注目の「オルタナティブ投資」とは?主な種類とメリット・デメリットを分かりやすく解説
2024/08/13
「オルタナティブ投資」という言葉をご存じでしょうか?
投資経験のある方でももしかしたら耳慣れない言葉かもしれませんし、言葉は知っているけど中身はよく知らないという方もいらっしゃるかもしれません。最近では個人投資家でもオルタナティブ投資の機会が増えてきました。
本記事では、近年金融業界で注目度が高くなっているオルタナティブ投資について、その概要や主な種類、投資するメリット・デメリットについて分かりやすく解説します。
1.オルタナティブ投資とは
オルタナティブとは英語の「alternative」を指しており、直訳すると「代替」「代わりの」といった意味です。そこから転じてオルタナティブ投資は上場株式や債券といった伝統的資産とは異なる資産への投資を意味しています。 伝統的資産以外への投資であればオルタナティブ投資といえることから、金、骨董品や美術品、ワインといった投資なども含まれ、その投資対象資産は様々であり、一義的に定義することは難しいものがあります。
そのため、ここでは近年、資産運用業界で注目されているヘッジファンドやプライベート資産への投資を中心に解説したいと思います。
オルタナティブ投資は現在、年々成長を続けています。2008年には約3兆ドル規模だった市場は2019年には約10兆ドルに、2028年には25兆ドルを超えると予想されているデータも出ており、その市場規模は非常に大きいものとなっています。
2.オルタナティブ投資が注目されている背景
年々成長しているオルタナティブ投資が国内で注目されており、資産運用業界の中でもホットな話題といえる主な背景をご説明します。
資産運用立国実現プラン
岸田政権において新しい資本主義の実現を目指しており、日本の家計金融資産の半分以上を占める現預金が投資に向かい家計に還元されることで、成長と分配の好循環を実現していくことが重要と考えられています。
このような環境下で、2023年に政府により資産運用立国実現プランが策定され、その中で「オルタナティブ投資やサステナブル投資などを含めた運用対象の多様化が重要である。」と言及されていることからも、注目度が高まっていることが分かります。
大手金融機関から個人向けの商品が販売
本記事でご紹介するプライベート資産などは、主に機関投資家といったプロ向けの商品であり、個人投資家による投資は難しいものでした。しかしながら、近年大手金融機関から個人投資家向けの商品が販売されるようになるなど、プライベート資産の民主化が進んでいます。
株式市場の活況を背景に高まる投資先の分散ニーズ
米国株、日本株は過去最高値を更新するなど(2024年7月現在)、高値への警戒感もあります。このような中で、オルタナティブ投資は株式などの伝統的資産と違う値動きをするとされていることから、リスク分散のため投資家の需要が増しています。 私たちの年金を管理、運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も、オルタナティブ投資の投資比率を上限5%に設定し、投資を行っています。オルタナティブ資産全体の時価総額は増加し、2024年3月時点で3兆6,972 億円(年金積立金全体に占める割合は1.46%)まで徐々に増加するなど、分散投資の需要が増していることが読み取れます。
2019年以降のオルタナティブ資産の時価推移(GPIF)
※上記は過去のデータであり、将来の投資成果等を示唆・保証するものではありません。
出所:GPIF公開資料よりアセットマネジメントOne作成
3.主なオルタナティブ投資の種類
オルタナティブ投資の投資対象資産は多岐にわたると前述しましたが、本記事では現在注目度の高いと思われるオルタナティブ投資の種類を3つご紹介します。
ヘッジファンド
ヘッジファンドとは多様な投資手法を用いて利益を追求することを目的としたファンドです。ヘッジファンドはある意味なんでもありの投資手法ともいえますが、代表的な戦略としては以下のようなものがあげられます。
・グローバル・マクロ戦略
ヘッジファンドと聞いた時に、一般的にイメージされる戦略かと思います。グローバル市場において、為替・金利・株式・商品等あらゆる市場から、投資機会を見出し、現物・先物・デリバティブを用いて市場の方向性とは関係なく収益機会を追求する戦略です。
・レラティブ・バリュー戦略
レラティブ・バリューとは相対価値を意味しています。この戦略は理論価格と市場価格や個別証券間の相対的な割高・割安を見極め、その解消に伴う収益を狙う投資戦略です。この戦略の中で有名な投資手法として債券アービトラージや株式マーケット・ニュートラルなどがあります。
・イベント・ドリブン戦略
合併、買収、提携、破産など企業価値に大きな影響を与えるイベント発生時に生じる価格の歪みを収益機会とする投資戦略です。この戦略の中ではM&Aアービトラージなどが有名です。
プライベート・エクイティ(PE)
PE投資とは未上場企業の株式に投資を行い、長期的に大きな利益獲得を目指す投資手法です。PE投資には投資先企業の状況に応じた投資方法があり、創業間もない企業へ投資を行うベンチャーキャピタル(VC)、ある程度成長している企業へ出資し、経営に携わることで企業価値を高めた後に株式を売却するバイアウトファンド、経営危機や経営破綻に陥った企業へ出資を行い、事業再生後に再上場や株式売却によって利益を上げる再生ファンドなどが含まれます。
プライベート・デット
プライベート・デットとは銀行ではなく、ノンバンクによる融資を指します。2008年のリーマンショック以降、銀行の融資体制が厳しくなったこと、金利の継続的な低下によりその市場規模は拡大しました。
プライベート・デットのリターンは主にキャピタル・ゲイン(価格上昇利益)ではなく、インカム・ゲイン(利息)であり、伝統的な債券と比較し、高い利回りが期待できる資産クラスとみられています。
その他、プライベート資産では投資対象として不動産やインフラ投資なども注目されています。
4.オルタナティブ投資のメリット・デメリット
ここまで紹介してきましたオルタナティブ投資ですが、伝統的資産と比較したときの一般的なメリット・デメリットについてご紹介します。
【メリット】
・リスク分散
オルタナティブ資産は株式や債券などの伝統的資産との相関関係が低い傾向があり、ポートフォリオに組み入れることでより高いリスク分散効果が期待されます。
伝統的資産は公開されている市場があり、その市場の動きに影響を受けますが、オルタナティブ資産は市場に非公開であることも多いため、オルタナティブ投資をすることで市場の影響を下げられるという狙いがあります。
・収益機会の分散
不確実な世の中において分散投資によってリスクを低減することも大切ですが、様々なリターン源泉を取りに行くことも大切です。伝統的資産のみの投資では、アプローチできる収益機会は少なく、世の中にたくさん眠っている投資機会を逃しているとも言えます。
オルタナティブ投資を通じて、収益機会を分散することで、ポートフォリオの目標リターンを安定的に達成する。もしくはより高い目標リターンが達成できる可能性があります。
・市場下落時にも、利益が得られる可能性
上記2つのメリットにもつながる部分はありますが、オルタナティブ投資は比較的市場の影響を受けにくいことや絶対収益*を追求するものも多くあります。そのため下落相場やマーケットの不安定な時にもリターンを得られる可能性があるというのはオルタナティブ投資の魅力の1つかと思います。
*絶対収益とは市場の方向性にかかわらず、投資元本に対する絶対的なリターンを得ようとする投資を指します。絶対に収益を上げるという意味ではありません。
【デメリット】
・低い流動性
株式や債券といった伝統的資産や一般的な投資信託は基本的に日々の買付、売却・解約が可能となっています。しかしながら、オルタナティブ投資は各戦略にも左右はされるものの、月次や四半期ごとの解約しかできないことは多いです。
低い流動性も、運用者にとっては日々の資金の流出入が安定し、運用に長期でコミットできることや低流動性プレミアムなど、メリットとなる側面はあります。しかし、投資家自身のタイミングでの解約が難しいこと、また、解約の上限値(ゲート)が設定されており、解約が集中した際には、換金自体が難しくなることはデメリットと言えるでしょう。
・情報の透明性が低い
オルタナティブ投資では、非公開の資産に投資をすることも多く、伝統的資産と比べると情報が十分に公開されていない場合が多いため、投資家自身が十分な情報が得られないことも多いです。また、株式などでは多数の指数が存在し、ファンドの運用状況をベンチマークと比較することが可能となっていますが、オルタナティブ投資においては必ずしも市場ベンチマークとして広く認知されているものが少ないこともあり、パフォーマンスの比較が難しいこともあります。
・最低投資金額が大きい
もともとオルタナティブ投資は機関投資家といったプロ向け商品だったということもあり、個人向け商品であっても一般的な投資信託と比較すると最低投資金額は高額になることが多いです。
5.まとめ
いかがでしたでしょうか。
今までは個人投資家がオルタナティブ投資を行う機会がないなど、投資を行うこと自体も難しい状況でした。しかしながら、現在は個人投資家が参入しやすい商品の導入も増えてきており、今後より一層オルタナティブ投資が身近になると思われます。一方で、伝統的資産への投資とは大きく違い、知識のないまま投資をした場合、想定した投資成果を得られない、場合によっては大きく損をすることも考えられます。
オルタナティブ投資は投資対象資産のリスク・リターンやその特性を十分に理解した上で投資をすることが非常に大切だと考えます。
今回の記事が皆さまのより良いポートフォリオ構築の一助となれば幸いです。
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