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地方移住で失敗しないために…支援内容やメリット・デメリットについてご紹介

2023/06/09

知恵のハコ

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都会で生まれ育った方なら「都会を離れ美しい自然に囲まれた土地に住んでみたい!」と一度は感じたことがあるのではないでしょうか。コロナ禍を経て、多様な働き方が浸透したことでライフワークバランスにも大きな変化がありました。都心の生活に固執することがなくなり、地方移住が現実味を帯びた方も少なくないのではと思います。

一方、地方では少子高齢化や地域衰退、空き家問題といった様々な問題を抱える中、新たな打ち手として地方移住支援に力を入れる自治体が増えてきました。結婚・育児・住居・仕事など、様々な支援プランが準備されており、移住者にとって快適な移住を叶えるための心強い味方となってくれるはずです。

しかし、当然のことながら地方移住には注意点もあり、憧れと現実とのギャップや価値観の違いを知ることも必要です。そこで本記事では、地方の受け入れ態勢や、地方移住は実際どうなのか!?ということについて、メリット・デメリットと併せてご紹介したいと思います。

なぜ、地方移住が注目されている?

地方自治体の現状

地方では、主に人口減少を起因とした問題により地域衰退が危惧され、多くの課題に直面しています。

  • 若年層の地方離れによる事業継承の問題、廃業への懸念
  • 人口減少下での公共施設やインフラ等の維持管理費の負担額増加
  • 税収減少による行政サービスの廃止、有料化
  • 鉄道や路線バスなど公共交通の撤退による生活の利便性の低下
  • 空き家増加に伴う倒壊の危険性や、衛生面や景観の悪化

このような社会問題を解決すべく、地方自治体では移住者が興味関心を持ってもらえるような様々な広報活動や取り組みを行い誘致しています。また、国においても「地方創生」というワードを掲げ、地方移住に対する移住支援を強化しています。

地方創生起業支援事業・地方創生移住支援事業とは

「地方創生」の名の下に、移住に関する支援内容は年々拡充しています。デジタル庁では、地域の豊かさをそのままに、都市と同じまたは違った利便性と魅力を備えた、魅力溢れる新たな地域づくりを目的に“デジタル田園都市国家構想”を進めています。地域活性化のための政策を通して、「心ゆたかな暮らし」(Well-Being)と「持続可能な環境・社会・経済」(Sustainability)を実現させる政策です。中でも、「地方創生起業支援事業・地方創生移住支援事業」は、移住についてだけではなく、起業により地方活性化を促すもので、一定の条件を満たして地方へ移住、起業すると最大300万円の支援が受けられます。

このように、近年では単に地方が人を必要としているだけではなく、移住を促す具体策が数多く実施されています。地方移住への関心が急速に高まってきたのにはこうした背景があると言えるでしょう。

地方創生起業支援事業・地方創生移住支援事業とは

移住先はどうやって決める?

注目されている都道府県は?

実際に地方へ移住した人のきっかけを調べてみると、その理由は様々あるようです。

  • 現地への訪問、移住イベントへの参加により関心が高まったため
  • 結婚、出産を機に里帰りし、そのまま地方での育児を決めたため
  • 勤務体系が変化し、出勤に縛られることなく住む場所を決められるようになったため
  • 地方にしかない産業や自然に魅力を感じたため
  • 地方の方が趣味に専念しやすいため

地元に帰るなど、明確に移住先が決まっているのであれば迷う必要はありませんが、これから移住先を探す場合は何を基準に選べば良いかわからない方も多いのではないでしょうか。

そこで、まずは移住の関心度を示す数値として、地方移住に関する相談件数をご紹介します。総務省では、移住相談に関する調査結果を公表しており、相談件数は年々増え続けています。平成27年度は約141,700件であったのに対し、令和3年度は約324,000件と約2.3倍になり、過去最多を記録しました。

増加の背景には、昨今の IOT社会が進むライフスタイルの変化も要因として挙げられます。相談件数が増加している都道府県や市区町村においては、オンライン環境の整備により、オンラインを用いたイベントの実施やオンラインでの窓口相談の拡充など、コロナ禍を機運とした工夫が見られたようです。

【令和3年度 移住相談件数 上位10都道府県】

令和3年度 移住相談件数 上位10都道府県

出所:総務省(令和3年度における移住相談に関する調査結果報道発表)をもとにアセットマネジメントOne作成

都道府県別では、長野県が最も多く、兵庫県、福島県、北海道、石川県、福井県への相談件数が多い結果でした。「相談件数が多い=移住に適している」とは限りませんが、皆の関心が集まる都道府県から候補を選定した上で、市区町村ごとの詳細を調べるといった方法も一つの手だと思います。

どんな支援が受けられる?

地方移住に関する情報は、地方自治体ごとのホームページや移住相談窓口でも得ることができ、移住者が安心して、生活ができるように自治体ごとに支援内容が整備されています。では、いったいどんな支援があるのか、次にご紹介しましょう。

■ 移住・起業に対する支援金

都道府県別に特定の条件を満たすことで、移住支援金や起業支援金を受け取れます。都道府県ごとに条件の詳細は異なりますが、地方創生が定める支援内容をベースにした金額、内容となるようです。移住先の市区町村が限定される場合もありますが、移住に対する初期費用の支援金があることは移住を検討する中で把握しておいても損はありません。

さらに、起業を移住と合わせて検討する場合には、起業支援金という制度もあります。地方貢献と地方活性化のための起業を目的とした支援金です。今まで培ったスキルと現地産業を掛け合わせ起業している事例もあります。

  • 移住支援金は、単身で最大60万円、世帯で最大100万円(18歳未満の世帯員1人あたりに加算あり)
  • 地域課題解決に資する起業をする場合には、起業支援金最大200万円

※詳細は都道府県ごとのWebサイトでご確認ください。

■ 空き家を住居・事業活用に利用するための改修補助金

空き家問題を解消するために、空き家で定住または事業をする際には、補助金が出る都道府県や地方自治体もあるようです。移住を機に古民家を利用して趣のある空き家を思いのままリノベーションをすることも地方移住ならではの醍醐味かもしれません。

  • 定住するための空き家改修についての補助金、約3~250万円 (改修内容によって異なる)
  • 事業のための空き家改修についての補助金、約100~1000万円(事業用途によって異なる)

※詳細は都道府県ごとのWebサイトでご確認ください。

■ 結婚・出産・育児に関する助成金

地方自治体ごとに細かく助成金が設定されており、多角的に子育て世代に対する支援内容が整備されています。出生祝い金、高校生まで医療費無料化、小中入学祝い金、保育料の助成等は耳にしたことがあるかもしれません。下の表で、市区町村ごとに手厚い支援項目があった事例をご紹介します。

【助成金の事例】

管轄対象者
北海道沼田町 ・結婚新生活応援事業
婚姻を機とした住宅の購入費・住居を賃借する際に要した賃貸料、敷金、礼金、共益費、仲介手数料など最大30万円支援
大分県豊後高田市 ・子育て応援誕生祝い金
出生お祝い金の他、第三子より指定の祝い金を支援(最大200万円)
長野県宮田村 ・子育てファミリー転入奨励金事業
村で住居を取得し、居住することとなった日から引き続き10年以上宮田村に居住する意志を有する者であって、申請者及びその配偶者の年齢の合計が80歳以下の者又は居住開始日に9歳以下の子どもを有する者(1世帯30万円)
北海道赤川村 ・赤井川村移住、定住支援事業
中学2年生になると、オーストラリアの姉妹校に中学生海外研修授業(10日間)ホームステイ(無料)

※2023年5月20日時点のデータであり各掲載元を抜粋したものです。詳しくは都道府県ごとのWebサイトでご確認ください。

出所:各地方自治体のWebサイトをもとにアセットマネジメントOneが作成

お試しで移住を体験してみる

最後に、実体験でより現実味を感じられるお試し移住についてご紹介します。

地域によっては、より移住に対してリアルに感じてもらうために移住体験をすることが可能です。スケジュールは、1泊2日から旅行感覚で手軽に体験できるもの、数週間地方自治体の定めた仮住居で過ごし模擬生活体験をするものと様々です。

体験の内容も、農業体験や地域の方との交流といったあらかじめ決められたプランが準備されているものから、受け入れ先の地方自治体の方と相談の上、オーダーメイドでプランを決めるものまであるようです。オーダーメイドプランでは、移住となった際に利用する医療施設や、スーパー、役場等の衣食住に関わる周辺地域を見学したり、地域の行事に参加したり、移住することを見据えプランを立てることも重要でしょう。

また、子育て世代の方は子供の教育環境が大きな不安点ではないでしょうか。そんな方には、例えば保育園へ仮入園し、数週間仮保育を体験することができる地域もあります。地方ならではの自然豊かな環境で学ぶ仮保育を通して、子育てへの不安解消と移住への期待感にもつながりそうです。

在宅ワークが浸透し、お試し移住のハードルが下がった方も少なくないと思います。移住先での新生活を見定めるよい機会として、こうしたサービスを活用するとよいでしょう。

移住へのメリット・デメリット

地方移住は、都会で住む感覚とは異なる点も多くあります。移住への期待感もある反面、地方特有のルールも多くあります。移住した後に、こんなはずではなかったと後悔をする前に、事前に理解・納得した上で移住生活を決めるようにしましょう。

メリット

なんといっても都会では少ない自然豊かな環境で、心身共に解放感がある生活ができることが地方暮らしのメリットではないでしょうか。水や空気がきれいで、空が広く夜には満点の星空を眺めゆったりした時の流れを過ごすことができます。人口も少なく、日々の通勤の混雑や、雑踏に疲れてしまうこともなくなりそうです。

また、農業が盛んな地域、漁業が発展している地域等、地域ならではの特産物は、産地直売の利点を生かし新鮮な品を安く購入することもできるでしょう。

子育てにおいてもメリットがあります。待機児童問題は少なく、安心して子供を預け仕事がしやすい環境が多いようです。また、地方特有の子育て助成金も整備が進み、子育て世代を誘致するような制度も確立されている自治体も見られます。

デメリット

一方でデメリットも存在します。自然豊かなところでは、人々が協力し合い生活が成り立っている環境もあり、人間関係が自ずと濃厚化しプライベートが都心より減る傾向があります。都心で暮らしていた時の近所付き合いでの距離感とは異なるため、慣れない人付き合いにより精神的に疲れてしまう可能性もあります。また、地方独特のしきたりやルールもあり、事前にそういったことを把握した上で許容する心構えも必要です。

自然豊かな環境である反面、適応も必要です。例えば、雪国ということは把握している上で移住はしたものの、予想をはるかに超えた積雪量を記録し慣れない雪かきに苦労する、なんてことも考えられます。そのため自然環境や自然災害などへの理解を深め、具体的な対処法も知っておくべきでしょう。

移動に関する懸念点もあります。生活に必要なスーパーや病院といった施設、公共の交通機関が少ないため、車がないと移動に不自由を感じやすいでしょう。しかし、現在では通信機器の発展により、デリバリーサービスの向上や、過疎地域での移動手段として自動運転バスの利用も進められ移動手段や働き手の改善への期待が高まっています。

移住へのメリット・デメリット

地方移住を実現させるためには

地方ごとに様々な問題を抱える中、地方移住制度が拡充し移住者が増えることによって問題解消の糸口に繋がっていきます。ですが、いざ生活をすると人間関係や環境への変化に戸惑うことも多くあるかもしれません。

大きな環境変化によるギャップや生活への価値観の違いは、メリットやデメリットを生じさせる要因となるのは当然のことです。そのようなギャップを事前に把握するためにもお試し移住体験や、地方の受け入れ制度、役場への相談により十分な理解をした上で移住への第一歩を踏み出すことで、良いスタートが切れ、地方移住を確かなものにすることができそうです。

受け入れ側も移住者が豊かな生活ができるように支援金や制度を整えて準備をしています。移住は人生を変える大きな転機でもあり、期待が高まる反面、後悔が無いように慎重に考えることがお互いにとっての良い結果へと繋がるでしょう。

筆者は、家から300mも歩けば地平線が見えるほどの田園風景が広がるところで成長しました。毎年田植えの手伝いをし、祖母が食べきれないほどの新鮮な野菜を畑から収穫してきた記憶があります。小学校への通学は徒歩で45分程かかり、最寄り駅と言えば車で15分程かかることが当たり前でしたので、都心への上京は多くのギャップと驚きがありました。
地方生活が長かったからこそ地方の良さも体感し、一方で都心の便利さも感じています。”住めば都”という言葉もあるように、最初は戸惑うことが多くても、長年住めばその土地ならではの深い魅力がわかるようになるかもしれませんね。

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