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男性の化粧、きっかけは?市場拡大中のメンズコスメ業界を探る

2022/08/12

知恵のハコ

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ヴィジュアル系ロックバンドが音楽シーンを賑わせた1990年代も今は昔。男性の化粧はもはや特別なものではなくなりました。当記事では、広がりを見せるメンズコスメ市場について解説します。

メンズコスメ市場は着実に拡大

化粧品市場は業界全体で見ると、2019年までは前年並みか前年プラスで推移していましたが、2020年は前年比で大きくマイナスに転じました。背景には、消費税増税(2019年10月)による駆け込み需要の反動に加え、コロナ禍での外出機会減少やマスク着用の定着による美容意識の低下があるようです。
しかし、このような状況でも活況なのが男性化粧品(メンズコスメ)市場です。メンズコスメ市場の規模は、2016年からの5年間で112%に伸長し、2020年も前年比104%となっています(株式会社インテージ調べ)。カテゴリー別では、基礎化粧品(下図緑色部分)の伸びが目立ちます(2016年対比116%)。基礎化粧品、つまり「スキンケア」への関心が近年特に高まってきているということです。

男性による化粧品市場規模の推移

出典:「インテージ 知る Gallery」2021年5月24日公開記事

きっかけは?けん引役は?盛り上がるメンズコスメ市場

なぜメンズコスメ市場、とりわけスキンケアは盛り上がりを見せているのでしょうか?この背景には、一点目にコロナ禍による在宅勤務の増加を受け、オンライン会議で自分の顔を見る機会が増え関心を持つようになったこと、二点目に長期間に及ぶマスク着用で肌荒れが起こり、ケアを必要とする人が増えたことが考えられます。スキンケアの代表的なアイテムといえば、洗顔料、化粧水、リップクリーム、ハンドクリームなどが挙げられます。スキンケアは、ぱっと見て「メイクしている」という印象を与えるものではないため、男性でも始めやすく、浸透していったと考えられます。

では、どのような人たちがメンズコスメの盛り上がりをけん引しているのでしょうか?株式会社リクルートライフスタイル ホットペッパービューティーアカデミーが20代~40代の男性ビジネスパーソン3,000人に対して行った調査によると、スキンケアへの関心度(「関心がある」または「やや関心がある」と回答した人の割合は20代で75.4%、30代で64.3%、40代で52.1%となりました。若い年齢層のほうが高い関心を示しています。また、1か月あたりの身支度・ケアにかける費用は、20代が平均5,912円、30代が4,082円、40代が3,494円となりました。20代は関心の高さと共に、使っている金額が大きいことも分かります。

出典:男性ビジネスパーソンのメイクに関する意識・実態調査(株式会社リクルートライフスタイル ホットペッパービューティーアカデミー)

Z世代の価値観とマッチ

現在20代の人々は、いわゆるZ世代(一般的には、概ね1990年代半ばから2010年代半ばまでに生まれた世代を指す)にあたります。この世代の第一の特徴として、生まれた時点でデジタル技術が確立されており、ITが当たり前の環境で育ってきた「デジタルネイティブ」であることが挙げられます。Z世代にとっては、YouTube、Instagram、LINE、TwitterといったSNSがコミュニケーションツールであり、情報源でもあります。スマホの大衆化やデータ速度の上昇によって写真や動画が身近な情報になったこと、SNSでの自己発信に欠かせない自撮りや加工アプリの利用などによって、Z世代では自分の顔というものに対する意識が大きく高まっているのではないでしょうか。また、Z世代の第二の特徴として「多様性の重視」が挙げられます。自分らしさを大切にするZ世代は、自己表現の一環としてスキンケアへの関心を高めている、という背景もありそうです。

Z世代の価値観とマッチ

スキンケアへの関心が高まる一方で、いわゆるメイクアップ(メイク)はまだ身近な存在とはなっていないようです。同じくホットペッパービューティーアカデミーの調査によれば、アンケート対象者3,000名(20代~40代の男性ビジネスパーソン)のうち、メイク(コスメ*利用)経験者は6.6%にとどまります。スキンケアに高い関心を寄せている20代でも、メイク経験者は14.2%と少数にとどまります。

*コンシーラー、下地、ファンデーション、フェイスパウダー、アイブロウ、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、口紅・グロス、チーク、ハイライター・シェーディングなど

色のつかない「スキンケア」と比較して、色のつく「メイク」は中性的なイメージもあり、男性にとってはとっつきにくい印象があるのかもしれません。しかし、スキンケアとベースメイク(下地やファンデーションなど、顔の肌をきれいに見せるメイク)は極めて近い関係にあるため、スキンケアを実施している層の関心が徐々にベースメイクに移行していく可能性はあります。また、Z世代に人気の男性アイドルのなかには積極的にメイクを取り入れている人も多く、コスメ口コミサイトでは男性の口コミも増え、メンズコスメアワードも発表されるなど、メンズコスメの情報を目にする機会は確実に多くなっています。メンズコスメは、Z世代の価値観との相性の良さに後押しされ、今後のさらなる隆盛が期待される分野です。

プレゼントにも!次なるブームはジェンダーレスコスメ?

メンズコスメの購入者は男性とは限りません。女性は「プレゼント」としてメンズコスメを購入する機会が増えているようです。筆者の調査では、男性は高級さよりもコストパフォーマンスや手軽に購入できることを重視する傾向、女性はバレンタインなどのプレゼント探しをきっかけにデパートでブランドものを購入する傾向にあります。この場合、女性向けコスメブランドのメンズラインが選ばれる機会も多いようです。

また、「メンズ」「レディース」の垣根を超えた、「ジェンダーレスコスメ」も人気に火が付きつつあります。ジェンダーレスコスメ、ジェンダーフリーコスメ、などの呼び方がありますが、名前の通り「性別を問わずに使えるコスメ、スキンケアアイテム」のことをいいます。男女で肌に関する悩みに大きな違いはないことを理由に、性別ではなく肌悩み別のアプローチをするものが増えています。性別を感じさせないデザインで誰でも手に取りやすく、1つの商品をパートナーとシェアすることができるのも魅力です。2022年に入り、化粧品メーカーだけではなく、小売業のプライベートブランドからもジェンダーフリーをうたった化粧品が発売されました。 先ほど、Z世代の特徴として「多様性の重視」を挙げましたが、ジェンダーレスコスメは、まさに自分自身を尊重し多様性を重視するZ世代にぴったりというわけです。これから消費の主体となっていくZ世代の価値観は、モノづくりにおいても大きな影響力を持っているようです。

おわりに

「化粧品は女性のもの」という価値観は過去のものとなり、若い世代の購買力の上昇と共に化粧品業界には新しい市場が開けつつあるようです。市場が変化するということは、そこに投資チャンスが眠っている可能性が高いということです。近所のバラエティショップや薬局、あるいはデパートにお出かけの際はぜひ、メンズコスメやジェンダーレスコスメの台頭を観察してみましょう。ご自身の投資のヒントにもなるかもしれません。

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