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資産運用会社大解剖⑥:基準価額ってどうやって計算されているの?

2019/10/18

知恵のハコ

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投資信託の運用成績を確認する際に目にする「基準価額」。いったいどのように計算されるのでしょうか。今回は、基準価額の計算方法と、実際に基準価額算出を行う「投信計理」の部署についてご紹介いたします。

基準価額とは

そもそも、基準価額とは何を意味する数字なのでしょうか。

基準価額は、投資信託の10,000口当たりの値段(時価)を表すもの、とよく説明され、実際に投資信託を売買する場合の金額はこの基準価額をもとに計算されます。
*投資信託の売買においては、購入時・売却時・スイッチング時の手数料や信託財産留保額などの費用、および税金なども売買に影響します。

計算式は、以下の通りです。

基準価額=純資産総額÷受益権総口数×10,000

※当初元本1口=1円の場合で、この場合は通常10,000口当たりの価額で表示されます。

そもそも、なぜ投資信託の「値段」を表しているのに「基準価格」でなく「基準価額」なのでしょうか。他の「価格」例と比較して考えてみましょう。例えば、株式は売りたい投資家と買いたい投資家が合意した値段が取引価格、つまり株価となります。また、スーパーの野菜は売り手が設定した価格を買い手が合意することで取引が成立します。世の中の多くの「価格」は、おおむねこのように売り手や買い手の主観的な判断に基づいて合意した値段を指します。

一方、一般的に「価額」とはものが持つ価値としてより客観的に評価された値段を指し、例えば寿司屋の「時価」などがそれに当たります。これは多くの業者が参加し、行われる「せり」という方法で決定(落札)された値段をもとに決まるわけですから、そこに寿司屋と客の判断は存在しません(寿司を握る技術料は除きます)。

寿司屋(イメージ)

以上を踏まえた上で、基準価額についてみてみましょう。まず、純資産総額は投資信託が組み入れている資産の時価(例えば株式であればその日の終値に保有株数を掛けた金額)の総額をもとに客観的に算出することが可能です。そして、受益権総口数は投資信託の受益者が保有する口数の合計ですから、これも客観的に算出できます。

このように、基準価額は買い手や売り手の判断で変化するものではなく、投資信託の価値の基準として客観的に定められた値段であるため「基準価格」ではなく「基準価額」なのです。

基準価額を算出している「投信計理」とは

投資信託の基準価額は、「投信計理」の機能を持つ部署で計算されています。投信計理は、資産運用会社の内部にある場合と、資産運用会社の外部にあり、業務を委託している場合があります。

投信計理は、投資信託に関するあらゆる取引や資金の動きをシステムに入力し、原則として毎営業日の夕方に基準価額を算出・発表しています(例えばアセットマネジメントOneでは、公募投資信託:約600本、私募投資信託:約650本の計約1,250本の投資信託について、日々基準価額の算出をおこなっています)。

投信計理の業務の1日の流れは以下の通りとなります。なお、投信計理でおこなっている処理は、投資信託の資産の管理を行っている信託銀行においても同様の処理を行い、適宜結果を照合することで、事務の堅確性を高めています。
*2019年4月時点

<投信計理の1日の主な処理の流れ(例)>

投信計理の1日の主な処理の流れ(例)

※上記はイメージ図であり、すべてを網羅したものではありません。また、基準価額算出に至るプロセスは投資信託の特性や各資産運用会社の体制等により異なる場合があります。

① 

追加・解約処理

投資信託の購入を「追加」、売却を「解約」と呼びます。この処理で、投資信託の各販売会社からデータを受領し、「投資信託への資金の流出入」と「口数の増減」という形で投資信託に反映させます。この処理により、前述の基準価額を算出する際の「口数」が確定します。

② 

資金繰り算出・照合とコール約定処理・照合

追加・解約処理により、投資信託の当日中に出金する予定のない金額=余資が確定します。この余資を、コール市場(金融機関同士が短期の資金を貸し借りする市場)にて貸出し運用します(=コール約定)。これらの金額については、信託銀行と照合を行っています。

③ 

マザー約定処理

ファミリーファンド方式のファンドにおいて、ベビーファンドはマザーファンドを通じて取引を行います。追加・解約でベビーファンドの資金流出入が確定した後、それに応じてベビーファンドがマザーファンドを追加・解約する必要がある場合は、その処理を行います。

④ 

円貨建て/外貨建て資産の約定および時価取込

各投資信託が投資する資産(株や債券等)について、購入/売却等の処理(約定)のシステムへの入力や、投資する資産の直近の時価の取得を行い、投資信託に反映させます。
基本的には、各取引所や情報ベンダー等を通じて、円貨建て資産(日本株等)は基準価額算出当日の時価、外貨建て資産(外国株等)は前営業日の時価を取得しますが、直近の時価が取得できない場合や、特殊な投資対象(仕組債含む金融デリバティブ(派生商品))の場合等は、個別に時価の取得対応を行います。

⑤ 

為替レートの取込

外貨建て資産に投資するファンドの場合は、その資産を円で時価評価するために、為替レートの取込を行います。原則として、基準価額算出当日の午前10時頃の為替レートを使用します
*為替相場が大きく変動した場合等には、適用為替レートを変更する場合があります。また、投資信託の仕組みによっては、外貨建て資産を評価する為替レートの基準時等が異なる場合があります。

⑥ 

外貨建て資産の照合と基準価額算出、照合

外貨建て資産については、時価評価等において前営業日の終値等を使用する関係上、円貨建て資産より先に約定・時価評価の処理が行えることから、先に照合を行います。その後、円貨建て資産に関する各種処理が反映したところで、基準価額の算出および信託銀行との照合を行います。

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おわりに

上記のようなプロセスで、投信計理は基準価額算出に向けた処理を毎日欠かすことなくおこなっています。皆さまが何気なく新聞等で目にしている基準価額が、膨大なデータ処理の下で算出されていることをご理解いただけたのではないでしょうか。

投資信託によっては、組み入れている資産が特殊であったり(外国籍投資信託を組入れている場合や、仕組債やオプション等の金融デリバティブに投資している場合等)、または特殊なスキームを用いて投資している場合等には、上記とは別の事務フローに沿って処理を行う場合もあり、より専門的な知識が要求されます。

こうしたことから、新規の投資信託(特に特殊な商品性のもの)を設定する際には、投信計理は基準価額算出に至る事務プロセスで課題が無いかについて、商品開発部署等との議論を重ね、商品仕様を決定していくことも数多くあります。

投信計理の処理自体は、正確な事務作業が最優先されますが、その裏側にある”投資信託”の仕組みや法令・ルールに関する知識・理解は、商品開発等の面で資産運用会社にとって重要なものとなっています。

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