【半導体入門ガイド】種類と役割、製造工程に関わる日本企業をご紹介
2024/11/05
経済や株式市場関連、あるいは生成AIのようなテクノロジーなど、様々なニュースで見ない日はない「半導体」。ひと口に半導体といっても関連する企業は半導体そのものを作っている企業や半導体を作る装置を作っている企業、半導体を作るための材料を作っている企業など様々です。半導体関連企業の名前は知っていても、実は何を作っている会社なのか、などを知らないという方も少なくないのではないでしょうか。今回は半導体入門ということで、皆さまに半導体の種類、製造工程、それぞれに関わる日本企業をご紹介します。
半導体の種類とその役割
スマートフォンなど、身近な電化製品にも多く使用されていることから私たちの身の回りにあふれている半導体ですが、そもそもどういう性質のものを指すかご存じですか?半導体とは、電気を通しやすい金属(導体)と、電気を通さないゴムやプラスチック(絶縁体)の中間の性質を持つ物質です。つまり、ある条件下では電気を通しやすく、別の条件下では電気を通しにくくすることができます。
※上記は一般的な事項に関するイメージ図であり、すべてを説明しているものではありません。
では、まずは半導体にはどのような種類があるかについてお話します。今回はロジック半導体、メモリ半導体、パワー半導体、アナログ半導体に分けてお話しますが、覚え方は「頭脳!筋肉!感覚器!」です。
ロジック半導体とメモリ半導体は、コンピュータの頭脳に相当します。
ロジック半導体は制御や計算を行い、メモリ半導体はデータを保存する役割を持っています。ロジック半導体の代表例にはCPUやGPUがあり、メモリ半導体ではNANDフラッシュメモリやDRAMがあります。これらの半導体が高性能化・小型化することで、スマートフォンのメモリ容量も飛躍的に増大しました。
次に筋肉にあたるパワー半導体です。パワー半導体は、電気を変換する役割を持っています。例えば、発電所から送られてくる交流電気を、家庭で使える直流電気に変換する働きがあります。
※上記は一般的な事項に関するイメージ図であり、すべてを説明しているものではありません。
発電所で発電された電気は交流という形で、家庭やオフィスに届けられます。一方で、普段使っている家電製品は直流という電気で動きます。そこでパワー半導体が家電を動かすために交流から直流に変換し、さらにそれぞれに適切な電圧に変換しています。
動作させるために必要な力加減をするというまさに筋肉のような働きですね。
最後に感覚器官にあたるアナログ半導体です。アナログ半導体は、光や音、温度などのアナログ情報を、コンピュータが理解できるデジタル情報(「0」と「1」の信号)に変換する役割を持っています。マイクやスピーカーを思い浮かべてください。マイクで「声(音)」というアナログ情報を取り込み、デジタル情報に変換します。そして、デジタル情報をアナログ情報に変換、さらには増幅しスピーカーで出力します。アナログ半導体はこうした役割を担っています。
※上記は一般的な事項に関するイメージ図であり、すべてを説明しているものではありません。
半導体市場と経済への影響
このように、様々な種類の半導体が存在し、その市場規模は非常に大きいため、経済や株式市場への影響も大きくなります。例えば、パソコンやスマートフォン、自動車、家電などあらゆる製品に半導体が搭載されています。そのため、半導体の需要は製品の生産量に先行し、世界経済の動向を示す先行指標にもなり得ます。
半導体業界の景気動向は「シリコンサイクル」と呼ばれ、半導体売上高の統計が指標として用いられることがあります。フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)も、半導体関連企業の株価動向を示す重要な指標です。
半導体製造工程と日本企業の役割
半導体企業というと思い浮かべやすいのが、インテルやエヌビディア、サムスン電子など半導体の製品を作っている会社ではないでしょうか。日本企業でも、特定の製品では強い競争力を持つ企業がありますが、世界的にみて半導体製品のシェアが高いわけではありません。
一方で、半導体を作る機械である半導体製造装置と半導体の主要な部材・素材の各国シェアをみると、日本企業のシェアは、製造装置ではアメリカに次いで2位、部材・素材の分野ではほぼ半数のシェアを占める1位となっています。 これだけ日本企業の存在感がある半導体製造の分野ですが、まずは、どのように半導体が作られるかをみていきます。
半導体を作るには、初めに必要な機能を満たせられるような電子回路を設計します。
次にマスクブランクスと呼ばれる素材にその回路パターンを描きます。マスクブランクスではHOYAという日本企業が世界シェアトップです。
マスクブランクスに回路を描いたものをフォトマスクといい、ウエハに回路パターンを転写する際の原版にあたります。このフォトマスクも日本企業のシェアが高い分野で、半導体メーカーによる内製化が進むなか、外販メーカーとしてTOPPANホールディングス、大日本印刷と印刷会社の2社が存在感を示しています。 また、半導体の土台となるのがウエハという材料です。シリコン、日本語でいうとケイ素がウエハの素材の主流ですので、「シリコンウエハ」とも呼ばれます。 シリコンウエハでも、日本企業が世界シェアを握っており、トップの信越化学工業と2位のSUMCOで合わせて世界シェアの5割ほどを占めています。
ここまで出てきたのは全て半導体の素材を作っている企業ですが、いかに日本企業の存在感が大きいかがわかるかと思います。
では、回路パターンを転写し回路を形成する「前工程」、半導体チップに切り出していく「後工程」と呼ばれる製造工程に進んでいきます。
前工程では、まずウエハの上に薄い膜を重ねます。次にフォトレジストという感光剤を塗り、その上にフォトマスクを重ねます。露光装置で光を当てると、フォトレジストに回路パターンが転写されます。その後、不要な部分をエッチングという工程で取り除きます。
日本の株式市場でよく「半導体関連銘柄」としてあげられる東京エレクトロンは、この前工程の製造装置を作っているメーカーです。また、回路パターンを転写する仕組みが写真と似たようなものということもあり、トップシェアというわけではありませんが、カメラメーカーとして知られるキヤノンやニコンが半導体露光装置を作っています。
電子回路ができたので、ここからが半導体製造の「後工程」、完成までの仕上げです。まず、ダイシングという工程でウエハを小さな半導体チップに切り分けます。その後、切り分けたチップを組み立てて、実際に使える半導体製品にするパッケージングという工程があります。
最後にテストの工程です。出来上がった半導体デバイスが正常に機能するかなど検査します。
後工程においても、ウエハを切り分ける装置では、ディスコという企業が、テストで使う検査装置ではアドバンテストが世界トップシェアです。
こうした工程を経て、現代のキーテクノロジーである半導体は製造されます。
日本企業の存在感と将来性
ここまでで、半導体製造における日本企業の大きな存在感についてご紹介しました。今回紹介できなかった企業も多くありますが、特に半導体の素材や製造装置分野で日本企業のシェアが高いことがわかります。これからも日本企業が世界の半導体市場でどのように活躍していくのか、注目していきたいところです。
半導体は私たちの生活を支える基盤技術であり、経済や株式市場への影響も大きいです。今後も半導体市場の動向に注目し、投資の参考にしていただければ幸いです。
※企業名の記載は、これらの企業への投資を推奨するものではありません。
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