ひと目でわかる…医療機器とは?市場と業界動向に迫る
2021/12/27
超高齢化社会の日本。医療の発展は欠かせないものであり、医療機器の進化がその一端を担うことは間違いありません。 そもそも、医療機器とは何かというと、薬機法によって「人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であって、政令で定めるものをいう。」と定義されています。これだけではピンこない方も多いと思いますが、あまり馴染みが無いようで、実は私たちのごく身近で利用されているものもあります。本記事ではそんな医療機器の実態や市場と業界動向について迫ります。
どこまでが医療機器?
医療機器と聞くと、皆さまはどのようなものを思い浮かべますか?病院の検査や手術で使用する大型の医療機器を想像される方が多いのではないでしょうか。厚生労働省の定める医療機器の種類には、医療用鏡の内視鏡、X線診断装置、内臓機能検査用器具のMRIなどが代表的なものとしてありますが、筆者がおどろいたのは視力補正用メガネ、コンタクトレンズ、体温計、救急絆創膏、視力検査などでよく目にする視力表や色盲検査表等も医療機器に含まれていたことです。一口に医療機器と言ってもその分類は多岐ににわたり、その代表例を見るだけで医療現場だけでなく、私たちの日常生活も支えていることがうかがえます。
医療機器生産金額上位10分類と各分類に含まれる主な医療機器
分類 | 医療機器例 |
---|---|
内臓機能代用器 | ダイアライザー、透析装置・血液回路、ペースメーカ、ステントグラフト、人工心肺用回路システム |
医療用嘴管及び体液誘導管 | 各種カテーテル、チューブ、カニューレ、ステント、ガイドワイヤ |
医療用鏡 | 内視鏡、手術用顕微鏡 |
医療用X線装置・X線管 | X線診断装置、X線CT診断装置、デジタルラジオグラフ |
血液検査用器具 | 血球計数器、血液凝固測定装置、血液自動分類装置 |
内臓機能検査用器具 | MRI、多項目モニタ、心電計・電極、血液ガス分析装置、パルスオキシメータープローブ |
理学診療用器具 | 超音波画像診断装置・プローブ、除細動器 |
整形用品 | 人工股関節・膝関節、脊椎内固定器具、体内固定用ネジ・髄内釘・プレート、医療ガーゼ、救急絆創膏 |
医薬品注入器 | 輸液セット、経腸栄養注入セット |
歯科用金属 | 歯科鋳造用パラジウム合金 |
出所:厚生労働省「令和元年薬事工業生産動態統計」のデータ、各種情報をもとにアセットマネジメントOne作成
医療機器市場と業界動向
それでは、日本における医療機器の市場規模をみていきましょう。
2004年以降、対前年伸び率はマイナスの局面も見られましたがプラス基調で推移しており、毎年平均約600億円増で成長しています。医療機器の分類としては大きく3つ、「診断機器」「治療機器」「その他医療機器」があります。2018年では、わが国の医療機器市場(約2.9兆円)のうち、金額ベースで治療機器(人工関節、カテーテル、ペースメーカ等)が59%、診断機器(内視鏡、CT、MRI等)が20%を占めています。一般的に治療機器の成長率が高く、市場規模も大きい反面、治療機器は欧米企業が高いマーケットシェアを持つ製品が多く、輸入比率が相対的に高いようです。
出所:経済産業省「令和3年経済産業省における医療・福祉機器産業政策について」のデータをもとにアセットマネジメントOne作成
また、世界における医療機器の市場動向としては、2020年に新型コロナウイルス感染拡大による外来患者の受診控えや不急の手術・処置の延期等をうけ、一時的な落ち込みがみられましたが、中長期的には先進国での高齢化を見据えた医療のデジタル化の推進や、新興国(中国含む)の医療インフラ整備などから高成長が見込まれ、拡大傾向にあると予測されています。
グローバル医療機器メーカーの売上高ランキングは欧米企業が上位を占めており、中でも2020年のシェアTOP企業である米国メドトロニック社は、医療機器の修理店からスタートし、ペースメーカや糖尿病患者のモニタリング分野で市場をリードしています。さらに同業も活発に買収して事業を拡大し、2020年の収益は約300億米ドルとなっています。 このようにグローバル大手企業が、治療機器やデジタルヘルス関連の取り組みを強化している一方、日本企業は遅れをとっているのが現状です。
出所:StatistaのデータをもとにアセットマネジメントOne作成
進むデジタルヘルスは日本の追い風となるか
日本の医療の発展に貢献すべく、医療分野の研究開発を促進するためのファンディング(資金調達)として、「日本医療研究開発機構(AMED)」が2015年4月に設立され、基礎研究から実用化までを関連省庁が横ぐしで支援を行っています。
企業サイドでは、富士フイルムが2019年に日立製作所の画像診断関連事業を買収(買収完了は2021年3月末)、川崎重工業とシスメックスの合弁会社であるメディカロイドが2020年に国内初の手術支援ロボットとして承認を取得、オムロンが心電図を開発する米スタートアップのアライブコア社と心電計付き血圧計を2019年に共同開発し、米国での販売を開始するなど、今後の医療を見据えた動きが活発なようです。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大以降、オンライン診療の規制緩和もあり、遠隔モニタリング機器等の需要拡大や、医療機関の人材不足を受けてロボット活用などのデジタルヘルスへの流れが加速しています。日本では、2040年には現役世代1.5人につき1人の高齢世代を支えるようになるとみられており、医療崩壊も懸念されているなか、こうした環境の変化が日本の医療機器業界の追い風となることが期待されます。業界の更なる発展に期待しつつ、いつまでも健康に過ごしたいものですね。
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