タンス預金はなぜバレる?相続時の注意とメリットを生かした活用方法
2024/10/25
タンス預金という言葉をお聞きになったことがある方は多いと思います。現金の保管方法として古くから親しまれてきましたが、実は相続時に注意が必要なのをご存じでしょうか。本記事では、タンス預金の相続時の注意やデメリットの他、メリットを生かした活用方法などについてもお話したいと思います。賢く財産を管理するために、ぜひ参考にしてください。
タンス預金とは?
タンス預金とは、現金を金融機関に預けずに、文字通り自宅のタンスにしまっておくことです。もはや昔ながらのタンスが自宅にある家は少ないかもしれませんが、どこに保管していても自宅に保管してある現金はタンス預金に含むことが多いようです(本記事でも含むことを想定しています)。
タンス預金はなぜバレる?税務当局の財産把握方法
タンス預金は電子的な記録が残らないことから、隠し財産という形でドラマや漫画などでも相続税逃れの方法としてよく取り上げられます。しかし、実は税務当局(以下、当局)がタンス預金も含めて、大まかな財産を把握している可能性が高いことをご存知でしょうか。
いったいなぜ、自宅に調査にも入らないのに当局が把握できるのかというと、それは主にKSKシステムという大規模システムを構築しているからだといわれています。KSKシステムとは正式には「国税総合管理システム」といい、簡単にいうと、国民の給与、各種収入はもとより、過去の納税実績、不動産などの各種財産の保有状況も細かく登録されているシステムです。国税の事務管理効率化や申告漏れ、脱税、滞納への対策のため平成の時代に導入が開始され、現在では、既に全国の税務署と国税庁をつなぐ大規模ネットワークとして完成しており、整備・運用のために年間数百億円もの維持費用がかけられています。
【KSKシステムの概要】
画像出典:財務省ホームページ
KSKシステムが稼働しているとはつまりどういうことなのかというと、全国民の財産はいまおおよそ幾らくらいなのかということを当局が把握している、もしくは把握できるということなのです。
もちろん、国民は皆、日々の生活していくためや耐久消費財の購入など各種の支出をしますから、「過去の所得の合計=現在の財産」ではありません。しかし、誰かの支出は別の誰かの収入になっているため、そうした観点も含め、当局がKSKシステムなどを活用して辿っていけば、概ねの財産額を把握できる可能性が高いというわけです。
つまり、相続時に財産を本来の額よりタンス預金の分だけ少なく申告したとすると、当局はKSKシステムなどから推定した財産と比較して不一致が起きていることに気が付く可能性があります。この場合、当局が考えることは、KSKシステムに何らかのエラーやミスがある、もしくは、財産が少なく申告されているかのどちらかでしょう。後者と判断されれば、「本当に全部申告しましたか?」と相続人(相続を受け取る人)に調査が入る可能性があります。
よくマイナンバーに預金口座番号を紐付けすると、財産額を国に把握されてしまうから嫌だという意見を目にしますが、それ以前に、ある程度把握できるシステムは構築されているといってよいでしょう。
相続時の注意と申告漏れのペナルティ
もし、タンス預金を含めた財産を適切に申告しなかった場合、以下のようなペナルティが課される場合があるので十分に注意する必要があります。
追徴課税
相続財産を過少申告した場合、税務当局は不足分の税額を追徴することになります。これには、過少申告加算税や延滞税が含まれることがあります。過少申告加算税は、通常、過少申告した税額の10%が課されますが、悪質な場合はそれ以上の加算税が課されることもあります。
延滞税
申告漏れによって納税が遅れると、延滞税が発生します。延滞税は、納期限の翌日から実際に納付するまでの日数に応じて計算され、時間が経つほど負担が大きくなります。
税務調査
税務当局は、申告内容に疑義がある場合、税務調査を実施することがあります。税務調査が行われると、申告漏れが発覚するリスクが高まります。調査の結果、故意に財産を隠していたと判断されれば、重加算税が課される可能性もあります。重加算税は、隠蔽や仮装による申告漏れに対して課されるもので、通常の加算税よりも高額です。
法的措置
悪質な申告漏れや脱税行為が認められた場合、法的措置が取られることもあります。最悪の場合、刑事告発されることもあり、罰金や懲役刑が科されることもあります。
このため、相続時にはタンス預金を含めたすべての財産を正確に把握し、適切に申告することが重要です。専門の税理士に相談することで、申告漏れを防ぎ、適切な手続きを行うことができることから、依頼を検討するのもよいと思います。タンス預金を含む現金の管理は慎重に行い、適切な方法で相続手続きを進めることが、トラブルを避けるための最善の策と言えるでしょう。
タンス預金のデメリットとリスク
上記以外にも、タンス預金そのもののデメリットと考えられることがありますので、列挙してみます。
- 空き巣などによる窃盗リスクの高まり
- 火災、水害、地震など災害の際の消失、毀損リスクの高まり
- 利息がつかないこと
- 旧紙幣化することにより、使いにくくなること
最後の「旧紙幣化することにより使いにくくなる」について追記したいと思います。 実は紙幣は少しくらい旧紙幣化したとしても、法律で使えることが定められています。たとえば最近ではまったく見掛けなくなった「聖徳太子」の旧壱万円札も法的には立派に支払いに使うことが可能です。
ただ、実際に使うとなるとちょっと躊躇するのではないでしょうか。コンビニなどの機械レジやATMでは認識してくれないかもしれませんし、人に渡したとしても、もしかしたら初めて見るお札かもしれません。こうなってくると、記念として保管しておくのでなければ「金融機関の窓口で最新の紙幣に交換してもらう、あるいは預金してしまう」という選択肢が有力になると思います。となると、最初から普通に金融機関に預けておいたほうが良いとも言える事態になるのです。
タンス預金のメリットと活用方法
一方でタンス預金にはメリットもあります。
例えば、相続時では遺産分割協議が終わるまで故人の預金口座が凍結されてしまい、お金を引き出すことができなくなります。家族が亡くなった直後は葬儀費用などで何かとお金が必要になるので、手元にまとまった額の現金があると困らないですみます。
また、大きな災害が発生した際には、停電や通信インフラの損害によりATMやクレジットカードが使えなくなることが想定されます。その際には支払い手段に現金だけが使えるケースも考えられますので、数ヵ月程度の生活費を自宅に常備しておくことが災害の観点からは良いといえるでしょう。
日常で使う場合も、銀行の預金だと引き出しや送金に手数料がかかることがある一方で、タンス預金は手数料がかかりません。特に、頻繁に現金を使用する人にとっては、手数料の節約効果が大きいでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。タンス預金は相続時の注意が必要なだけでなく、火災や盗難のリスク、利息がつかない点などのデメリットもあります。一方で、相続時や災害時の備えとして、また、日常の支払いにも役立ちます。タンス預金をやりすぎることのリスクを理解した上で、バランス良く行うことが大事かと思います。
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