合いを示しています。1級、1度が最も障がいの程度が重い判定です。
一方「種」については、「等級・度」を第1種、第2種として区分する単位です。第1種、第2種の判断は、「付添人が必要か否か」となることがひとつの目安となります。「種」は、各障害分類の「等級・度」によって、第1種、第2種の区分は異なります。
例として、身体障害者手帳を保持する視覚障害の場合、視覚障害の程度が1級~3級および4級の1の場合は第1種(付添人が必要)、4級の2および5級~6級は、第2種(付添人が不要)と表現されます。
「等級・度」「種」は、診断医による医師意見書を元に市区町村や都道府県の管轄組織が判断した基準であり、自己判断によるものではありません。「等級・度」「種」は障害者手帳に記されるので、これを提示することで割引が適用されます。
身体障害者手帳 | 療育手帳(東京都の場合は愛の手帳) | 精神障害者保健福祉手帳 | |
---|---|---|---|
等級・度 | 各障害分類ごとに障害の程度に応じて1~6級 | ・知能指数に応じて重度(A)重度(B)の判定 または ・(東京都の場合)障害の程度に応じて1~4度の判定 |
障害の程度に応じて1~3級 |
種 | 各障害分類の「等級・度」によって、第1種、第2種が区分 | [1種] ・重度(A)※ ・(東京都の場合)1~2度および3度+身体障害者手帳1~3級 [2種] ・重度(B)※ ・(東京都の場合)3~4度 |
- |
※重度は都道府県ごとに細分化される場合があります。
出所:厚生労働省、東京都福祉保健局の情報をもとにアセットマネジメントOne作成
障害者割引の各施設の使用条件と割引率
障害者割引は、全国一律、地域ごと、事業所ごと等、適用範囲は様々です。最近では、障害者手帳を取得された方向けに、障害者手帳の情報をスマートフォンのアプリに登録すると、登録内容に応じた全国の障害者割引を確認できるサービスもありますので、自分が受けられる割引を比較的簡単に確認することができます。
下の表は、2022年12月1日時点の各掲載元のデータをもとに一例として作成したものです。その他、地方ごとに定められた割引や飲食店で利用できる割引等もあります。
【障害者割引の事例】
利用施設 | 利用条件 | 割引率 |
---|---|---|
JR 旅客運賃割引 | 第1種身体障害者や第1種知的障害者とその介護者、12歳未満の第2種身体障害者や第2種知的障害者とその介護者 | 本人と介護者1人、各々50%割引 |
第1種、第2種身体障害者や第1種、第2種知的障害者が単独で片道101km以上(他社線との連絡含む)乗車する場合(普通乗車券のみ) | 本人のみ、50%割引 | |
航空旅客運賃割引 | 第1種身体障害者や第1種知的障害者が介護者と共に利用する場合 | 本人と介護者1人、割引運賃額は、事業者又は路線によって異なる |
第1種、第2種身体障害者や第1種、第2種知的障害者が単独で利用する場合 | 本人のみ、割引運賃額は、事業者又は路線によって異なる | |
その他の公共交通機関の旅客運賃割引 | 各公共交通機関ごとに割引を実施 | 各交通機関ごと割引率を設定 |
有料道路の通行料金の割引 | 身体障害者が自ら自動車を運転する場合、重度の身体障害者や重度の知的障害者が乗車し、その移動のために介護者が自動車を運転する場合 | 50%割引 |
国立博物館、国立美術館、国立科学博物館の入場料等 | 平常展・特別展について、障害者手帳の持参者とその介護者 | 本人と介護者1人無料 |
国立劇場の入場料等 | 障害者手帳の持参者 | 割引率は劇場によって異なる |
通信キャリア | 身体障害者手帳/療育手帳/精神障害者保健福祉手帳/他、の交付を受けていること | 公開の対象プランに基づき割引が適用 |
※2022年12月1日時点のデータであり、各掲載元の一部の条件、割引内容を抜粋したものです。
※利用条件や割引率の詳細は、掲載元よりご確認ください。
出所:各種情報をもとにアセットマネジメントOne作成
障がい者における税制度
国税庁のHPには、障がい者本人の他にも障がいのある親族を扶養している方向けに詳しく掲載があります。障害者割引とは名が異なるものの、税制度も国税庁が定める条件を満たせば適用となるため、障がい者の負担を軽減する制度の一つと言えるでしょう。
障がい者本人は、所得税の障害者控除、相続税の障害者控除、贈与税の非課税、心身障害者扶養共済制度に基づく給付金の非課税、少額貯蓄の利子等の非課税があります。また、障がいのある親族を扶養している方は所得税の障害者控除を受けることが可能です(控除額は障害者の区分により変わります)。
障害者割引の必要性
筆者も障害者割引を利用する一人ですが、一番の不安は「行先の施設が障がい者の受け入れが整っているか」ということです。近年では、障がい者が利用しやすい施設が増えているものの、まだまだそのような施設を見つけることに時間を費やすこともあります。
国や自治体、民間企業が障がい者割引を定め提示することによって、その施設は、障がい者が利用するための体制ができている、という表明であると感じます。そのため行先の選択肢が増え、利用する施設を決めやすくなると共に安心感を得ることができます。
一方、障害者割引をサービスとして提供する施設提供者側は、健常者、障がい者を問わず多くの方が利用可能な施設として周知でき、従業員もダイバーシティへの理解が高まる要因の一つとなりえます。
2006年に国際連合では、「私たちのことを私たち抜きで決めないで(Nothing About us without us)」を合言葉に世界中の障がい当事者が参加して採用された障害者権利条約があります。SDGsにもこの考えが多く取り入れられました。一人一人の違いが尊重され、健常者と同じように生活できるようになる社会は日本のみならず、世界規模で浸透してきています。
今回は、健常者の方が少しでも障がい者について理解を深められる機会を作りたいと思い執筆しました。先天的や後天的にかかわらず誰もが予期せず障がいを持つ可能性があります。誰もが豊かに生活ができるような障壁無き社会がこれからも発展していくことを望んでおります。
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