【社会保険シリーズ】公的年金に上乗せされる家族手当~加給年金額とは?
2026/06/19

年金不安が高まるなか、少しでも年金を増やしたい人の間で注目されるのが加給年金額です。加給年金額はリタイア後の家族手当と呼ばれてきましたが、共働き世帯が増加していることから加給年金額も今後縮小されることが予定されています。今回は、加給年金額の支給要件や気をつけなければならないポイントを解説します。
誰が加給年金額をもらえるのか?
加給年金額が加算されるのは、65歳以降の老齢厚生年金の受給権発生時点で厚生年金の被保険者期間が20年以上ある人が対象となり、もし仮に厚生年金の加入期間が20年に満たない場合であっても、在職定時改定時や退職改定時、70歳到達時に20年以上となっていれば、加給年金額が老齢厚生年金に加算されます。
加算の対象となるのは、老齢厚生年金の受給権者の「配偶者または子」で、老齢厚生年金を受給することとなった時に生計を維持されている場合(年収850万円未満など一定条件を満たす場合)に限ります。
配偶者が65歳に達すると加給年金額が加算されなくなります。つまり、配偶者自身の老齢厚生年金や老齢基礎年金を受給できれば家族手当は不要になるという考え方です。また、配偶者が一定以上の老齢厚生年金を受け取れる場合は加給年金額が支給停止となります。具体的には、配偶者の厚生年金被保険者期間が20年以上ある場合、老齢厚生年金を受給できるようになると加給年金額は支給停止となります。よって、配偶者が被保険者期間20年以上ある特別支給の老齢厚生年金を受給できる場合は、配偶者が65歳前であっても加給年金額は支給停止となります。また、配偶者が障害厚生年金や障害基礎年金を受給できる場合も、同様に支給停止となります。
子は18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間か、または20歳未満で障害等級1級または2級の障害状態に該当している場合に加給年金額が加算されます。
会社員の夫と5歳年下の専業主婦の妻という夫婦の場合、下図のように夫が65歳から老齢厚生年金の受給を始めれば、夫が70歳(妻が65歳)になるまで加給年金額が加算されます。加給年金額はあくまでも老齢厚生年金に加算されるのであって、老齢基礎年金に加算されるわけではありません。
【65歳から老齢厚生年金を受給した場合の加給年金額】

では、加給年金額の金額について見てみましょう。
配偶者の加給年金額の加算額は、年額224,700円×改定率(100円単位)となります。なお、この改定率は、老齢厚生年金の新規裁定者に係る改定率の改定ルールが適用されることになっています。
また、配偶者が加算対象となる場合には、通常の加給年金額に特別加算額が年額165,800円×改定率(100円単位)加算されます。この特別加算額は、夫婦ともに65歳以上の世帯の年金水準との格差を縮めるために行われています。
この結果、令和8年度の加給年金額は年額243,800円、特別加算額が年額179,900円(老齢厚生年金の受給権者の生年月日が昭和18年4月2日以後)、合計で年額423,700円となります。
では、子が加算対象となる場合の加給年金額についても解説しましょう。
子の加給年金額は、2人目までは各224,700円×改定率、3人目からは各74,900円×改定率となります。もし、65歳になっても18歳未満の子(養子を含む)がいる場合、老齢厚生年金に子の加給年金額が加算されます。
令和8年度の子の加給年金額は、1人目と2人目の子は年額で各243,800円、3人目以降の子は年額で各81,300円となっています。
2028年4月から加給年金額が見直しへ
今後の動向を見てみると、2025年の年金制度改正(2028年4月施行予定)によって配偶者の加給年金額は縮小され、子の加給年金額は拡大されるという方向で見直されます。ただし、すでに配偶者の加給年金額が加算されている人については縮小されることはありません。あくまでも2028年4月以後に加算対象となる場合に限られます。
変更後の加給年金額は以下の通りです。
①配偶者加給年金額は約1割減額
2028年4月からは年額367,200円(2024年度価格で換算)に約1割減額され、今後もさらなる縮小が議論される可能性はあります。
②子の加給年金額は大幅拡充
2028年4月からは年額で全員一律281,700円(2024年度価格で換算)となります。また、老齢厚生年金の受給権者の厚生年金加入期間の要件も20年以上から10年以上に短縮される予定です。
老齢厚生年金の受給開始時期は加給年金額も考慮すべし
ここで会社員の夫と専業主婦の妻を例に、老齢厚生年金の受け取り時の注意点を考えてみます。
下図のように、老齢厚生年金を支給繰上げした場合でも65歳に達するまで加給年金額は加算されません。仮に老齢基礎年金を支給繰下げしても、老齢厚生年金を65歳から受給すれば、加給年金額も65歳から加算されます。
一方で、老齢厚生年金の支給繰下げをしている間、加給年金額は支給停止となり、老齢厚生年金額は支給繰下げをして増額しても、加給年金額は増額されません。支給繰下げの場合は加給年金額の加算の有無も考慮したいポイントです。
【老齢年金を繰上げ・繰下げした場合の加給年金額】

最後に、配偶者が65歳になると、老齢厚生年金に加給年金額は加算されなくなりますが、1966年4月1日までに生まれた人の場合は、配偶者自身の老齢基礎年金に振替加算が行われます。
振替加算は、配偶者自身の老齢厚生年金が少ない人の老後生活を支えるために作られました。1986年の改正で国民年金第3号被保険者が義務化されたことに伴って、生まれ年が遅いほど振替加算の額は縮小されています。ちなみに、振替加算の額は、今後65歳を迎える人は年額で16,335円(令和8年度)となります。
いかがだったでしょうか?
配偶者の加給年金額は「ねんきん定期便」には記載されておらず、老齢厚生年金の受給時に請求することが必要となっていますので、もし加算されていない場合は5年以内に請求すれば受け取ることができますので、自分が該当するかどうか確認しておくことをおすすめします。
(執筆 : 花村 泰廣)





