【20代から考えるリタイアメントプランニング⑫】リタイアメントプランを具体的に考えよう③
2026/08/07

これまで2回にわたり、リタイアメントプランニングの「4ステップ」【図表1】のうち、Step3までを確認してきました。ここまでのケーススタディの流れを振り返ると、【図表2】のようになります。
【図表1】リタイアメントプランニングの4ステップ(再掲)

【図表2】Step1~Step3のまとめ

ケーススタディでは、老後資金を準備するために毎月約6.5万円の積立が必要という結果になりました。今回は最後のステップとして、「どのように資産形成をするのか」を考えていきます。
Step4-1.退職給付制度を確認する
具体的な資産形成の方法を考える前に、まず確認したいのが、勤務先の退職給付制度です。会社の退職給付制度も、老後資金を構成する重要な要素になります。勤務先の制度内容を確認し、どの程度の退職給付を受給できるか把握してみましょう。退職金の全体像については第5回のコラムをご参照ください。
厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」によると、約75%の企業には退職給付制度が存在します。また、退職給付制度には退職一時金と企業年金がありますが、退職給付制度がある企業のうち、約69%の企業は退職一時金のみを採用しています。退職一時金のみの企業における、勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者(大学・大学院卒)の平均退職給付額は1,822万円です。
この数値を参考に、ケーススタディでは退職給付として一時金1,822万円を受け取れると仮定します。22歳で入社し60歳で定年退職を迎える(勤続38年)とすると、会社が毎月約4万円(=1,822万÷38年÷12カ月)積み立てている計算になります。Step3で毎月必要な積立額を6.5万円と試算したので、自分自身で準備する必要額は毎月2.5万円(=6.5万円-4万円)となります。
Step4-2.どのような制度を使うのか考える
次に、自分で老後資金を準備する場合、「どの制度を活用して運用していくか」を考えます。代表的な税制優遇制度として、 NISA(少額投資非課税制度)とDC(確定拠出年金)制度があります。DC制度には、個人が自助努力で掛金を拠出できる仕組みとして、iDeCo(個人型確定拠出年金)、マッチング拠出、選択制DCがあります。なお、マッチング拠出と選択制DCは、勤務先に企業型DCがあり、勤務先がそれらの制度を導入している場合にのみ利用できます。それぞれの特徴は【図表3】の通りです。
【図表3】NISAとマッチング拠出、選択制DC、iDeCoの違い

(出所)各種資料よりアセットマネジメントOne作成
DC制度は老後資金づくりを目的とした制度であり、原則60歳まで引き出すことはできません。一方で、掛金拠出時の掛金が全額所得控除など、大きな税制優遇を受けられることが特徴です。詳しくは、第6回のコラムもご参照ください。老後資金の準備という目的に限定すると、DC制度は非常に有効な選択肢といえるでしょう。特に、勤務先でマッチング拠出と選択制DCが導入されている場合は、会社がそれらの制度の手数料を負担してくれるため、より効率的に資産形成ができる可能性があります。
一方で、 NISAは株式や投資信託などの投資による資産形成を支援する制度です。運用益が非課税でありながら、必要なときに引き出せる柔軟性があります。ただし、NISAは投資を前提とした制度であるため、DCでは運用可能となっている定期預金や保険商品などの元本確保型の商品は選択できません。
制度選びは、自分の性格や抱える不安に合わせて考えることがおすすめです。例えば、「老後資金としてしっかりと鍵をかけて運用したい」、「いつでも引き出せると使ってしまいそう」という方には、DC制度の利用が向いています。逆に「60歳まで引き出せないのは、何かお金が必要になった時に不安だ」と感じる人は、NISAを利用するとよいでしょう。また、会社に退職給付制度がない場合は、退職金の代わりとして、iDeCoを活用して積立額の一部を「老後資金として確実に積み立てる」設計にすることも選択肢です。
ケーススタディでは、25歳の設定ですので、当面は「必要なときに引き出せる」という柔軟性を優先し、毎月2.5万円をNISAで積み立てることにします。
Step4-3.どのような運用をするのか考える
最後に考えるのが、積み立てるお金をどのように運用するかです。
前回のコラムでは、バランス型運用の平均的な利回りとして年率4%を前提に試算を行いました。しかし、実際の運用成果は選ぶ商品によって大きく異なります。20代から老後資金を準備する場合、運用期間は30年以上に及ぶことが前提になります。長期間かつ積立投資での運用が可能であれば、短期的な市場変動に過度に左右されず、リスクをある程度とることが可能であるため、例えば、国内外の株式に幅広く分散投資する投資信託は有力な選択肢となります。一方で、「価格変動が気になる」という方もいるでしょう。そのような場合は、株式と債券を組み合わせたバランス型ファンドや、年齢に応じて資産配分が自動的に調整されるターゲットイヤーファンドなどを活用する方法もあります。
また、年齢とともに資産配分を見直すことも大切です。例えば、20代・30代では成長性を重視した運用を行い、50代以降は徐々に値動きの安定した資産の割合を高めることで、積み上げた資産を守りながら取り崩し期に備えることができます。
重要なのは、「どの商品が最も値上がりするか」を予想することではありません。毎月積み立てを継続し、長期間運用することこそが、リタイアメントプランニング成功の鍵だと筆者は考えます。運用方法については、第7回のコラムもご参照ください。
ケーススタディでは、運用期間が35年(25~60歳)あるので、国内株式に投資する投資信託と外国株式に投資する投資信託を組み合わせて運用することにします。

これまで3回にわたり、ケーススタディを用いてリタイアメントプランニングの4ステップを見てきました。20代にとって老後はまだ遠い未来に感じられるかもしれません。しかし、資産形成において最大の武器は「時間」です。早く始めるほど複利の効果を活かしやすく、効率よく老後資金を準備することができます。 また、リタイアメントプランは一度作って終わりではありません。結婚、住宅購入、転職などのライフイベントに合わせて見直しながら、自分に合ったプランへと育てていくことが大切です。ぜひ皆さんも、自分のキャリアデザインやライフデザインを考えながら、一度リタイアメントプランを作成してみてください。その一歩が、将来の安心につながるはずです。
(執筆: 五十嵐 さやか)





