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資産運用会社大解剖④:いま話題の「責任投資」ってなに?

2019/09/10

知恵のハコ

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2006年4月、国際連合が1つの原則を発表しました。「責任投資原則(PRI: Principals for Responsible Investment)」です。責任投資原則は、機関投資家が投資プロセスを通じて世界が抱える重大な問題―環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字を取って「ESG」と呼ばれます―の改善に取り組むための原則です。

日本における責任投資原則への取組みについて、アセットマネジメントOne責任投資部長の寺沢徹氏にインタビューしました。今回は責任投資を通じて、地球の未来について、一緒に考えてみませんか?

責任投資とは何か

―新聞などでも責任投資やESGという言葉をよく目にするようになりました。責任投資について改めて教えてください。

20世紀は大量生産・大量消費を足掛かりに人類が経済成長を達成した時代でした。しかしそれは環境への大きな負荷を伴うものでもありました。21世紀に入って、経済成長は継続して必要だけれども、私たちが生きる地球や私たち自身を傷つけるような経済の在り方ではこの社会は持続しない、という意識が共有されるようになりました。その結果出てきたのが、E・S・Gという3つの着眼点です。「責任投資」というのは、ざっくりいえば、ESGの観点を投資プロセスに組み込むことで、「持続可能な社会」の実現に役立つような企業に投資することをいいます。

風力発電(イメージ)

―なるほど。責任投資とは、地球環境や私たちの社会がこれからも続いていくために行う投資、ということですね。実際に、そのような投資はもう行われているのでしょうか。

英国の年金運用については責任投資を考慮しなければならないなど、欧米では既に重要な投資手法になっています。日本ではスチュワードシップコードやコーポレートガバナンスコードが導入されたことに加えて、2015年にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が国連の責任投資原則に署名したことが大きな転機となりました。責任投資やESGがようやく注目され始めたのです。

―GPIFは国民の厚生年金・国民年金を管理している団体です。つまり私たちの年金の運用にも責任投資の考え方が取り入れられているということですね。

そうです。責任投資原則への署名は、書いて終わりではありません。投資分析と意思決定のプロセスにESG課題を組み込み運用資産総額の50%以上にESG投資ポリシーの適用が求められます。かつ、署名後に原則に沿う活動をしていない機関は責任投資原則から除名され、機関名も公表されることになります。こうして、責任投資は日本においても避けて通れないものとなったため、2016年頃から日本の各運用会社が責任投資への取組みを強化しました。多くの運用会社はGPIFに続き、責任投資原則に署名しましたし、一歩進んで責任投資を担当する部署を作った運用会社もあります。当社、アセットマネジメントOneもその一つですね。責任投資に関する専門部署を設けるというのは、取り組みに対する本気度の表れです。

責任投資部の役割

―運用会社各社が取り組みを強化する中、アセットマネジメントOneの責任投資への取組みとは具体的にどのようなものですか?

専門部署である当社の責任投資部が日本を代表する企業に幅広くESGへの取組みを促しています。2018年度は1,985社とコンタクトを取りました。これは、東京証券取引所に上場している企業のうち98%に相当する規模です。なかでも影響力の大きいと考えられる620社に対してエンゲージメントを行いました。

―エンゲージメントというのは、投資の世界では「企業の経営などに対してアドバイスし、具体的な行動を約束していくこと」ですよね。一般的には、株式のアナリストが「これぞ」と思う企業に「もっとこういうことをしたら株価に貢献しますよ」という内容をアドバイスするイメージなのですが…。

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責任投資部のアプローチは少し違います。投資の世界に「パッシブ投資とアクティブ投資」という考え方がありますね。パッシブ投資は市場平均に連動する投資成果を得ようとする考え方で、年金などの運用の柱の一つとして用いられる手法です。アクティブ投資は市場を上回る投資成果を目指す考え方です。エンゲージメントについて考えてみると、アクティブ投資は市場から抜きん出る銘柄を発掘することが目的なので、エンゲージメントの対象もアクティブ運用担当のアナリストが注目した会社に限られます。一方、パッシブ投資のエンゲージメントの対象は市場そのものです。個別企業ではなく市場全体のレベルアップを目指すということです。当社は年金運用に長い歴史と実績を持っており、パッシブ運用についてのノウハウは他社に負けない強みがあります。そこで更なる差別化を図るべく責任投資部ではパッシブ運用におけるエンゲージメントを積極的に手掛けています。パッシブ運用は売却することなく投資先の会社に半永久的に投資を続けることから、企業の長期的かつ継続的な取組みを必要とするESGをテーマにしたエンゲージメントとの親和性が極めて高いのです。日本の企業全体が、環境に優しく(E)、人を大切に(S)、自律的に機能する(G)…そんな社会つくりに貢献できればと考えています。

―なるほど。ターゲットが市場全体なので600社以上という膨大な数の会社に対してエンゲージメントを行うのですね。それってすごく大変なのではないでしょうか…?

アクティブ運用も含めた社数ですが、正直、数は多いですね。また、何をもってエンゲージメントの成果とするのか、という評価方法も実は運用会社によってまちまちです。そこで、当社は独自の管理・評価手法を編み出しました。詳しい情報は当社発行のスチュワードシップレポートをぜひ見ていただきたいです。

日本人と責任投資

―少し話が変わりますが、責任投資は欧米発祥の考え方だから日本にはなじみにくい、という声も聞かれます。

よく言われる話ですね。しかし、私はそうは思いません。そもそも、日本は世界に先駆けて公害問題に取り組み、乗り越えてきましたし、更に「売り手よし 買い手よし 世間よし」という「三方よし」の近江商人に遡る歴史を持っています。企業が自らの利益だけを追求すると社会に悪い影響が起こり得るし、企業自体も長くはもたない…このようなサスティナビリティに対する高い意識は日本人に既に根付いていると考えます。しかし、お金の話となると自他共栄の意識が薄れてしまうように感じます。

正直、金融業界の責任も大きいと思います。短期的に儲けることを第一としていた時代が長かったのです。しかし、人生100年時代と叫ばれる昨今、投資についても長期的な視点から考えることが非常に大切です。

風力発電(イメージ)

―そこでカギとなるのが責任投資なんですね。

ちょっと投資してパッと儲ける、という投機的な発想から脱するときです。投機で資産を増やそうとするのが抗生物質の投与だとすれば、責任投資は漢方薬による体質改善に例えられます。効果は緩やかかもしれませんが、健康な身体=健全な社会を築くことで、最終的に得られる利益は結局大きくなるのではないでしょうか。

―最後に読者に向けたメッセージをお願いします。

より良い社会を次の世代に残したいという思いは世界共通の願いだと思います。投資が持つ力で、この願いを叶え、社会をより良い方向へ変えていくことができると信じています。私たちが私たち自身のために、明るい未来を創る投資をしたいですね。そのような意識が個人投資家の皆さまに更に身近なものになるよう、当社も努力を続けます。

取材を終えて

筆者の幼い頃の夢は、新興国で貧しい人々の治療にあたる医師になることでした。大人になった今、縁あって資産運用会社で働いていますが、今回の取材で、責任投資を通じて日本や世界をより良くする活動に関わることができるということを知り、幼い頃の夢がよみがえり大きな誇りと喜びを感じました。特に、パッシブ運用におけるエンゲージメントで日本の企業全体のESGの底上げを目指す、という話は非常に印象的でした。より良き世界を次の世代に残していくために、今後も責任投資について積極的に情報発信していきたいと思います。

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