ISM景気指数とは?米国の重要経済指標を分かりやすく解説
2021/02/02
経済ニュースなどで時々耳にする「ISM景気指数」。なんとなく文脈から米国の経済指標の一つであることは分かると思いますが、一体どのような指数なのか正確には知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、この指標が何を表しているのか、また発表された内容からどんなことが分かり、景気状況をどのようにとらえたらよいかを分かりやすく解説したいと思います。
ISM景気指数とはどんな指数
ISM景気指数とは、全米供給管理協会(ISM=Institute for Supply Management)が300社以上の購買(仕入れ)担当者を対象にアンケート調査を実施し、その調査結果を指数化したものです。同指数には、製造業に対して実施するアンケート結果を示す「ISM製造業景気指数」と非製造業に対して実施するアンケート結果を示す「ISMサービス業景気指数(以前の名称はISM非製造業景気指数)」の2種類があります。
いずれも各質問に対し、1ヶ月前と比較して「良くなっている」、「同じ」、「悪くなっている」の三者択一の回答がなされ、その結果を集計して数値化しています。数値は0から100までで表され、「良くなっている」と「悪くなっている」の比率が同じ場合「50」となります。このため、50を景気の拡大・後退の分岐点としてみることが可能で、50を上回ると景気拡大、50を下回ると景気後退を示唆するものとして読み取ることができます。
製造業景気指数とサービス業景気指数は何が違うの?
前述したとおり、ISM景気指数には「製造業景気指数」と「サービス業景気指数」の2つの指数があります。
ISM製造業景気指数 | ISMサービス業景気指数 | |
---|---|---|
発表タイミング | 月次、翌月第1営業日、 米国東部標準時間:午前10時発表。 (夏時間:日本時間午後11時00分、冬時間:日本時間午前0時00分) |
月次、翌月第3営業日、 米国東部標準時間:午前10時発表。 (夏時間:日本時間午後11時00分、冬時間:日本時間午前0時00分) |
総合指数の算出方法 | アンケートは新規受注、生産、雇用、入荷遅延、在庫、顧客在庫、支払価格、受注残、新規輸出受注、輸入の10項目。その内、新規受注、生産、雇用、入荷遅延、在庫の5項目を加重平均して総合指数を算出。 | アンケートは事業活動、新規受注、雇用、入荷遅延、在庫、在庫景況感、支払価格、受注残、新規輸出受注、輸入の10項目。その内、事業活動、新規受注、雇用、入荷遅延の4項目を平均して総合指数を算出。 |
算出開始 | 1931年から公表。 2002年1月以前の名称はNAPM (全米購買部協会指数)。 |
1998年から公表。 |
特徴 | 米国の名目GDPに占める製造業の割合は2019年時点で1割程度と大きくはないものの、同指数は毎月発表される米主要経済指標の中で最も早く発表され、注目されている。製造業は輸出企業が中心であることから、ドル高が同指数の悪化要因となる傾向にある。 | 製造業景気指数に比べて歴史は浅いものの、2019年時点で米国の名目GDPの9割程度を非製造業が占めることから、やはり注目度が高い指標。労働者の占める割合も高く、雇用統計(毎月第1金曜日に発表)よりも先に発表されることも多いことから、雇用統計の先行指標としての側面も持つ。 |
ISM景気指数でどんなことがわかる?
これまでの解説のとおり、同指数は企業の景況感を表すことから景気の先行きを示唆する景気先行指標とされています。数値が高ければ高いほど景気拡大のペースは早く、低ければ低いほど景気減速のペースが速いことを示しており、FRB (米連邦準備理事会)の利上げスタンスを見極める意味でも注目されています。
実際、同指数と実質GDP成長率を比較してみると(下図ご参照)、同指数に実質GDP成長率がある程度追従していることが確認できます。このため、同じく景気先行指標である株価指数とは連動性が比較的⾼いと考えられます。また、アンケート調査は項目ごとに公表されており、その詳細を確認することで、経済の実態をより正確に把握することが可能になるといえるでしょう。
関連指標には何がある?
同指数と関連性が高い主な米経済指標としては以下が挙げられます。
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シカゴPMI(購買部協会)指数
毎月月末米国東部標準時間午前9時45分(夏時間:日本時間午後10時45分、冬時間:日本時間午後11時45分)発表。シカゴ購買部協会がシカゴ地区にある企業の購買担当者へアンケート調査を実施し、その調査結果を指数化したもので、 ISM景気指数と同様に「50」が景況感の分岐点。 ISM製造業景気指数の前日に発表されることから同指標の先行指標として注目度が高い。シカゴ地区に調査対象を限定しており内容も若干異なることから、全米ベースのISM景気指数とは必ずしも相関していない。 -
フィラデルフィア連銀製造業景気指数
毎月第3木曜日米国東部標準時間午前10時(夏時間:日本時間午後11時00分、冬時間:日本時間午前0時00分)発表。フィラデルフィア連邦銀行が、ペンシルベニア、ニュージャージー、デラウェア州の製造業の景況感を調査・指数化した経済指標。「0」を景況感の分岐点としており、0を上回ると景気拡大、0を下回ると景気後退を示唆する。ISM製造業景気指数と相関が高いとされている。 -
NY連銀製造業景気指数
毎月15日米国東部標準時間午前8時30分(夏時間:日本時間午後9時30分、冬時間:日本時間午後10時30分)発表。ニューヨーク連邦銀行が、地区内の製造業の景況感を調査・指数化した経済指標。「0」を景況感の分岐点としており、0を上回ると景気拡大、0を下回ると景気後退を示唆する。フィラデルフィア連銀製造業景気指数、ISM製造業景気指数の先行指標としても注目される。 -
IHS Markit購買担当者景気指数(PMI(Purchasing Managers' Index))
指定された月に発表。30ヵ国以上の国々を対象に、400社以上の企業にアンケート調査を実施して算出。アンケートの内容は、生産高・新規受注・製品価格・購買価格・購買数量・雇用など多岐にわたり、前月と比較して「改善した」「横ばい」「悪化した」の選択肢から回答。 ISM景気指数と同様に「50」が景況感の分岐点。
また、日本では同様の指標として、日本銀行が公表する日銀短観があります。「0」を景況感の分岐点としており、0を上回ると景気拡大、0を下回ると景気後退を示唆します。
最後に
このようにISM景気指数は米国の景気を見通すための重要な指標であり、こうした指標を確認したうえでニュースや株価を見てみると新たな一面に気付くことができるかもしれません。最近では、新型コロナウイルスの影響で在庫や雇用に大きな変化が出てきているというニュースも見られます。他の指標も確認しながら今起きている出来事を見てみると、世界の繋がりや、世の中の動きもよりはっきり見えてくるかもしれません。
出所:ブルームバーグ、各種資料を基にアセットマネジメントOne作成
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