Produced by
アセットマネジメントOne株式会社

わらしべ瓦版わらしべ瓦版

おカネの健康を考えるウェブマガジン

アセットマネジメントOne

リセッションとは?株価との関係を知って投資のヒントを獲得しよう!

2022/09/22

ふやす

アセットマネジメントOneのfacebook

アセットマネジメントOneのfacebook

「米国はリセッション入りか!?」

最近、こんなニュースを目にすることも多いのではないでしょうか。そして、こう思う方もいらっしゃるでしょう。

「“リセッション”ってなに?わざわざ横文字使う必要ある?」

だいたい株価下落の情報とセットで使われるため、いい言葉ではないことはニュアンス的に分かるはずですが、よく出てくるわりに知っている方が意外に少ないのではないかと思います。

そこで、本記事ではリセッションの意味と株価との関係について分かりやすく解説したいと思います。正しく理解すれば、きっと投資で役立つヒントになるはずですよ。

リセッションとは?

リセッションとは「景気後退期」のことであり、景気が低迷して不況になるまでの状態を指します。経済学では、景気が最も悪い時期(谷)から最も良い時期(山)を経て、再び最も悪い時期にいたるまでの流れを「景気循環」と呼び、景気循環の内、景気の山から谷までの期間をリセッションと呼んでいます。

景気循環のイメージ

実際のところ、リセッションの正確な定義は各国で異なります。というのも、景気を示す指標は最も代表的なGDP以外にも数多くあり、これらが必ずしも一斉に悪化するわけではないからです。

日本では、内閣府の景気動向指数研究会が景気基準日付(景気転換点)を設定します。具体的には、生産や消費、雇用などの様々な指標をもとに、それらの変化に着目した指数(ヒストリカルDI*)を作成することで景気の山・谷が確定します。ヒストリカルDIの作成には、各指標の月々の不規則な動きをならす、「山と谷との間隔が5ヵ月以上必要」などの諸条件を加えるといった過程が入り、基本的に1年以上の期間を要します。つまり、正式なリセッションが発表されるのは、実際にリセッション入りしてから1年以上後ということになるのです。

*ヒストリカルDI:景気転換点を判定するために作成される指数であり、毎月公表される通常のDI(ディフュージョン・インデックス)とは異なります。

一方、米国では、NBER(全米経済研究所)の景気判定を用いて商務省が正式な発表を行っています。NBERはリセッションの定義・条件として以下の点を挙げ、主に③の諸指標を判断材料としています。

  • ①「経済活動全般」にわたって「相当な下降局面」にあること
  • ②数ヵ月以上の持続的なものであること
  • ③実質GDP、鉱工業生産、雇用、実質個人所得(除く移転所得)、製造業・卸売・小売の実質販売高などで明示的な下降を見せていること

やはり、生産や消費、雇用など、様々な指標に基づき、景気の山と谷の時期を判定しています。また、判定には通常1年程度の期間を要します。

景気の先行きに陰りが出ると、すぐに「景気後退」や「リセッション」という言葉を多くのメディアで見かけるようになりますが、実は、その正式な判定には様々な要因が加味され、相応の期間を要するのです。

株式市場では速報性を重視

株価は景気と深い相関関係にあるため、株式市場において景気動向は最も注目される材料の一つと言えます。特に、現在リセッション入りしているか、あるいは今後リセッション入りするかどうかの判断は、株価の暴落から資産を守るために非常に重要なポイントになります。

それにもかかわらず、正式なリセッション入りの発表がそこまで重要視されていないのは、前述した発表までに大きなタイムラグがあるからに他なりません。株式市場は今の状況と将来の見通しに基づいて価格形成されるため、1年前にリセッション入りしたという情報はすでに想定済みのことであり、ただの確認情報でしかないのです。

では、株式市場(の参加者)はいったい何を重視しているのかというと、「多少不確実であっても、足元の景気状況や今後の景気見通しを示唆する情報」です。

日本においては、例えばヒストリカルDIと共通の指標で構成されているCI(コンポジット・インデックス)が挙げられます。CIは先行指数・一致指数・遅行指数の3つがあり、毎月2ヵ月前の数値が発表されます。この内、一致指数の動きと景気の転換点はおおむね一致することから、継続して一致指数が低下していくと、徐々にリセッション入りの確度が高まっていくのです。

CI(一致指数)と日経平均株価の推移

上記グラフを確認すると、まずCIが低下している局面とリセッションは概ね一致していることが分かります。ただし、CIが低下し始めて少ししてからリセッションが始まっていることには注意が必要です。そして、日経平均株価はCIが低下し始めた時にはすでに下落基調にあり、かなり先行して下落している場合があることも分かります。

このように、株式市場では正式なリセッション入りの発表を待たずして、それまでに随時発表される景気動向指数やそれを構成する指標などを材料に価格形成されていくのです。

米国のリセッションが世界中で注目されるわけ

今度は、視点を世界にまで広げてみましょう。世界景気を見通す上で真っ先にどこが注目されるかと言えば米国です。米国は世界の名目GDPの約24%を占める最大の経済大国ですから、米国の景気動向は世界の景気、そして株式市場の先行きを見通す上で欠かすことのできない要素と言えます。

世界に占めるアメリカの名目GDPの割合

2022年に入ってから足元9月まで、米国を中心に世界の株式市場は軟調な展開を見せています。その大きな原因の一つが、何を隠そう米国のリセッション入り懸念です。

欧米においては、実質GDP成長率が2四半期連続でマイナスになると「テクニカルリセッション入り」とされ、速報的な景気の転換点として広く認識されます。そして、米国は2022年1-3月期、4-6月期と2四半期連続でマイナス成長を記録し、テクニカルリセッション入りとなりました。

前述した通り、実際にリセッション入りしているかどうかは今後相応の期間をかけて正式に判断されます。しかし、下のグラフからも分かる通り、過去50年においては「テクニカルリセッション入りせずに、リセッションとなった時期」はあっても「テクニカルリセッション入りしたのに、リセッションとならなかった時期」はありません。このため、リセッション入りのリスクが大きく高まったと捉えられ、マーケットの大きな重しになっているのです。

米国のリセッション

結論から言うと、堅調な労働市場や次回7-9月期の実質GDPがプラス転換すると見込まれることなどを踏まえて、4-6月期の米国経済はリセッション入りしていないというのが主流な意見のようです。しかし、2023年に向けてどうなるかはかなり意見が割れていることもあり、だからこそ、刻一刻と変化する米国の景気見通しに世界各国の株式市場が大きく振らされる展開になっていると考えられます。

リセッションへの理解は投資の強力な武器

いかがでしたでしょうか。リセッションを景気後退期と訳せば、すぐになんとなくのイメージは持てますが、実際に投資に活かそうと思うと一筋縄ではいかないことが分かっていただけたのではないでしょうか。

しかしながら、リセッションを正しく理解すればマーケットの急落の危険性が高まったかどうかを自分なりに判断することが可能になります。その判断を基に有効な手を打つことは、資産を守り、投資を続けるための非常に強力な武器になると筆者は考えます。本記事がその一助となれば幸いです。

(執筆:1級ファイナンシャル・プランニング技能士 佐藤 啓)

※「日経平均株価」は、株式会社日本経済新聞社によって独自に開発された手法によって、算出される著作物であり、株式会社日本経済新聞社は、「日経平均株価」自体および「日経平均株価」を算定する手法に対して、著作権その他一切の知的財産権を有しています。

※「ダウ・ジョーンズ工業株価平均」は、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスLLCまたはその関連会社の商品であり、これを利用するライセンスが委託会社に付与されています。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスLLC、ダウ・ジョーンズ・トレードマーク・ホールディングズLLCまたはその関連会社は、いかなる指数の資産クラスまたは市場セクターを正確に代表する能力に関して、明示または黙示を問わずいかなる表明または保証もしません。また、ダウ・ジョーンズ工業株価平均のいかなる過誤、遺漏、または中断に対しても一切責任を負いません。

■こうして米リセッション懸念は高まった

■過去の危機から教訓を得る

【Facebook】
米国株市場のポイント「瞬解!3行まとめ」を毎営業日配信!お役立ちマネーコラムも
↓下のボタンからフォローをお願いします

わらしべ瓦版を
Facebookでフォローする

わらしべ瓦版をFacebookでフォローする