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ESGの重要性について

ESGの重要性について

アセットマネジメントOne株式会社
運用本部 責任投資部
チーフESGアナリスト 櫻本恵

ESGの重要性

アセットマネジメントOneが誕生して早3年が過ぎましたが、会社発足時、「責任投資」や「スチュワードシップ責任」を積極的に果たすために新設されたのが責任投資部です。
責任投資部では日々、ESGアナリストや議決権行使担当者が投資先企業の企業価値向上を通じた市場全体の底上げを目的に、積極的なエンゲージメントやきめ細やかな議決権行使を実施しています。初回となるこのコラムでは、ESGの重要性についてご説明したいと思います。

「成長の限界」と持続可能性の危機

世界各国の政治家や財界人・知識人で構成される民間団体のローマクラブは50年ほど前に「成長の限界」を発表して、「食糧資源の枯渇、環境資源の深刻化にしっかり取り組まないと、人類の経済活動は地球の限界を超えてしまい、持続不可能な領域に達してしまう」と、地球の成長の限界に対して警鐘を鳴らしました。その際、理論的支柱となった人物が生態経済学者のハーマン・デイリーです。彼は持続可能な発展の3原則として以下を示しました。

  1. 「再生可能な資源」の持続可能な利用速度は、その資源の再生速度を超えてはいけない。
  2. 「再生不可能な資源」の持続可能な利用速度は、再生可能な資源を持続可能なペースで利用することで代用できる速度を超えてはいけない。
  3. 「汚染物質」の持続可能な排出速度は、環境がそうした汚染物質を循環し、吸収し、無害化できる速度を上回ってはならない。

ちょっと皆さん、考えてみて下さい。肉や魚、森林のように再生可能な資源の使い方は、再生速度を超えていると思いませんか。石油や鉱物のように再生不可能な資源の使い方は、これを代替する再生可能な資源を使うことで代用できる速度を超えていると思いませんか。そして汚染物質の排出速度は、明らかに環境が汚染物質を循環し、吸収し、無害化できる速度を超えていると思いませんか。

我々が環境に与えている負荷を、資源の再生産や廃棄物の浄化に必要な面積として示した数値にエコロジカル・フットプリントがあります。その数値に基づくと、地球は一つしかないのですが、世界中の人々を養うには既に地球が1.7個必要であると言われています。ちなみに世界中の人々が日本人や米国人と同じ生活をすると、それぞれ地球は2.8個、5.0個必要ということであり、持続可能な水準を超えた人類の経済活動のツケは大きく、このままでは世の中の持続可能な発展が困難であることが十分ご理解頂けると思います。

地球は何個必要?

出所)WWFホームページ、グローバル・フットプリント・ネットワーク、NFA2018

また、環境課題で最も重視されている気候変動ですが、下図でお示ししたように気象庁のデータで見ても足元までの100年で約0.7℃地球の平均気温は上昇しています。客観的事実として、今までのように温室効果ガスを排出していれば、今世紀末に産業革命期から2℃以内に地球の気温上昇を抑えるのは至難の業であることがわかります。

世界の年平均気温偏差

出所)気象庁ホームページよりアセットマネジメントOne作成

貧困問題など社会課題も喫緊の課題に

話はこれで終わりません。ここまでは環境課題中心でしたが、社会課題も喫緊の課題となっています。
例えば貧困について、UNDP(国連開発計画)では「教育、仕事、食料、保健医療、飲料水、住居、エネルギーなど最も基本的な物・サービスを手に入れられない状態のこと」と定義しており、世界銀行では具体的に「一日1.9ドル以下で生活している人」と定義しています。この貧困問題ですが、世界銀行の2015年の統計資料に基づくと、世界中に貧困状態にいる人はサブサハラを中心に約7.36億人もおり、世の中の持続可能な発展とは程遠い状態にあることがわかります。

国連の人口推計によると、世界人口は今後も増え続け、2050年代には現在の77億人から100億人に達する見込みです。
今でも地球が1.7個必要で持続可能とは言い難い経済活動を行っているのに、更に地球上の人口は増え続け、しかも厳しい環境を強いられている人々が多い。一方で資源の利用速度は再生速度を超えている。このままでは、地球に持続可能性を期待することはできません。

世界の人口推移

出所)国連「World Population Prospects 2019」よりアセットマネジメントOne作成

早晩、地球は持続不可能な領域に達してしまうことになります。我々は将来世代のためにも、このような事態を回避しなければいけません。

我々が日々対話している企業は、社会の重要な構成要素であり、企業と社会は相互依存関係にあります。したがって世の中の持続可能な発展を求める流れの中では、企業にも目先の利潤追求だけではない、環境(E)や社会(S)に配慮した経営が求められ、またこのような経営を可能にする企業統治(G)が求められることになります。

今、世の中でESGへの対応が企業に求められていますが、その背景にはこのような事情があるのです。

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