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日本はどんな農産物を輸出している?近年の動向を円安の影響を交えて解説

2023/12/11

知恵のハコ

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2022年、日本の農林水産物・食品の輸出額が過去最高を記録しました。これは、我が国の食品の安全性と品質に対する厳格な取り組みや、多岐にわたる輸出体制に向けた取り組みによるものです。しかしながら、将来の展望を考える際にはエネルギー価格の上昇や円安の進行に伴う相対的な物価高の影響も考慮する必要があります。
今回は、「農産物の輸出」に焦点を当て、輸出先やトレンド、そして今後の展望や課題について探っていきます。

日本が輸出する主な農産物について

2022年の日本の農林水産物・食品(農産物/水産物/林産物/少額貨物)の輸出額は1兆4,148億円と、過去最高となりました。農産物(8,870億円)はその中でも63%を占め、水産物(3,873億円)や林産物(638億円)と比較して圧倒的に大きく、同カテゴリをけん引しています。

農産物は「加工食品」「畜産品」「穀物等」「野菜・果実等」「その他農産物」の5つの品目に分かれ、すべての品目において、前年対比で増加しています。中でも「加工食品」は農産物の57%を占めていることから、農産物の中心的な輸出品目であるといえるでしょう。

【2022年農林水産物・食品 輸出額内訳(農産物)】

2022年農林水産物・食品 輸出額内訳(農産物)

出所:農林水産省2022年農林水産物・食品の輸出実績をもとにアセットマネジメントOne作成

※四捨五入の関係で内訳の計と合計が一致しないことがあります。

*少額貨物:1品目20万円以下の輸出物

輸出額の増加要因の一つとして、従来ECサイトを使用していなかった消費者がコロナショックをきっかけに活用し始めた結果、生活様式に合わせたニーズを見出し、継続的に利用するようになったことが考えられます。
その背景には、技術進歩による物流の質が向上し、高品質な農産物を海外へ安定的に供給できるようになったこともあるでしょう。さらに、昨今の円安による価格競争の優位性が高まったこともあり、輸出額増加の追い風となりました。

【農産物年間輸出額推移】

農産物年間輸出額推移

出所:農林水産省2022年農林水産物・食品の輸出実績をもとにアセットマネジメントOne作成

輸出拡大に向けた支援や課題

政府は2025年に2兆円、2030年には5兆円の輸出額を目標に掲げ、多岐にわたる輸出支援を行っています。ここでは、政府が整える主な3つの支援と課題点についてご紹介します。

【支援1】輸出支援プラットフォームの設置

2022年4月時点で、アメリカ、EU、ベトナム、シンガポール、タイ、中国、香港、台湾に輸出支援プラットフォームを設立。地域ごとに現地パートナーと協力し、新しい商流の開拓や市場・規制の情報収集を行い、問題解決と輸出促進活動を進めています。都道府県とも連携し、地方自治体ごとの魅力的な輸出商品のプロモーションもサポートしています。例として、ラグビーワールドカップ・フランス大会では、フランス南部トゥールーズ市(日本代表チームのキャンプ地)で日本食のPRイベントを開催し、市場への浸透を図りました。

【支援2】品目団体輸出強化支援事業

輸出重点品⽬(⽜⾁、コメ、りんご、ぶどう、茶、かんしょ、製材、ぶり、ホタテ⾙等)ごとに、「農林⽔産物・⾷品輸出促進団体」を設立。これにより、各品目に特化したトータルプランニングを策定し、輸出の促進に取り組んでいます。活動内容には輸出先のニーズ調査、現地でのPR活動、販路開拓、輸出手続きや商談の専門家による支援、国内外の関係者を巻き込んだ検討会の開催などが含まれます。

【支援3】農林水産物・食品輸出基盤強化資金

認定輸出業者に対して、資金面からサポートをする制度です。多岐にわたり有利に融資を受けられる独立の資金で、非食品の品目も対象となっています。長期運転資金や海外子会社への転貸も可能となっているため、輸出に挑戦する事業者が資金的に後押しされる制度となります。

【課題点】知的財産権の保護・活用

日本ブランドが世界的に高い評価を受ける一方で、ブランドの無断流出が顕在化しており、育成者権管理機関を通じて、国内農業の振興と知的財産の保護・活用を強化する必要が求められています。例として、パッケージに「KOBE」とラベルが貼られた和牛が海外で売られているようです。ブランド和牛の神戸ビーフとは別物で日本産をうたった偽物が横行しています。このような状況を受け、農林水産省は模倣品対策を強化しようという考えです。

輸出拡大に向けた支援や課題

農産物の主な輸出先と人気の品目

日本の農産物の主要な輸出先は中国、アメリカ、香港、台湾、ベトナムです。品目別ではアルコール飲料が最も大きく、日本酒は小売店向けやEC販売の拡大により中国やアメリカでの需要が増加しています。また、ウィスキーは世界的な知名度の向上に伴い、中国やアメリカに加え、シンガポール、イギリス向けも輸出が増加しました。
青果物は香港や台湾を中心に贈答用や家庭内需要が増え、りんごやイチゴなどの輸出が増加しています。また、ベトナムを中心としたアジア全般でアイスクリームなどの氷菓の輸出が伸びたことで牛乳・乳製品の輸出額も増えました。
一方で、牛肉の輸出額は依然として高いものの、カンボジアへの輸出の減少やアメリカの物価高の影響により、2021年に比べて減少しています。

【農産物の国・地域別輸出実績 上位10か国(2022年基準)】

農産物の国・地域別輸出実績 上位10か国(2022年基準

出所:農林水産省2022年農林水産物・食品の輸出実績をもとにアセットマネジメントOne作成

【農産物 品目別輸出実績 上位10品目(2022年基準)】

順位細目名品目輸出額
(億円)
前年対比
1 アルコール飲料 加工食品 1,392 +21.4%
2 調味料 加工食品 667 +9.8%
3 青果物 野菜・果実等 647 +22.2%
4 牛肉 畜産品 520 -4.0%
5 清涼飲料水 加工食品 482 +18.8%
6 栄養補助食品 加工食品 331 +44.0%
7 菓子(米菓を除く) 加工食品 280 +14.6%
8 緑茶 その他農産物 219 +7.2%
9 粉乳(育児用調製品ほか) 畜産品 200 +43.7%
10 スープ ブロス 加工食品 134 +13.2%

出所:農林水産省2022年農林水産物・食品の輸出実績をもとにアセットマネジメントOne作成

足元の円安による影響と、今後想定されること

円安に乗じ、海外で安く日本ブランドが入手できることは、大きく輸出が進んだ要因のひとつでもあるでしょう。また日本の農産物が国際市場で割安となり価格競争力が向上、国内向けと比べ輸出価格の値上げをしやすい背景から、2022年は円安が相乗的に輸出額の増加に寄与しました。
一方で、ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに原料や化学肥料を輸入に頼る日本にとっては、円安が拍車をかけ、多くの生産者の苦悩にもつながりました。こうした背景から、国産飼料の開発・普及を進め、持続可能な生産体制を構築することが求められています。

また人口減少・少子高齢化による国内での消費の鈍化に対応するため、海外市場の販路拡大とアウトバウンドへの目線を強化することも必要かもしれません。そのため、慢性的な労働不足の解消や昨今のエネルギー価格の高騰に対処するためにも、省エネ技術の導入によるコストダウンや、効率的な生産技術の開発を担うスマート農業への期待が高まっています。

いかがでしたでしょうか。多岐にわたる輸出政策を基盤として、円安を背に農産物の輸出額増加は続いています。一方で、将来的な課題も見えてきており、それらに対応しながら拡大していくことが期待されます。日本の輸出というと自動車や電子部品に目を奪われがちですが、農産物にも世界に誇れる日本ブランドが確かに存在します。本記事が、皆さまが日本の農産物へ興味を持つきっかけになれば幸いです。

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