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【調査レポート】子どものお金に関する学びについて親の認識は?
~「親子金融リテラシー調査」(2024年)より③~

2024/12/03

前回のレポートでは、親がどのような金融リテラシー(お金に関する知識・判断力)を身につけていて、今後何を高めたいと考えているのか、また子どもにはどのような金融リテラシーを身につけてほしいと考えているのかについてご紹介しました。親は子どもに幅広い金融リテラシーの習得を望んでいることが分かりました。今回は、子どものお金に関する学びについて、親がどのように考えているのか、アンケート結果をもとにご紹介します。

お金についての授業が行われていることを知らない親が多い

学校におけるお金についての授業の認知度は、【図表1】の通りです。大半(60.5%)の親が、お金についての授業が行われていることを「知らなかった」と回答していました。

【図表1】

お金についての授業が行われていますが、知っていましたか

お金についての授業が行われていますが、知っていましたか

質問:現在小・中・高校でお金についての授業が行われていますが、知っていましたか。(単一回答形式)

大半の親がお金についての授業が行われていることを知らなかった一方で、【図表2】を見ると、55.8%の親が「お金の授業は重要であり、学校でしっかり行ってほしい」と回答しています。「お金に関する授業はある程度行ってほしいが、それほど時間を割く必要はない」と合わせると、80%の親が学校に対して一定以上のお金に関する授業を行うことを望んでいました。

【図表2】

お金についての授業が行われていることについて、どうお考えですか

お金についての授業が行われていることについて、どうお考えですか

質問:現在小・中・高校でお金についての授業が行われていることについて、どのようにお考えですか。あなたのお考えに最も近いものを教えてください。(単一回答形式)

また、子どもが通う教育機関別に、親がお金についての授業に対してどう考えているのかを見た【図表3】では、子どもの年齢層(≒子供が通う教育機関)に関わらず、お金の授業は重要という回答が多く、子どもの年齢が進むにつれてその割合は上昇していました。

【図表3】

【子どもが通う教育機関別】
お金の授業が行われていることについて、どのようにお考えですか

【子どもが通う教育機関別】 お金の授業が行われていることについて、どのようにお考えですか

※複数の子どもがいる場合は最も年齢の高い子どもについて

質問:現在小・中・高校でお金についての授業が行われていることについて、どのようにお考えですか。あなたのお考えに最も近いものを教えてください。(単一回答形式)

【図表4】は親の金融リテラシー別に、親がお金についての授業に対してどう考えているのかをまとめたものです。親の金融リテラシーが高いほど、学校の授業への期待が高い傾向にありました(①)。なお、自身に金融リテラシーがあるとまったく思っていない親(「まったくそう思わない」と回答)の三分の一近くは、お金の授業に対して関心を示していませんでした。

【図表4】

【親の「金融リテラシー」水準別】
お金の授業が行われていることについて、どのようにお考えですか

【親の「金融リテラシー」水準別】 お金の授業が行われていることについて、どのようにお考えですか

※複数の子どもがいる場合は最も年齢の高い子どもについて

前回までの「親子金融リテラシー調査」に関するレポートからも、多くの親が、子どもが金融リテラシーを身につけることを望んでいることが見てとれました。親はお金に関する教育の重要性を認識していますが、その教育の場として、学校での授業を望んでいました。しかし、多くの親はお金についての授業が実際に行われていることを知らないというギャップが存在していました。

実践的なお金に関する学びは家庭を中心に

以上のように、親は子どもが金融リテラシーを身につける場として、学校に期待していますが、学校の先生はどのように考えているのでしょうか。ここで、教員向け研修(過去のレポート参照)の中で、小学校教員の皆さんからいただいた感想やご意見をお示しします。

【図表5】

①学校でのお金の学びに関する事例
  • 低学年の生活科の中で、お買い物ごっこを行う。
  • 社会科で、文化を調べる授業の中に社会科見学があり、現地で実際にお買い物をするという学びがある。
  • 係活動を会社の活動と組み合わせて教えている先生がいる。例えば、新聞係は新聞会社となり、児童が見たい記事を書いたら模擬のお金を読者からもらう。それぞれの係活動とお金を結び付けて、仕事とお金について教えている。
  • 外部講師を招いて授業を行うことがある。
【事例】
- 金融機関の講師に経済について説明してもらい、その後の授業で「株式学習ゲーム」を通して社会を良くする企業はどのような企業なのかを調べて、模擬投資を行い、経済や社会への関心を高める取り組みを行った。
- 税理士の講師に、世の中に税金がないとどうなるのかというテーマで動画なども交えて説明してもらう授業を行った。
②お金に関する授業の課題
  • 授業時間の確保が難しい。
  • 先生自身が金融知識に自信がない。専門知識をもっていない。
  • 難しい言葉が多いため、子どもに伝わりにくい。
  • お金は親が働いて稼いだものであること、お金は大切なものという感覚を理解していない子どもも少なくない。
  • 子どもたちにとって分かりやすい教材、身近な問題として示してくれる教材がない(知らない)。忙しいためオリジナルの教材を作るのは困難。
  • 電子マネーが普及したことでお金のリアル感が薄れている。
  • それぞれの家庭によって経済環境が異なるため、一律の授業では、皆が実感できるように伝えることが難しい。
③お金の学びについて重要だと思う事
  • 子どもに対してのお金の実践は家庭で学ぶことが重要。
  • 家庭と学校での学びをつなげることが重要。保護者の方に学校の授業で行っている内容を知ってもらい、家庭で実践してほしいことを伝えるような取り組みも必要。
  • 子どもたちに金融リテラシーを身につけさせるためには、教員自身が金融リテラシーの必要性を認識し、金融の基礎知識を理解することも重要。

【図表5】①のように、教育現場ではいろいろと工夫してお金に関する授業が行われていました。その一方で、授業を行う上での多くの課題が挙げられました。(【図表5】②)
また、お金の学びについては、「家庭での教育が重要である」という意見が多くありました。その理由は、「学校では授業時間を確保するのが難しい」や「学校では実践的な教育が難しい」というものでした。そのため、「家庭と学校でのお金の学びをつなげることが重要である」という意見もありました。前述のように、多くの親は、学校でお金についての授業が行われていることを知らなかったので、学校で何を教えているのかを親にも知ってもらうことが大切です。学校で教えられることは学校で行い、家庭で実践するべきことは各家庭に合わせて行う、という組み合わせが重要になります。

日常生活ではぐくむ金融リテラシー

子どもが金融リテラシーを身につけるには、日常生活での実践的な学びが重要です。 例えば、子どもにお小遣いを与え、その使い方を親子で一緒に考えたり、お小遣い帳をつけたりすることで、「お金の賢い使い方・節約」や「お金の貯め方」、「家計の管理」といった金融リテラシーを学ばせることができます。お小遣いを、お手伝いをした時に与えるなど、報酬制にすることで、「お金の稼ぎ方」や「お金の大切さ」などの理解が深まるでしょう。また、学校で学んだ内容について親子で会話をすることで、その学んだ内容をより「自分ごと化」させることができます。
親が積極的に子どものお金の学びに関わることで、学校での学びと家庭での実践が組み合わさり、より効果的に金融リテラシーを身につけることができます。親自身も金融リテラシーを高めることで、子どもに対して適切に教えることができるようになるでしょう。

(執筆 : 坂内 卓)

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