子供の金銭感覚を養って、「生活スキル」を身に付けよう
2018/07/03
子供の金銭感覚を養うベースは家庭にある
現代社会では、消費、貯金、保険、投資、賃貸など、生活のあらゆる場面でお金と関わりをもちます。そのお金には日常的に使われ、減少していくものと、金融資産に変化していくものに大別されます。こうした中、日本社会全体の金融リテラシー(知識・判断力)が低いのが現状です。2016年金融広報中央委員会が実施した「金融リテラシー調査」では、日本は米国や欧州と比べて正答率が低い結果となり、国民全体の金融に関する知識が少ない傾向が明らかになっています。
子供の将来を考えて、早い段階から金銭感覚・金融知識を身に付けてもらいたいと思う親が多いのではないでしょうか。最近は、金融リテラシーの重要性が政府や社会全体に認識されるようになり、学校でも学習する機会が増えました。
とはいえ、金融知識は生活のなかで応用できてこそ、「生活スキル」としての価値が生まれるため、教科書よりも日常生活のなかで、生活の基盤となる家庭のなかで育てていくことが大切だと考えます。赤ちゃんの時から、大人が絶えず話しかけたり、絵本の読み聞かせをしてあげるうちに、子供は自然に言葉を覚え、自分から読み書きできるようになることが多いです。子供の観察力、理解力、吸収力は優れています。日常生活で少しずつ、お金について話しかけたり、話合いの場を設けたり、お金をふれる機会を作ってあげるなどの実践を通じて、お金の教育環境を整えてあげましょう。
幼児期からお金にかかわる環境づくりを意識
⾦銭感覚を養うためには、大人も家庭における家計のやりくりなどがきちんとできていることが大前提です。大人の⾦銭感覚が、結果的に子供の⾦銭感覚に繋がりますので、大人が改めて自分たちの金銭感覚を見直す機会にもなるといえます。
普段の生活で、子供は大人と一緒に出かけたり、買い物したりすると、大人の行動をよくみています。レジでお金を出したり、お釣りをもらったり、クレジットカードを切ったりしているのをみている子供は、だんだん意味がわかるようになってきます。
筆者は過去、買い物に行くときに、「あ、お金が足りないかも」とつぶやいたら、隣にいた4歳の長男に「カードで買えばいいじゃない?」と言われ、驚いた経験があります。このように、日常生活で子供が興味を示したら、チャンスだと思って、少しずつ説明してあげるとよりわかりやすくて理解も早いでしょう。気がつけば、子供とお金のことで話し合いができる日もあっという間にやってくるかもしれません。
金融教育のツールとして活用するお小遣い
子供が小学生になることを機に、お小遣いを与える家庭が多いと思います。
そのなかで、与える方法として、理由がなく定期的、または不定期的に与えるケースや、お⼿伝いの対価やがんばったときのご褒美として与えるケースなど、それぞれあると思います。各家庭によって方針は違うので正解はありませんが、お金の教育においていえば、定期的に与えるほうがより金銭感覚が育つ傾向が強いようです。
金融庁が2015年に実施した「子どものくらしとお金に関する調査」(第3回)において、定期的にお小遣いを貯蓄している子供はより計画的にお金を使う意識を持っているという結果が出ています。
お小遣いを与えるメリットとしては、子供の自主性やお金の管理能力を養うことができることが挙げられます。お⼩遣いを渡すようになったら、欲しいものがあった場合はお⼩遣いの中でやりくりして、買えるようになったという話はよく聞きます。それは、子供にとって「自分のお金だから、自分で管理すべき」という意識が芽生え、自主性が育ってきたということになります。
また、お小遣いをあげると同時に、お小遣い帳をつけさせるのもいいでしょう。普段、家計簿をつけている家庭の場合、子供でも比較的簡単に始められるでしょう。お金の流れを知ることによって、自分で計画を立てて管理することを覚えるチャンスとなります。欲しいものの価格を調べるうち、色々な物の相場を知ることとなります。欲しいものが高い場合は、我慢することを覚えると同時に、貯蓄の重要性などへの気づきにもつながります。
成長に合わせて金融教育を深めていく
数年前から、金融リテラシーの普及に政府も力を入れ始めました。金融庁では2012年に、「金融経済教育研究会」を設置し、今後の金融経済教育のあり方について検討を行いました。2014年に「最低限身に付けるべき金融リテラシー」が発表されました。その内容をみてみると、
- 「家計管理」
- 「生活設計」
- 「金融知識及び金融経済事情の理解と適切な金融商品の利用選択」
- 「外部の知見の適切な活用」
の4分野に分かれます。
難しそうですが、小学生から高齢者まで年齢層別に、習得すべきスタンダードが「金融リテラシー・マップ」*に具体的に記載されています。学校教育のほか、家庭においても、子供の成長に合わせて金融教育を進めていけば、社会人になったときに、正しい金融知識を身に付いていることが期待できるでしょう。
*金融経済教育推進会議が発表した「最低限身に付けるべき金融リテラシー」の内容を年齢層別に体系的かつ具体的に記したもの
テーマパークの活用も有効手段のひとつ
これまで理論的なことを述べてきましたが、子供は自分からお金に関わる機会は大人より遥かに少ないです。「百聞は一見に如かず」「百考は一行に如かず」のように、実際体験したほうが早いかもしれません。そのとき、職業体験型のテーマパークを活用してみてはいかがでしょうか。
これはリアルな社会の縮図のようなもので、仕事やサービスが体験できて、消防士、パイロット、ピザ屋さん、裁判員、ファッションモデルなど色々な職業から選べます。ここで注目したいのは職業体験だけではなく、お金の教育もできるという点です。
まず、お金を稼ぐ大変さ、モノやサービスの対価としてのお金の必要さを知ること。働いたら給料をもらえたり、自分で作った成果物をもらえたりします。さらに、デパートに行って給料でもらったそのお金で、実際のお買いものができます。
次に、お金の流れや仕組みを知ること。パーク内に流通できる通貨があります。このお金で給料をもらったり、商品やサービスを購入したり、銀行に預けたりできます。銀行窓口もATMもあって、キャッシュカードも作られて使えます。しかも、預けるときに金利もつきますから、貯金の重要性を知ることもできます。高学年になり、自分で計算できるようになると、なお楽しいでしょう。
このように、お金を「稼ぐ」、「使う」、「貯める(運用)」と、お金の基本的な仕組みについてたくさん学べる場として、活用してみる価値はあると筆者は思います。最近、久しぶりにそのテーマパークにわが子を連れて行こうと思い、ホームページを覗いたら、「証券会社のコンサルタント」という職業もあることに驚きました。「この仕事を体験したい!」と思う子供たちは、きっと「お金」について自分なりに理解しているに違いないと思い、わが子にその日がやってくることも楽しみになりました。
最後に
お金の教育というと、学校で受ける教科書的な印象を受けてしまいます。しかし実際は、日常生活のなかで、少しずつコツコツ意識し、行っていくことが大切です。
さらに今、金融リテラシーの普及にあたり、政府や学校、社会全体などのバックアップ体制も整いつつある好環境のなかで、子供の成長に合わせて、大人はサポートしていくことで、子供は正しい金銭感覚で「生活スキル」のある大人になることができるのではないでしょうか。
キーワード:子育て
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