東京オリンピック・パラリンピックの裏側…スポンサーって?使われた新技術とは?
2021/10/01
2021年7月23日~8月8日に東京オリンピック、8月24日~9月5日に東京パラリンピックが開催されました。新型コロナウイルスが世界中でまん延し、開催にあたって賛否両論があったなか、1年の延期を経て、競技のほとんどが無観客の状態で開催されました。大会の熱気を直接肌で感じることができない人が多かった今大会ですが、開催にあたり多くのスタッフ、ボランティア、そしてスポンサーが大会を支えました。今回は、オリンピック・パラリンピックに携わる企業やその技術、また使用された施設のその後などの裏側についてご紹介します。
オリンピックのそもそも
オリンピックは4年に一度開催される、世界的なスポーツの祭典です。スポーツを通した人間育成と世界平和を究極の目的とし、夏季大会と冬季大会が開催されています。オリンピックの開催においては、IOC(国際オリンピック委員会)が舵取りを行い、大会の場所の選定などを行います。開催国は組織委員会を設立することが義務付けられており、大会の開催における準備や運営を行います。
またパラリンピックは4年に一度、オリンピックの終了直後に同じ場所で開催される障害者を対象とした大会で、IPC(国際パラリンピック委員会)が運営しています。
オリンピックの起源は、古代ギリシャで行われていた「オリンピア祭典競技」、いわゆる古代オリンピックとなります。現在のオリンピックは近代オリンピックといわれ、1896年に第1回オリンピックがギリシャのアテネで開催されて以降、現在まで続いています。
なお、オリンピックは過去に5回、戦争などを理由に中止となりました。
スポンサーって何?
大会の運営には多額の費用が必要になりますが、これを開催国や自治体が全額負担することは難しく、さまざまな方法での運営費用を調達しています。主な資金調達方法は以下の3つです。
1つ目:各競技を観戦できるチケットを観客に販売して、その売り上げを運営予算に充てる
2つ目:テレビの放映権を世界の放送局に販売して、権利金収入を運営予算に充てる
3つ目:スポンサーとなる企業を募集して、協賛金を運営予算に充てる
大会のスポンサーは、IOCやIPC、開催国の組織委員会にスポンサー料を払い、広告使用権を得る企業・団体のことです。大会のスポンサーには、大会の呼称やマーク類、映像の使用権、大会会場でのプロモーション活動などが認められています。
大会の開催が近づくと、CMで「〇〇大会のゴールドパートナーです。」などを聞いたことはありませんか?オリンピックのスポンサーの種類は、全部で4つあります。
種類 | 概要 | 契約期間 |
---|---|---|
ワールドワイド オリンピックパートナー |
IOCと契約。個々の大会だけでなく、大会のシステム全体をサポートするスポンサー。 | 10年 |
ゴールドパートナー | 開催国の組織委員会との契約。国内限定の権利で、国内では最高位のスポンサー。 | 最長6年 |
オフィシャルパートナー | 開催国の組織委員会との契約。ゴールドパートナーと比較して活動の権利が制限される。 | 最長6年 |
オフィシャルサポーター | 開催国の組織委員会との契約。自社の商品やサービスをじかに提供することで、大会をサポートする協賛企業。 | 最長6年 |
スポンサーの契約料は非公開ですが、一部を除き年間15~25億円程度のようです。IOCを契約元とするワールドワイドオリンピックパートナーは、10年契約で大会のシステム全体をサポートします。開催国の組織委員会を契約元とした単年契約のスポンサーには3種類があり、スポンサー料の差額に応じて自社広告の肖像権や掲載場所が変わります。
どんな技術が活躍したの?
会場において、スポンサー企業は自社技術をお披露目する絶好のチャンスともいえます。今回の東京大会はほぼ無観客であり、企業のPRが難しい状況となりましたが、多くの最新技術が用いられました。
<最新技術の一例> | ||
スポンサー | 技術 | 概要 |
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アリババ | OBS(Olympic Broadcasting Services)クラウド | 映像を有する放送権者とコンテンツを流したいメディアをつなぐクラウドで、従来のように業者間がそれぞれのシステムを用いて映像を送受信する必要がなく、短編映像のやり取りを効率的に行うことができるもの。 |
トヨタ自動車 | e-Palette | 自動運転EV(電気自動車)で、選手村での移動手段として活躍。「e-Palette」の自動運転技術は、SAEレベル4相当(5段階ある自動運転化レベルのうち、2番目に高い「特定条件下における完全自動運転」)とされる。 |
インテル | 3Dアスリート・トラッキング(3DAT) | 陸上競技で使用され、複数のカメラで選手のフォームや動きを毎秒60フレームで取り込み、AI(人工知能)で分析するもの。実際の映像に加速度や時速、順位などの情報をリアルタイムで反映し、選手がどのように動いたのかを即時に分析することが可能。 |
なお、NTTが開発した「超高臨場感通信技術Kirari!」(バドミントン競技を離れた会場で立体的なホログラフィック映像として再生し、目の前でゲームを見ているような臨場感を味わえるシステム)は競技の無観客が決定し、大会での発信はできませんでした。残念ながら日の目をみることができなかったものもありますが、これらの最新技術は、今後私たちの日常に大きな関わりをもつと期待できます。
使われた施設はどうなるの?
1896年に第1回オリンピックが開催されたときの参加国は14ヵ国で、選手の数は241人でしたが、直近の過去数回をみると、参加国は200ヵ国以上、選手の数は1万人を超えています。大会の規模が拡大すれば、それに合わせた大きなスタジアムや選手村が必要になるため、新たな施設の建設や、建て替えなどが行われます。
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競技施設
今回の東京大会のために新設・再整備された競技施設は、9つでした。大会後、新たな開業に向けた追加工事などを行い、22年から23年に順次利用を開始する予定となっています。
<新規恒久施設の後利用の一例> | ||
後利用の視点 | ||
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アスリートファースト | 都民ファースト | |
海の森水上競技場 | 最高峰の水上競技大会の会場として、アスリートの活躍の場となる国際大会、国内大会を積極的に誘致・ 開催。 | 水上スポーツ体験、水上レジャーの機会の提供、都民参加イベントの実施など多様なスポーツに親しめる場の提供。 |
カヌー・スラローム会場 | カヌーをはじめとした水上競技の国際大会、国内大会を積極的に誘致・開催。 | 水上スポーツ体験やラフティング等の水上レジャーの機会を提供していくほか、水難救助訓練など、さまざまなニーズに応える多目的な利用。 |
アーチェリー会場 (夢の島公園) |
主要国内大会の開催を通じて、アーチェリーの競技力強化、普及・振興を図る。 | 都民の憩いの場として、子どもから高齢者まで自由に利用できる芝生広場を提供。 |
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選手村
大会の開催都市には、出場する選手の宿舎施設である選手村が建設され、数万人の選手たちに利用されます。大会終了後の建物や土地は、さまざまな用途に転用されています。2020年の東京大会では、晴海に選手村が建設されました。大会終了後はリニューアル工事が行われ、マンションなど住宅のほか、公園や学校、大型商業施設などが整備される予定となっています。
過去の例をみてみると、2012年のロンドン大会で選手村として使われた建物群は、レストランやショップに加え約3,000戸のアパートメントで構成される「イースト・ビレッジ」に変貌しています。また2014年のソチ大会の選手村は、黒海沿岸の保養地ソチの海辺にあったこともあり、リゾート施設に転用されています。
一方、住宅地に転用される予定だった2006年のトリノ大会の選手村は、長年の間廃墟となっていましたが、その後アフリカ系移民や難民がこの建造物を不法占拠し住み始めたそうです。また2016年のリオデジャネイロ大会の選手村は、高級コンドミニアムに改築されたものの、長年空き家のまま放置されているなど、選手村跡地が、残念ながら有効活用されていない例もあるようです。
終わりに
世界中で大いに盛り上がるスポーツの祭典、オリンピック・パラリンピックですが、開催までにたくさんの時間をかけて、多くの関係者によって支えられていることがわかります。2024年大会はフランスのパリ、2028年大会はアメリカのロサンゼルスで開催が予定されています。またIOCは今年の7月に、2032年大会をオーストラリアのブリスベンで開催することを決定しました。
今回の東京大会は新型コロナウイルスの感染拡大で、賛否両論ある中での開催となりましたが、次の2024年大会以降は、新型コロナウイルスが収束した状態で、世界中の人々が心から盛り上がれる大会になってほしいですね。
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