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資産運用会社大解剖⑧:トレーダーがいるって本当?何してるの?

2020/02/20

知恵のハコ

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シリーズ「資産運用会社大解剖」も第8回目となりました。これまでバランス型ファンドのファンドマネジャーアナリストについて紹介をしましたが、今回は各資産のファンドマネジャーから取引注文を受け、株式や債券などのマーケットで売買(発注)を担当しているトレーダーの仕事について紹介します。

投資判断と売買執行の分離

かつてはファンドマネジャー自身が証券会社などを通じて売買注文を執行していた時代もありました。しかし現在の運用会社では、個別銘柄の投資判断を行いポートフォリオの管理・運用を担当するファンドマネジャーと、マーケットで売買執行を行うトレーダーの機能を分離することが一般的となっています。こうした動きの背景には、株式売買委託手数料の自由化や受託者責任に対する意識の高まりがありました。

【ファンドマネジャーとトレーダーの役割】
フロー図

※上図は一般的な事例を示しています。

株式売買委託手数料の自由化

日本では株式売買委託手数料が1998年~1999年にかけて自由化されました。自由化以前の株式売買委託手数料は、約定代金ごとに売買委託手数料の水準が固定されていて、発注先の証券会社が違っても手数料の水準は同じでした。しかし、売買委託手数料が自由化されたことによって、運用会社はファンドの受益者(投資家)のために、より低いコストで効率的に取引をすることが求められるようになります。自由化によってファンドのパフォーマンス向上を目指す上で、取引コストの安い発注先の選定や有利に取引できる発注額の検討、一日の取引の中で発注するタイミングを見極めたりすることの重要性が高まりました。こうした動きの中で、多くの運用会社においてトレーダーの機能はファンドマネジャーから分離されていきました。

受託者責任に対する意識の高まり

受託者責任については、本シリーズ第5回目「ファンドはどうやってつくられてるの?」の中でも触れていますが、トレーダーの業務における最も重要な受託者責任は「最良執行義務」と言えます。「最良執行」とは最大の投資成果をあげることを目的として、市場の状況や価格等を総合的に勘案した上で、ファンドの利益に最も資すると判断される執行を行うことです。トレーダーは、執行に対して責任を持ち、特定の発注先・証券会社などを優遇することなく、投資家の利益を損なわないよう、執行にかかるコストを最小化するように努めています。また、発注を受けたすべてのファンドに対して公平に取引を行うことも求められています。

イメージ

トレーディング部門の位置づけと役割

前述のとおり、トレーダーの仕事はファンドマネジャーから派生した仕事という一面もありますが、現在では多くの運用会社で、トレーダーが所属するトレーディング部門は、運用部門とは切り離された独立した部門となっています。組織上も役割を明確に分けて相互の牽制を働かせることで、最良執行を目指す体制としているのです。トレーディング部門は、日々の売買執行だけではなく、発注先の証券会社などについての評価や選定も定期的に実施しています。売買執行結果をもとに執行能力を評価するほか、信用力や事務処理能力なども評価します。さらにグループ会社などに対する発注を優先しないための枠組みや、不祥事を起こした発注先に対する発注停止ルールの制定・運用などもトレーディング部門の役割です。なお少し余談になりますが、発注先の評価は、トレーディング部門が行う上記のような評価に加えて、運用部門が各証券会社などから得ている情報提供内容の質や量なども総合的に勘案して行われている事が多いようです。

トレーダーの評価

ファンドマネジャーがファンドのパフォーマンスを評価されるように、トレーダーも執行の優劣を評価されます。トレーダーの評価は、ある銘柄の市場での平均的な約定単価と、トレーダーが実際にその銘柄の売買を約定した執行結果とを比較することなどで行われます。市場での平均的な約定単価としては「売買高加重平均価格(VWAP:Volume Weighted Average Price)」が用いられることが一般的です。また、執行結果だけでなく市場の需給動向やニュース速報、法規制など、マーケットについての知識や情報提供力も評価の対象となります。

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以上、今回はファンドマネジャーの投資判断を受けて、実際に市場での売買執行を行うトレーダーについて紹介しました。売買執行コストを抑制することはファンドのパフォーマンス向上にとって重要な要素です。トレーダーの仕事は、運用会社の中では表に出る事の少ない比較的地味なポジションとも言えますが、特にインデックスファンドなどのパッシブ運用において、売買コストを抑える事が一層求められる中で、ファンドのパフォーマンス向上に占めるトレーダーの役割に対する期待値は相対的に大きくなっていると言えます。

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