日銀の金融政策で注目される「『消費者物価指数』(CPI)」
2018/08/24
日銀の金融政策で注目される『消費者物価指数』
2013年1月に日銀が「物価安定の目標」を消費者物価の前年比上昇率で2%と定めてから、その動向がより注目されるようになり、ニュースなどで目にする機会も多いのではないでしょうか。今回は、日銀が金融政策を行ううえでとりわけ重視している『消費者物価指数』について、ご説明いたします。
『消費者物価指数』とは
『消費者物価指数』は、日常生活で私たち消費者が購入する商品について、価格の動きを総合的にみようとするものです。『消費者物価指数』は総務省統計局が作成しており、略称ではCPI(Consumer Price Index)と呼ばれています。『消費者物価指数』の歴史は古く、第二次世界大戦直後の1946年(昭和21年)に初めて作成され、当時の激しい物価上昇を計るのに使われました。その後、1952年(昭和27年)に、小売物価統計調査で調査された小売価格から指数を作成するようになりました。調査対象となるモノやサービスは、消費者の家計支出の中で重要度が高いものから選ばれ、日常購入する食料品、衣料品、電気製品、化粧品などの財の価格の動きのほかに、家賃、通信料、授業料、理髪料などのようなサービスの価格の動きも含まれています。『消費者物価指数』は、日銀が金融政策における判断材料として使用しているほか、賃金、家賃や公共料金改定の際の参考に使われるなど、官民を問わず幅広く利用されています。
『消費者物価指数』の見方
通常、新聞などで報道される『消費者物価指数』は「総合」を指すことがほとんどです。しかし、「総合」には天候の影響を強く受ける生鮮食品が含まれおり、毎月の変動幅が大きくなる傾向があります。そのため、インフレやデフレといった消費者物価の基調をみるには適さないため、「総合」から生鮮食品を除いた「生鮮食品を除く総合(コアCPI)」も併せて作成・公表されています。同様に「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は、「総合」から生鮮食品に加え、海外要因で変動する原油価格の影響を直接受けるガソリンや電気代などのエネルギーも除いた基調をみるために用いられます。
なお、米国など諸外国で重視されている「コアCPI」では食料だけでなくエネルギー価格も除かれており、日本の『消費者物価指数』でこれに相当するのは「食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合」です。『消費者物価指数』を国際比較する際は、日本の「コアCPI」と海外のもとでは定義が異なるため注意が必要です。
■ 消費者物価指数一覧 | |
名称 | 除かれるもの |
---|---|
総合 | ― |
生鮮食品を除く総合(コアCPI) | 生鮮食品 |
生鮮食品およびエネルギーを除く総合 | 生鮮食品、ガソリンや電気代などのエネルギー |
食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合 | 食料、ガソリンや電気代などのエネルギー |
私たちの生活に影響を与える『消費者物価指数』
『消費者物価指数』と聞いても、それが私たちの生活にどれほど影響があるかご存じない方も多いのではないでしょうか。国民年金や厚生年金などでは、物価変動に応じて実質的な給付水準を見直すことが法律によって定められており、この物価の動きを示す指標として『消費者物価指数』が使われています。高齢化社会が急速に進むなかで公的年金への影響は非常に気になるところです。年金額は、物価や現役世代の賃金の変動を踏まえて毎年度、改定されています。2016年の全国『消費者物価指数』の「総合」は前年比マイナス0.1%だったため、2017年度の公的年金額が0.1%引き下げられました(2018年度は据え置き)。今後は2019年10月に消費税率が10%に引き上げられることが予定されているうえに、2016年12月に年金制度改革法が成立したことにより、2021年4月から現役世代の賃金が下がった場合は年金も減額されることが決まっています。年金財政の健全化には寄与しそうですが、私たちの生活を取り巻く環境は厳しさを増しているようです。
最後に
日銀の金融政策だけでなく、私たちの生活に非常に大きな影響を与えている消費者物価数。こういった経済統計は漠然と難しいものと考えがちですが、自分たちの生活にも密接に関係していると考えると見方も変わってくるのはないでしょうか。是非、注目してみてください。
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