ニュージーランドってどんな国?~歴史と先住民文化から経済・産業・観光までご紹介~
2023/04/19
ニュージーランドは太平洋の南西に位置しており、日本の3/4程度の面積となる島国です。南北に細長いことから北と南で気候が少し異なっており、南端では氷河を確認することも出来ます。また、島国ながら標高3,000メートル級の山岳地帯や火山の台地、広大な平野や氷河に伴って出来たフィヨルドなど、豊かな自然・景観に恵まれ、かつ温暖で四季もあることから、観光だけでなく映画のロケ地等としても人気のある国です。本記事では、そんなニュージーランドの歴史や先住民文化、経済・産業の他、筆者も体験したニュージーランドの美しい自然環境等の観光資源についてもご紹介していきます。
ニュージーランドの基本情報
ニュージーランドは太平洋の南西、オーストラリアの南東に位置する南半球の島国です。前述の通り、国土は日本の3/4程度の面積がありますが、人口は約513万人と日本の1/25程しかいません。ニュージーランドはヨーロッパ系の白人が人口の約7割を占めていますが、その他にも先住民であるマオリ系やアジアやポリネシアからの移民など、多様な背景を持つ人々が暮らす他民族国家です。
国土は南北に細長く、北島と南島に分かれていますが、人口の3/4は北島に居住しています。ニュージーランドの首都は人口約20万人のウェリントンですが、都市の規模としては日本からの直行便も就航するオークランドが約160万人とニュージーランド最大の都市となっています。ウェリントンが首都になっていることが不思議に感じられる方もいらっしゃるかと思いますが、その理由は立地にあったとされています。ウェリントンは北島の南端に位置しており、南島にも近いニュージーランドの地理的な中心地点です。首都に設定されたのは1865年ですが、当時南島で金鉱が発見され、ゴールドラッシュで南島への移住が活発となったことから、南北の連携強化を目的にウェリントンを首都として設定し、現在に至っているとのことです。
ニュージーランドの国旗は、かつてイギリスの植民地であった歴史もあり、青地にユニオンジャック(英国旗)と南太平洋に位置することを示す南十字星がデザインされたものとなっています。2016年にはユニオンジャックに代えて、シダの葉を用いた新国旗への変更の是非を問う国民投票が実施されましたが、最終的には長年親しまれた現行の国旗を維持する結果となりました。
国名 | ニュージーランド |
---|---|
面積 | 27.5万平方キロメートル(日本の約4分の3) |
人口 | 約513万人(2022年) |
首都 | ウェリントン |
言語 | 英語、マオリ語、手話(2006年以降) |
宗教 | キリスト教36.5%、無宗教48.2%(2018年国勢調査) |
通貨 | ニュージーランド・ドル |
マオリ文化
ニュージーランドの先住民であるマオリの人々が最初に移住を始めたのは、およそ1,000年前、ポリネシアの島々から現在のニュージーランドの北部に渡ってきたと言われています。ニュージーランドと呼ばれるようになったのは、17~18世紀にかけてヨーロッパの白人が植民を行って以降で、それまでマオリの人々はこの地を「アオテアロア」(長い白い雲のたなびく地)と呼んでいました。 植民を行ったのは主に英国で、1840年にニュージーランド初の国際条約となる「ワイタンギ条約」を英国と締結し、ニュージーランドは英国領となる一方で、マオリは自身の土地や文化の継承を約束されることとなりました。
同条約は多数のマオリ族の首長から署名を集めましたが、締結に際してマオリ語に翻訳された条約と英語の条約では、双方の権利関係について解釈が異なる部分がありました。加えて、そもそも条約自体が軽視されたことや、経済力の違い等から実質的な英国の支配が強まり、マオリは次第にその土地や言語、文化等が失われていく状況となります。
第二次世界大戦後、アジアやアフリカで多くの国が独立を勝ち取ったことや、南アフリカのアパルトヘイト廃止やアメリカの奴隷廃止等の国際的な人権回復の流れを受け、ニュージーランドでも1975年にワイタンギ審判所が設置されました。ここでは、当初のワイタンギ条約の理念を前提とした審理が行われ、不当に没収された土地の返還や損害に対する補償金の給付等を通じて、マオリの社会的な地位は徐々に回復へ向かっています。
現在も残るマオリ文化について、特徴的なタトゥーである「タ・モコ」、歓迎の儀式である「ポフィリ」、伝統的なアート「トイ」など様々ありますが、2019年に日本で開催されたラグビーワールドカップでニュージーランドの代表チーム「オールブラックス」が試合前に演じた「ハカ」もその一つです。日本でも当時話題となったため、今でも印象に残っている方も少なくないのではないでしょうか。
「ハカ」はマオリの伝統的な民族舞踊で、もともとは戦いに臨んで敵を威嚇すると同時に、仲間の士気や結束力を高めるものでした。主に男性が舞うもので、大地を踏みならして舌を出し、身体を叩きながら大きなかけ声と共に踊るものでしたが、今では女性や子供も参加し、スポーツの試合の他、結婚式や葬儀等でも披露されることがあるようです。
2019年のラグビーワールドカップから今年でちょうど4年目となり、2023年9月にフランスにて開催が予定されています。今回も試合前にあのオールブラックスによるハカの披露があるかもしれません。
ニュージーランドの経済・産業と日本とのつながり
ニュージーランドの経済規模は名目GDPが2,493億米ドル(2021年時点)で、日本と比較すると約1/20程度の規模ですが、一人当たりの名目GDPでは日本の約4万ドルに対して、ニュージーランドは約4万9千ドルと、2013年にニュージーランドが日本を上回って以降、差が開いている状況です。
ニュージーランドの産業は不動産や金融、情報通信などの第三次産業がGDPの67%を構成する先進国型の経済構造ですが、実は約5%程度の農林水産業から輸出される乳製品、肉類、木材・木製品、果実類、水産品、ワイン、羊毛類がニュージーランドにおける輸出の6~7割を占めており、生産性と国際競争力を有するこの第一次産業がこの国の経済的な特徴を示す主要産業です。ニュージーランドの動物と聞いて、羊や牛を思い浮かべる方もいらっしゃるかと思いますが、人口が約513万人に対して、羊は2,700万頭以上、牛も肉牛・乳牛合わせて1,000万頭いるとの調査もあり、乳製品や肉類の輸出が盛んです。
また、ニュージーランドの国鳥であるキーウィに由来するキウイフルーツについて、日本が輸入しているものの96%はニュージーランド産です。こうした状況から、ニュージーランド経済は農林水産物の需要や価格を左右する世界の経済動向や為替相場等の影響を受けやすい構造となっています。なお、ニュージーランドの最大の貿易国は、最も近くのオーストラリアではなく中国ですので、特に中国の景気動向に左右される傾向にあります。日本はニュージーランドから見て4番目の輸出国で、やはり乳製品や果物等を多く輸出しています。一方、日本からニュージーランドへの輸出は輸送用機器(自動車)が総額の約6割を占めています。ニュージーランドは日本と同じく左側通行の国であるため、親和性が高い日本車も人気があり、22年度の新車販売台数上位5社において日本車メーカーは3社ランキングされている状況です。
日本とニュージーランドは1928年に「通商関税航海関係暫定取極」を締結したことから国交を開始し、1938年にウェリントンに日本の領事館を設置することになりましたが、第二次世界大戦で敵国同士となったことで国交は断絶しています。現在に至る正式な国交は、戦争終結後1952年のサンフランシスコ講和条約発効以降となります。その後、日本とニュージーランドは相互に公使館を開設し、首相同士も相互に訪問を行うなど、アジア太平洋地域の安定と発達に向けて政治・経済的な連携を強化していきます。なお、日本とニュージーランドが提携している姉妹都市は現在44あり、ニュージーランドの最大提携先となっている他、2011年2月にニュージーランド南部で発生した地震では日本から、同年3月に発生した東日本大震災ではニュージーランドから大規模な救助隊を派遣するなどの相互支援も行われました。
ニュージーランドの自然環境
ニュージーランドは前述の通り、南北に細長い島国で北島と南島に分かれています。北島はニュージーランド最大の都市であるオークランドを筆頭に、人口上位10都市中8都市が北島に集中するなど、自然と都市の調和が感じられるエリアです。
マオリ文化を感じられる施設・遺跡やホビット村(映画「ロード・オブ・ザ・リング」の撮影地)などの有名な観光地があり、また南部ではホークス・ベイなどワインの産地としても知られています。
南島にもクライストチャーチなどの大都市もありますが、ニュージーランド最高峰のクック山(3,724m)を擁するアオラキ/マウント・クック国立公園や世界でも有数の広大な面積を持つフィヨルドランド国立公園など9つの国立公園を有するなど、大自然のダイナミックで美しい景観を満喫することができます。
筆者も日本から直行便があるオークランドに渡り、その後クライストチャーチを経て南島の美しい自然を観光して回った経験がありますので、その一例についてご紹介したいと思います。
なお、ニュージーランドは日本のように鉄道網が張り巡らされている国ではないため、車での移動を余儀なくされることから、筆者も南島ではクライストチャーチにてレンタカーを借りています。海外での運転は初めてでしたが、ニュージーランドは日本と同じ左側通行であること、また日本車が普及していることもあり、ナビの操作感も含めて日本とあまり違和感なく運転することができました。
車で走ってみて、日本と明らかに異なると感じた点は道路の概念です。ニュージーランドは日本のように町と町が連続しておらず、町の入り口と出口がハッキリしています。町と町の間には何十キロも農場や牧場が広がり、そこに道路が通されていますが道中にコンビニやガソリンスタンド等はほとんどなく、郊外の道路は町と町をつなぐ高速道路のような存在です。国道1号線が南北を縦断しているシンプルな構造で、町に入らないと信号機や交差点も無いため、ナビは使いましたが「次は70キロ先を右折してください」のような指示でほとんど道に迷うことはありませんでした。
目的地に向かって車で広大な大地を進んでいくのですが、道中では羊や牛、豚、馬などたくさんの動物たちを確認することができます。奥側の柵が見えない程広大な牧場に放し飼いにされており、寝転がったり草を食べたりしながら伸び伸びとしている様子で、ストレスの少ない環境で飼育されているように見えて羨ましくなったことを覚えています。
クライストチャーチから3時間程度で目的地のテカポに到着します。テカポは標高約700mにある町で、ニュージーランドの南アルプスを望み、足もとには氷河が削った岩石の粉が溶け込みミルキーブルーに輝くテカポ湖をたたえるニュージーランド有数の景観地です。また、そこから見る星空は世界遺産級の美しさとしても有名です。筆者もその星空を体験したく、日本からはるばる訪問しましたが、テカポには世界中から観光客が訪れており、私の他にも日本人がいる様子でした。
湖畔にある教会(善き羊飼いの教会)が撮影スポットで、真夜中や明け方でも星空を見たり、写真を撮りに絶えず人が訪れていました。教会を前にして眺める星空は本当に美しく、周辺に他の建物や光源が無いことから、教会ごと宇宙に放り出されたような錯覚を覚えます。
コンディションが良ければ、天の川や日本では宮古島等を除いて見ることができない南十字星なども鑑賞できることが出来ますので、星空ハンターの方には是非おすすめのスポットです。
また、テカポからはニュージーランド最高峰のマウント・クックの麓まで車で1時間半程度の距離です。マウント・クックでは本格的な登山から日帰りのハイキングまで楽しむことができ、氷河を身近に体験出来ます。
ニュージーランドはコロナ禍において外国人の入国を原則禁止とする厳しい政策を採っていましたが、現在ではそれも撤廃されてワクチンの接種証明等も不要となり、日本からはNZeTA(電子渡航認証)手続きのみでの入国が可能です。
皆さんも次のご旅行は思い切ってニュージーランドまで飛んで、最高の星空やダイナミックな自然環境を見学してみてはいかがでしょうか。
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