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資産運用会社大解剖②:アナリストってどういう調査をしているの?

2019/06/21

知恵のハコ

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様々な調査や分析をおこなう”アナリスト”。具体的に、どのような調査をおこなっているのでしょうか? 今回は、資産運用会社のアナリストの特徴と種類、そして具体的にどのような業務をおこなっているかについて、紹介いたします。

資産運用会社のアナリストと証券会社のアナリストの違い

金融市場におけるアナリストは、調査した情報の活用方法によって、大きく2つに分けることができます。
1つ目は、“セルサイド・アナリスト”です。主に証券会社や投資銀行など証券を「売る」側に所属し、調査した情報をレポートなどにまとめ、証券会社の顧客など外部向けに情報提供します。必要なスキルとしては、情報分析の精度はもちろん、レポートの見せ方や、顧客に情報提供するためのプレゼン能力等も重視される傾向にあります。
2つ目は、この記事で主に取り上げる“バイサイド・アナリスト”です。こちらは資産運用会社など証券を「買う側」に所属し、調査した情報は基本的に社内でのみ共有され、自社の資産運用の成果を向上させるためなどに活用されます。調査・分析結果が資産運用の成果にどれだけ貢献したのかが重視されるため、日夜分析精度の向上や、調査・分析の新しい切り口の発見に取り組んでいます。 資産運用会社では、ファンドマネジャーは自社のアナリスト(=上記のバイサイド・アナリスト)の調査・分析結果を重視しつつ、必要に応じてセルサイド・アナリスト等とも面談し、多面的な観点から情報を収集し、ファンドの運用に活かしています。

<イメージ図:セルサイド・アナリストとバイサイド・アナリストの関係図>
<イメージ図:セルサイド・アナリストとバイサイド・アナリストの関係図>

※上記はイメージ図であり、すべてを網羅したものではありません。

資産運用会社のアナリストの種類

一口にアナリストといっても、資産運用会社では、様々な種類のアナリストが調査・分析をおこなっています。以下、代表的なアナリストの種類について、紹介させて頂きます。なお、資産運用会社によっては、アナリストとファンドマネジャーを兼務している場合もあります。

①  株式アナリスト
主に株式に関する調査全般を担当しています。企業への取材や財務分析などを通して将来の企業業績を予想し、投資候補となりうる企業に関する情報をファンドマネジャーに提供します。国内株式や外国株式などの担当アナリストがいます。一般的に「アナリスト」というと、株式アナリストを指す場合が多いです。

②  クレジットアナリスト
主に債券に投資するファンドを念頭に、債券の発行体に関する情報の調査・分析を担当しています。たとえば、社債の発行体に関する調査の場合、株式アナリストと同じ企業を調査する場合もありますが、クレジットアナリストの場合は企業の信用リスク(=債券の元利金返済能力)の評価に重点をおく傾向にあり、着目するポイントや結論は株式アナリストと一致するとは限りません。

③  クオンツアナリスト
主に金融工学など数学的な手法を駆使した市場環境などの調査・分析を担当しています。投資信託の運用成績向上のための情報提供や新しい運用戦略の開発などをおこないます。ビッグデータやAIを資産運用にどう活用するかの研究・調査を担当している場合もあります。

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国内株式のアナリストはどのような調査をしているの?

ここからは、よりアナリスト業務について詳しく説明するため、国内株式のアナリストを例にどのような活動をおこなっているかについて紹介します。

  • 企業取材
    • アナリストは、調査を担当する投資先および投資候補先企業のIR*1担当部署や経営層と面談し、業績動向に限らず様々な観点から取材をおこない、今後の業績成長の可能性などを見極めます。
    • 多くの企業を取材しますが、特に注目している企業については、年に複数回取材を実施することもあり、投資チャンスにつながるようなわずかな変化も逃さないようにします。また、必要に応じて対象企業の取引先企業(未上場企業も含みます)の調査もおこなうことがあります。
    • 取材の際に重視するポイントは運用哲学*2等により異なりますが、たとえば直接企業に足を運ぶことで、従業員の働く様子や雰囲気を肌で実感し、「経営者の考えが従業員まで浸透しているか」「従業員のモチベーションが高く保たれているか」を推察することは、その企業のマネジメントの質を評価する上で貴重な判断材料となります。
    *1:Investor Relationsの略で、投資家向けの広報活動のこと。
    *2:投資哲学ともいう。各資産運用会社ごと、あるいは各投資信託ごとに示されている、投資に関する基本的な考え方のこと。
  • 決算発表への対応
    • 年に複数回ある企業の決算発表シーズンは、アナリストが最も多忙になる時期の一つです。
    • アナリストは、各企業が発行する大量の決算資料(財務諸表など)の分析のほか、決算説明会にも数多く参加するなどして、得た情報を整理します。
    • 各企業の戦略が現実に売上や利益といった数字となって表れてきているか、業績に変化の兆しはないかなど、多様な情報の獲得が期待できます。
  • 収集した情報を基にした議論
    • 企業取材や決算発表などで集めた情報は、タイムリーにファンドマネジャーに共有され、それを元に各企業や業種の今後の業績見通し、株価への影響などについて議論がおこなわれます。
    • こうした議論をおこなうため、運用チームにおいては年次やキャリア等関係なくアイデアを出し合える空気感の醸成が重要になります。
  • エンゲージメント
    • エンゲージメント活動は、資産運用者が、投資先企業に対しその企業価値向上や持続的成長を促すべく、中長期的な視点で対話や提案をおこなうことです。近年、E(環境)S(社会)G(ガバナンス)を考慮したESG投資が注目されつつあるなか、エンゲージメント活動は重要性を増しています。
    • エンゲージメント活動は、各資産運用会社のESG投資等の専門部署が対応するほか、日常的に企業と対話をおこない信頼関係を築いているアナリストも重要な担い手となっています。特に、企業の経営層に取材をおこなう際などには、投資家の目線から厳しい意見を提言することもあるなど、アナリストによるエンゲージメント活動は積極的におこなわれています。

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最後に

資産運用には膨大な量の情報が必要となりますが、その情報を調査・分析し、価値ある情報を見つけ出すアナリストは、投資信託の運用成果を支える重要な存在です。各アナリストは、知的好奇心の強さや情報分析力、自由な発想力を武器に日夜頭脳を働かせています。この記事が、投資信託の裏側にある、アナリストたちの情熱について少しでも興味を持つきっかけになれば幸いです。

※上記は一例であり、その内容のすべてを説明しているものではありません。

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