いまさら聞けない分配金とは?配当金との違いをわかりやすく解説
2024/07/08
投資信託に興味を持っている方は、「分配金」という用語を一度は聞いたことがあると思います。この記事では、「分配金」について意味や考え方を分かりやすく解説します。その上で、混同しやすい配当金との違いなども説明しますので、どうぞ最後までご覧ください。
そもそも分配金とは
投資信託における分配金とは、一言で言えば、投資信託の決算時に運用益の一部を投資家に還元する際に支払われるお金のことです。
ただし、分配金の金額は基準価額の水準や市場環境、今後の見通し等を踏まえ、運用会社が決定するため、決算時に必ず支払われるわけではありません。
また、分配金の原資はその投資信託の純資産です。投資先の利子や配当などの収益(インカム・ゲイン)と値上がり益(キャピタル・ゲイン)に加えて、前期からの繰越分配対象額からも支払われます。このため、例えば当期の利益が100円でも前期からの繰越と併せて200円を分配するなど、その期の利益を超えて支払われることもあります。
このため、分配金の多寡と運用成績の良し悪しは必ずしも一致するわけではなく、どちらかと言えば投資信託の商品性に基づいて金額が決定されるケースの方が多いでしょう。
分配金の種類
分配金が支払われると、支払われた分だけ投資信託の基準価額は下がります。投資家(受益者)それぞれの購入時の基準価額を個別元本といいますが、追加型株式投資信託の場合、分配金支払い後の基準価額を基準として、投資家それぞれの個別元本に応じて、分配金は普通分配金と元本払戻金(特別分配金)の名目に分けて支払われます。
分配金支払い後の基準価額が個別元本と同額、またはそれを上回る場合は全額が普通分配金となります。普通分配金は投資家の利益に相当するため、課税対象になります。
分配金支払い後の基準価額が個別元本を下回る場合、個別元本を下回る部分の分配金は元本払戻金(特別分配金)となります。これは元本の払戻しに相当するため、税金がかかりません。なお、この場合、分配金支払い後の個別元本は、購入時の個別元本から元本払戻金(特別分配金)を差し引いた価額に修正されます。
※上記はイメージです。運用状況により実際と異なる場合がございます。
例えば、基準価額10,000円で購入した投資信託が11,000円になった時に分配金が2,000円支払われた場合を考えます。この時、2,000円の内基準価額の上昇分にあたる1,000円は利益に相当するため普通分配金として課税されます。一方、残りの1,000円は元本の払戻しに相当し非課税です。そして、分配金支払い後の基準価額は9,000円になります。
このように、分配金と利益は必ずしもイコールではないことに注意しましょう。
分配金はあった方が良いのか?
お金がもらえるから分配金はあった方が望ましいと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、前述したとおり、分配金が支払われるからといって運用成績が良いとは限りません。また、分配金は支払われた分だけ基準価額が下落することから、現金化に近い性質を持ちます。
このため、資金を積み上げながら運用することが基本となる長期の資産形成においては、分配金のある投資信託は適さない傾向にあります。分配金を再投資する場合でも、普通分配金は税金が差し引かれてしまい、再投資の効果が落ちてしまうこともその理由の一つです。
一方で、老後資金のように資金を取り崩しながら運用したいという考えには、分配金はマッチしやすいでしょう。
投資信託には、投資対象や運用方法が同じでも「毎月決算型」、「年1回決算型」など分配の頻度や方針が異なる複数の商品が用意されている場合があります。投資対象や運用方法は同じであり、どちらが優れているという違いはないため、自分のニーズに合わせて選択するとよいのではないでしょうか。
分配金の受け取り方法についての考え方は「毎月分配型の投資信託は危ないと言われる理由は?活用方法と合わせて解説」の記事でも解説しています。
配当金との違い
分配金と似た概念に「配当金」というものがあります。分配金は「投資信託」の保有者に、配当金は「株式」の保有者に支払われ、利益の一部還元という主な目的は同じです。しかし、基本的に配当金は決算期中に発生した利益から支払われるため、分配金よりも利益還元の意味合いが強いことに違いがあります。
また、配当金は配当落ちという株価の下落要因にはなるものの、分配金と違いその全額が影響するわけではないことも特質すべき点です。基準価額は投資信託の保有資産残高から算定されるため、分配金の支払いで資産が減少するとその全額が基準価額の下落要因となりますが、株価は企業の収益力など保有資産以外の多くの要因によって価格形成されるため、配当金による純資産の減少は株価の下落要因の一部に過ぎません。
このため、分配金が引き上がっても基準価額の下落幅が大きくなるだけですが、配当金が増える(増配される)と「株主還元が積極的になった」という新たな株価変動要因が生まれ、それが配当落ち以上にポジティブに捉えられれば株価の上昇要因にもなり得るのです。
ETFの分配金
これまで、投資信託の「分配金」と株式の「配当金」について説明しました。最後に、ETF(上場投資信託)の「分配金」について紹介します。
ETFは原則として、決算期間中に発生した利子や配当などの収益から信託報酬などの費用を控除した全額を分配金として支払います。このため、利益還元という意味合いの強さという観点では、配当金に近い性質を持ち、その全額が課税されます。
一方で、基準価額が保有資産残高から算定されるのは通常の投資信託と同じであり、分配金の支払い全額が基準価額の下落要因となります。
このように、同じ分配金でも通常の投資信託とETFとでは異なる部分もあるため注意しましょう。
おわりに
本記事では、分配金とはなんなのか、あった方が良いのか、そして配当金とどう違うのかを解説しました。お金を受け取れることから、分配金は多ければ多いほど良いと思っている方は少なからずいらっしゃるようです。この記事で分配金を正しく理解し、その知識が投資信託を選ぶ際に役立つことを願っています。ぜひ参考にしてください。
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