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電動キックボードに免許は必要?事故事例や法改正について解説

2022/10/14

知恵のハコ

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排ガスを出さないエコで気軽な移動手段として世界的な人気となっている電動キックボードは、大手コンビニチェーンで貸し出しを始める発表があるなど、実際に道路の脇を走っている電動キックボードを見る機会が増えた方も多いことでしょう。玩具のキックボードのように、手軽な乗り物というイメージがあるかもしれませんが、運転するには免許が必要です。しかしながら、無免許運転や事故などのトラブルが発生しています。本記事では、電動キックボードに係る事故の状況、法律改正前と後の法律の区分、ルール、そして保険について解説していきます。

電動キックボードが関与する交通違反・事故の発生状況

新宿区新宿の都道で、ナンバープレートなどを付けていない電動キックボードを無免許で運転し、赤信号を無視して交差点に進入、タクシーと出合い頭に衝突し、乗客の40代男性に軽傷を負わせ、自身も右手首骨折のけがを負った事故や、大阪では、繁華街の歩道を1人乗り電動キックボードの前方に知人を乗せて2人乗り走行した上、女性とぶつかり重傷を負わせ逃走し逮捕されるなど悪質な事故が発生しています。悪質な事件に限らず、電動キックボードが関与する交通違反や事故の発生はどのような状況でしょうか。

電動キックボード検挙(違反類型別)

<検挙件数(令和3年9月~令和4年3月) >

電動キックボード検挙(違反類型別)

※警察庁「パーソナルモビリティの安全な利用の推進の在り方について」のデータをもとにアセットマネジメントOne作成

電動キックボードが関与する交通事故

<相手当事者別(令和2~4年3月)>

電動キックボードが関与する交通事故

※警察庁「パーソナルモビリティの安全な利用の推進の在り方について」のデータをもとにアセットマネジメントOne作成

警察庁資料によると、電動キックボードによる検挙件数は、令和3年9月~令和4年3月の間で265件、歩道を走行するといった「通行区分」の違反が164件と最多となりました。また、同じく警察庁資料によると、電動キックボードが第1当事者または第2当事者(過失の重い順)となった人身事故は、令和2年~令和4年3月の間で40件、その内四輪との事故が16件と最も多かったようです。どうやら法令に関する理解不足から、車道や歩道を違法に走行している電動キックボードが後を絶たないと見受けられます。

現在の電動キックボードのルール

それでは、現在の法律の区分やルールはどのようになっているのでしょうか。

原動機 道路交通法 道路運送車両法
定格出力 同区分の
(排気量)
免許区分 最高速度(注 1) 通行区分 区分 車両の大きさ
0.6kW 以下 0~50 ㏄ 原動機付自転車
(原付)
30 ㎞/h 第一通行帯(注 2)
二人乗り不可
二段階右折(注 3)
第一種原動機付自転車 長さ:2.5m 以内
幅 :1.3m 以内
高さ:2.0m 以内
0.6kW 超~
1.0kW 
51~125 ㏄ 普通自動二輪車
(小型限定)
60 ㎞/h 高速道路 通行禁止
自動車専用道路 通行禁止
第二種原動機付自転車
(通称「原付 2 種」)
1.0kW 超~
20kW
126~250 ㏄ 普通自動二輪車
(普通二輪)
60 ㎞/h 二輪の軽自動車

(注1)一般道路において、標識や標示で指定されていない場合の最高速度。

(注2)複数車線のある道路では一番左側の車線となります。

(注3)進行方向の車線が三車線以上の道路で、二段階右折禁止の標識が出ていない交差点では原動機付自転車は二段階右折をしなければなりません。

※独立行政法人国民生活センター「電動キックボードでの公道走行に注意」のデータをもとにアセットマネジメントOne作成

電動キックボードは、道路交通法上の「車両」に該当し、電動式モーターの定格出力に応じた車両区分に分類され、電動式モーターの定格出力が0.60キロワット以下の電動キックボードは、道路交通法上の原動機付自転車に該当し、定格出力が0.60キロワットを超える場合は、その出力に応じて、普通自動二輪車などに該当します。つまり、道路交通法の車両区分に応じた運転免許が必要になるのです。以下、これに準じた主な電動キックボードのルールを記載します。

  • 歩道を通行することはできません。ヘルメットの着用や車両区分に応じた通行方法に従う必要があります。
  • 装置ついては、制動装置(前後独立)、前照灯、後部反射器、警音器、後写鏡、【番号灯、尾灯、制動灯、方向指示器、速度計】の構造や装置について、車両区分に応じた保安基準に適合しなければなりません。(原動機付自転車で最高速度が時速20キロメートル未満の車両については、【 】内の装置は免除されます。)
  • 自動車損害賠償責任保険(共済)への加入義務があります。
  • 地方税法に基づく軽自動車税(市町村税)の納税および課税標識(ナンバープレート)の表示が必要です。

ただし、上記とは異なるルールが設けられている「特例措置としての電動キックボード」があります。

特例措置としての電動キックボードとは

電動キックボードは海外、特に欧米で普及が進んでいます。国内でも、その流れに乗って展開を図る関連事業者等が諸規制の緩和を含むルール整備を求めました。これを受け、国家公安委員会および国土交通省は、産業競争力強化法に基づき、2021年4月、規制の特例措置を整備しました。現在はこの特例措置を前提に、電動自転車シェアリングサービス事業を展開する会社等が認定を受けて、東京都内、神奈川県・千葉県内等で電動キックボードのシェアリングサービス事業を展開しています。 異なるルールとしては、以下が挙げられます。

  • 最高速度が時速15キロメートル以下。
  • 認定を受けた事業者から新事業活動計画に従って貸し渡されているもので、認定を受けた区域内の道路を通行すること。
  • 必要免許は普通免許、自動二輪免許、小型特殊免許の何れか。(原動機付自転車免許では乗れません)
  • ヘルメットの着用は任意。
  • 普通自転車専用通行帯や車両進入禁止(自転車を除く。)、指定方向外進行禁止(自転車を除く。)を走行可。
  • 実施期間は令和3年4月23日から令和6年4月までの間(予定)。

事業者としては、 (株)Luup、(株)EXx、BRJ(株)、SWING(株)、(株)サンオータスなどがあります。

法律改正後のルールはどうなるの?

2022年4月19日、衆議院で道路交通法の一部を改正する法律案が可決され、新たに電動キックボードを想定した特定小型原動機付自転車という車両区分が認められました。施行は2024年夏頃までを目途としています。新たな車両区分では、一定の条件を満たす機種だと、16歳以上であれば運転免許不要でヘルメット着用は任意などの規制緩和が行われることになりました。日本のベンチャー育成など産業競争力の強化や、道路交通法における海外との整合性改善によるインバウンド需要の拡大などが期待されます。

特定小型原動機付自転車とは

電動キックボードの原動機付自転車に該当するなか、車体の大きさや構造が、自転車道で他の車両の通行を妨げることがなく、運転に関し高い技能を要しない車で、最高速度は時速20キロメートル、車体の大きさは長さ190cm×幅60cm以内を想定。

想定ルール

  • 免許は不要、ただし16歳以上。
  • 車道、普通自転車専用通行帯、自転車道を走行可能。ただし、最高速度の制御(時速6キロメートル)とそれに連動する表示をした場合には、例外的に歩道(自転車通行可の歩道のみ)、路側帯の通行可。
  • ヘルメットの着用は努力義務。
  • 違反者に対する措置は、交通反則通告制度および放置違反金制度の対象とし、悪質・危険な違反行為を繰り返す者には講習の受講を命令。
  • 原動機付自転車の軽自動車税の標準税率を参考としつつ、適切な税額の適用。
  • 標識(ナンバープレート)の表示。
  • 自動車損害賠償責任保険(共済)への加入義務。

任意保険は加入すべき?

現在の任意保険の対応状況は法律改正前と後では異なります。

法律改正前

個人として所有する場合は、原動機付自転車(定格出力が0.60キロワットを超える場合は普通自動二輪車)の任意保険と同じ扱いになります。原動機付自転車の単体で保険に加入する他、車の保険に加入されている方はファミリーバイク特約を付けたり、電動キックボード向けの自動車保険などもあります。
特例措置としての電動キックボードには、ほとんどのシェアリングサービス事業者が保険(対人対物について無制限)に加入していると思われます。

法律改正後

大手損害保険会社に確認したところ、特定小型原動機付自転車の保険については、原動機付自転車の任意保険と同じ扱いになるだろうとのことでした。細部についてはこれからだそうです。

電動キックボードは手軽で便利な乗り物ですが、現在も法改正後も原付と同じように自賠責保険は必須、任意保険は任意になります。なお、自賠責保険の対人賠償については次のように上限があります。

  • 死亡事故・・・3,000万円
  • 後遺障害・・・3,000万円

※神経系統に著しい障害を残して、常時介護が必要な場合は4,000万円まで、障害による損害(治療が必要な場合)120万円

自賠責保険は、被害者救済のための最低限の補償となっており、対人賠償保険のみで、対物賠償保険や人身傷害保険などは対象外です。電動キックボードが関与する交通事故では四輪との事故が一番多く占めていることから対物賠償についても心配です。
また最近、電動キックボードが絡む死亡事故が初めてありました。東京都中央区で男性が電動キックボードを運転中、方向転換して走り出そうとした際に車止めに衝突。前から倒れて頭を強く打ち付けたことが原因です。電動キックボードは原動機付自転車や自転車と比べ安定性に欠けるため、人身傷害保険についても必要かもしれません。
電動キックボードなんて玩具の延長だから、任意保険なんて必要ないと考えられるかもしれませんが、どうでしょうか。検討だけでもしておくと安心ですね。

まとめ

いかがでしたでしょうか。電動キックボードは今後ますますの普及が想定される一方、ルールの整備だけでなく、私たちの意識改革も必要があると考えます。
例えば、多くの方はお酒を飲んだ後の運転について原動機付自転車も車と同様に免停や免取の罰則を受けることは知っていると思われますが、電動キックボード(特例措置も含む)も同様に免停や免取の罰則を受けることをご存じの方は少ないように思います。法律改正後の特定小型原動機付自転車も、道路交通法第65条第1項に定められているように酒気を帯びて車両等(自転車などの軽車両も含まれる)を運転することは禁じられていることから罪に問われます。電動キックボードの飲酒運転は自己責任だからとかモラルの問題だからではなく、明らかに法律違反です。お酒を飲んだ後、原動機付自転車は危ないけど電動キックボードならいいやという考えは絶対にやめましょう。
便利なものが普及するとともに、それに対応するルールやマナーが普及することで、初めて私たちの暮らしが豊かになるのではないでしょうか。

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