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“SWIFT”が果たす意外な役割とは?世界経済の資金の流れをひも解く

2023/05/02

知恵のハコ

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「SWIFT (スイフト)」という言葉を知っていますか?金融業界などで働いていないとなかなか聞くことはない言葉ですが、昨今のロシアへの経済制裁関連のニュースで聞いたことがあるという方もいらっしゃると思います。実は、筆者も決済業務を行う部署での経験はないため、「資金の決済に使われるなにかである」という漠然としたイメージしかありませんでした。そこで、本記事ではSWIFTとは何か、SWIFTが世界経済においてどのような役割を果たすのか、そしてなぜSWIFTが経済制裁に繋がるのかをひも解いてみたいと思います。
最近、海外にいる友人から海外送金があったのですが、その際、筆者の銀行名と支店名、口座番号の他に、SWIFT code / BIC codeが必要でした。自分にも直接SWIFTと関わることがあるのかと驚きましたが、一見無関係と思われる知識も役立つことがあると実感しました。友人からはその他にIBAN(国際銀行口座番号)も必要だといわれましたが、結論として日本ではIBANの採用がなく必要ありませんでした。この理由についても触れたいと思います。

SWIFTとは?

SWIFT は「スイフト」と呼ばれ、正式名称はSociety for Worldwide Interbank Financial Telecommunication(国際銀行間通信協会)です。SWIFTのHPによると「加盟者が所有するグローバルな協同組合で、高度に安全化された金融メッセージングサービスを提供する金融業界の標準化団体です」とあります。そう、実はSWIFTは資金の保持をせず、口座の管理もせず、決済サービスも行わない、基本的に“金融機関向け”のみにユーザーを限定してメッセージのやり取りをする「情報通信ベンダー」だったのです。とはいっても、高いセキュリティと障害に強いシステムによって金融取引に関する情報を安全かつ標準化された方法で伝達するサービスは、世界中のビジネス、貿易のための資金決済を支える金融取引の社会的インフラであることに間違いはありません。いまや、SWIFTは世界200か国以上の金融機関を結んでおり、これ抜きには国際的な金融業務が成り立たず、現在進行形で金融機関や金融市場はSWIFTへの依存を高めています。

海外送金の流れ~送金には口座が必要

国内の送金や銀行間の決済は多くの場合、銀行がもつ中央銀行の当座預金、日本の場合は日本銀行の当座預金口座を通じて、実際の現金の出し入れなく資金を行き来させています。一方、海外との資金のやり取りには、中央銀行はありませんので、その代わりに、コルレス銀行 (Correspondent Bank)と呼ばれる各国の主要な銀行が、お互いに契約を結び、お互いの銀行に口座を持ち、資金の受け払いを行っています。日本のある銀行が海外送金をする際にコルレス先を持っていない場合、コルレス銀行(三菱UFJ銀行等)に依頼することになります。この国を跨ぐ銀行間の送金メッセージのやり取りにSWIFTは使われています。

例えば、海外にいる友人から送金を受ける際に、お互いにコルレス銀行に口座を持っていない場合、下の図のような流れになります。この海外の振替の指示にSWIFTが使われます。

例:海外送金の流れ

SWIFT発足

このSWIFT発足の背景に、1960年代の国際的な金融取引の拡大があります。当時は、コルレス銀行間の通信手段は紙ベースの「テレックス」が主流でした。テレックスとはタイプライターのようなキーボードが付いている通信機器で、メッセージを打ち込んで送信ボタンを押すと、送り先のテレックス端末に印刷されて出てくるFAXの前身のようなものです。テレックスはすべての取引をコードではなく文章で、しかも紙ベースで記述するため手作業による膨大な事務作業が発生していました。そこで、電子化を図り、より効率的に金融メッセージを転送するコード体系として考え出されたのがSWIFTです。1973年にSWIFTは欧米15か国239の銀行の参加によりベルギーで発足しました。
日本では1981年に稼働を開始、その後も参加国・参加金融機関が増加して、今では200以上の国または地域で11,000以上の金融機関が利用しています。この数は国連加盟国数(193か国と地域、2021年3月現在)以上となり、全世界をつなぐネットワークとなっています。つまりSWIFTのネットワークを通じて世界中のどの銀行にも送金ができるということなのです。

SWIFTの発展

SWIFTは、国際的な金融機関の資金決済や証券決済のみに使われているわけではありません。もともとは金融機関のためのネットワークとして発達してきましたが、2001年には限定的ですが一部の事業法人もSWIFTへのアクセスが認められるようになりました。今では、SWIFTのサービスは「資金メッセージ」「証券メッセージ」「外為・デリバティブメッセージ」「貿易金融メッセージ」などに分けられ、様々なメッセージがやり取りされています。
また、最近では証券メッセージの量が著しく増加しており、銀行のためのネットワークから「金融機関のためのネットワーク」へと変わりつつあります。メッセージ量は年々増加し、2014年と2022年を比較すると、約2倍に増加しています。

SWIFTの発展

出所:SWIFT

SWIFTのネットワークに重要な「標準化」

この膨大なメッセージ量を迅速に正しく処理するために、SWIFTはデータの漏洩や改ざんを防止し、メッセージ送信相手の正当性や情報の機密性・完全性などを継続的に確保するため日々ネットワークシステムを強化しています。さらに、テレックスの時代は様々なフォーマットがあったようですが、SWIFTではメッセージ処理の自動化を実現するために「Standardise(標準化)」が行われ、多くのコード体系が使われています。例えば、銀行の識別コードや、国名コード、通貨コード、そしてIBANコード(国際銀行口座番号)などが挙げられ、これらの多くはISO(International Organization for Standardization, 国際標準化機構)に登録されています。
国名コードは、下の表のようなISO 3166が使われますが、一般にイメージするアルファベットと違う場合もあり、注意が必要です。国を表すアルファベットだと、オリンピックのゼッケンに記されたりするコードなどが馴染み深いと思いますが、あれはIOC(International Olympic Committee、国際オリンピック委員会)独自のものだそうで、一致しない場合もあります。

国名コード(ISO 3166)と通貨コード(ISO 4217)

国・地域国名コード通貨コード
日本 JP JPY 日本円
米国 US USD 米ドル
英国 GB GBP 英ポンド
欧州 ユーロ圏   EUR ユーロ
スイス CH CHF スイスフラン
中国 CN CNY 中国人民元
タイ TH THB タイバーツ
南アフリカ ZA ZAR 南アフリカランド
ブラジル BR BRL ブラジルレアル
ロシア RU RUB ロシアルーブル

例えば、4つの言語を公用語としているスイスは、正式名称はラテン語で”Confoederatio Helvetica”と制定されていることからCHとなっています。南アフリカは長年なぜ“Z“かと思っていましたが、同国は1925年までオランダ語が公用語で、オランダ語で南アフリカを意味する”Zid-Afrika”に由来しているそうです。普段使う国の読み方とは異なるアルファベットで表示されることがあり、調べてみるととても興味深いです。

SWIFTから排除されるということは

このように、SWIFTは世界の経済活動において重要な役割を果たしています。 SWIFTには、ロシアから約300の金融機関が参加していますが、2022年2月からのロシアによるウクライナ侵攻に伴い、2022年2月26日にEU理事会は、経済制裁の一つとしてロシア7行のSWIFTからの排除を決めました。対象となった銀行は、世界の金融市場へのアクセスが制限され、ロシアの企業や個人は輸出入品の支払いや輸入品の受け取り、海外での借り入れや投資が難しくなり、経営に大きなマイナス影響を受けます。7行のうちのVTBバンクは、資産規模がロシアにおいて第2位で、ロシアの金融機関の全資産の約20%を保有している一方、資産規模第1位のズベルバンクと第3位のガスプロムバンクは、欧州がロシアにエネルギー関連で依存しているため対象から外されました。このことから、今回のSWIFT排除はロシア経済全体に対してあまり支障をきたさないという意見もありますが、結果としてロシアルーブルのさらなる価値の低下によりロシアの外貨不足がより深刻になったことを踏まえると、ロシア経済に与える影響は大きいという見方もあります。
SWIFTからの排除による制裁は、直接制裁の対象にならないとしても、ロシアの銀行との取引を控える海外の銀行が増加すると考えられ、外貨準備の凍結と合わせてロシアは深刻な外貨不足に陥り、ロシアの対外債務の不履行を引き起こす要因となります。ロシアのSWIFTからの排除が決まってから1年以上たちますが、これが直接的にロシア経済の悪化に繋がったというニュースは見かけないように思います。しかしながら、今回の一連の流れで、少なくともSWIFTが経済制裁に関わるほど、重要な「世界の金融取引の社会的インフラ」であることを改めて認識しました。投信業界においては、当社のファンドも含め、多くのロシア関連ファンドが2022年度に繰り上げ償還になっています。

最後に、冒頭のエピソードで触れたIBANが日本で採用されていない理由ですが、単純に利用国が少ないからのようです。EUではEU指令でユーロ域内の送金についてIBANとBICの利用が義務づけられている一方、2019年2月時点におけるIBANの登録国は75か国にとどまっています。海外に知り合いが多い方は、ちょっとした雑学としていつか役立つことがあるかもしれませんね。

出所: SWIFT、外務省、日本銀行の資料をもとにアセットマネジメントOne作成

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