アセットマネジメントOne 未来をはぐくむ研究所

【調査レポート】親と子どもの金融リテラシーは?
~「親子金融リテラシー調査」(2024年)より①~

2024/10/31

アセットマネジメントOne 未来をはぐくむ研究所では「親子金融リテラシー調査」を行いました。子どもを持つ親自身と、その親から見た子どもの金融リテラシー(お金に関する知識・判断力)を調査するため、本年3月に、小学生から大学生の子どもがいる全国の20歳以上の男女2,000人にWEBアンケートを実施しました。

【調査結果】親と子どもの金融リテラシーに関するアンケート「親子金融リテラシー調査」を実施

また、本年8月に小中学校教員を対象にお金に関する研修(※1参照。以下、教員向け研修)を行った際に、教員向け研修のカリキュラムの一環として、「親子金融リテラシー調査」の結果を紹介しました。教員の皆さんからいただきました感想やご意見も交えつつ、調査結果を3回のシリーズでご紹介します。初回は「親とその子どもの金融リテラシー」の現状について概要をお伝えします。

※1 ニュースリリース:「教員の民間企業研修」をアセットマネジメントOneで実施

【親自身の金融リテラシー】
多くの親が自分の「金融リテラシー」に対して自信を持っていない

子どもを持つ親自身の金融リテラシーは【図表1】のとおり、「強くそう思う」「そう思う」を合算した値(25.4%)よりも、「あまりそう思わない」「まったくそう思わない」を合算した値(36.4%)が上回り、金融リテラシーに自信のない人の方が多いようです。

【図表1】

ご自身に「金融リテラシー」はあるほうだと思いますか

ご自身に「金融リテラシー」はあるほうだと思いますか

質問:ご自身に「金融リテラシー」はあるほうだと思いますか。(単一回答形式)

同じ質問結果を、保有する金融資産別(【図表2】)にまとめると、金融資産の保有額が5,000万円以上の人の6割以上(60.7%)、1,000万円以上5,000万円未満の人も半数近く(46.4%)が「金融リテラシーがあると思う」と回答しています。金融資産の保有額と金融リテラシーに対する自信は連動している傾向にあります。

【図表2】

【保有金融資産別】 「金融リテラシー」はあるほうだと思いますか

【保有金融資産別】 「金融リテラシー」はあるほうだと思いますか

質問:ご自身に「金融リテラシー」はあるほうだと思いますか。(単一回答形式)

教員向け研修でも同様の内容で研修前にアンケートを取ったところ、教員の皆さんの回答は以下の通りでした。

【図表3】

現在、ご自身の金融知識はどの程度あると思いますか? 回答
ある 4%
どちらかといえばある 20%
どちらかといえばない 28%
ない 48%

(回答数:25、「どちらともいえない」の選択肢はなし。)

4分の3の教員が、「金融知識がない」(「どちらかといえばない」+「ない」を合算)と感じていました。教育現場における金融経済教育の課題の一つに、「教員自身が金融知識に対する自信がない」ことを挙げた方もいました。

【子どもの金融リテラシー】
多くの親が子どもに対して金融リテラシーが備わっていないと感じている

一方、親が思う子どもの金融リテラシーは【図表4】の通り、半数近く(48.6%)が「金融リテラシーがあると思わない」と感じていました。また、【図表5】では、約4分の3(74.2%)の親が「子どもに金融リテラシーを身につけてほしいと思う」と回答しています。多くの親が、子どもが金融リテラシーを身につけることの重要性を感じています。

【図表4】

お子さまは「金融リテラシー」はあるほうだと思いますか

お子さまは「金融リテラシー」はあるほうだと思いますか

質問:お子さまは「金融リテラシー」はあるほうだと思いますか。(単一回答形式)
※複数のお子さまがいらっしゃる場合は最も年齢の高いお子様について教えてください。

【図表5】

お子さまに「金融リテラシー」を身につけてほしいと思いますか

お子さまに「金融リテラシー」を身につけてほしいと思いますか

質問:お子さまに「金融リテラシー」を身につけてほしいと思いますか。(単一回答形式)
※複数のお子さまがいらっしゃる場合は最も年齢の高いお子様について教えてください。

次に、親の金融リテラシー別に、どの程度子どもに対して金融リテラシーを身につけてほしいのかをまとめたのが【図表6】です。 親の金融リテラシーが高いほど、子どもに対して金融リテラシーを身につけてほしいと強く考えていることが分かります。特に金融リテラシーに自信のある親(「強くそう思う」と回答)は、子どもに対しても期待が高いようです。しかし、その一方で、自身の金融リテラシーについて「あまりあると思わない」「まったくあると思わない」と回答した親も、子どもには金融リテラシーを身につけてほしいと考えている割合が半数以上という結果となるなど、自身の金融リテラシーの有無に関わらず、多くが子どもに金融リテラシーを身につけることを望んでいました。

【図表6】

【親の「金融リテラシー」水準別】 お子さまに「金融リテラシー」を身につけてほしいか?

親の「金融リテラシー」水準別】 お子さまに「金融リテラシー」を身につけてほしいか?

質問:お子さまに「金融リテラシー」を身につけてほしいと思いますか。(単一回答形式)
※複数のお子さまがいらっしゃる場合は最も年齢の高いお子様について教えてください。

また、教員向け研修でも似たような内容で研修前にアンケートを取ったところ、教員の皆さんの回答は以下の通りでした。

【図表7】

金融経済教育を小学生に教えることの重要性はどの程度だと思いますか? 回答
重要 46%
やや重要 46%
あまり重要でない 8%
必要ない 0%

(回答数:26、「どちらともいえない」の選択肢はなし。)

親が子どもに対して金融リテラシーを身につけてほしいと思っているのと同様に、教員の皆さんの大多数が、金融経済教育を小学生から教えることは重要だと感じていました。

キャッシュレス化が進む中での子どもの金融リテラシー教育

【図表8】では、子どもが使用している金融サービスを調べました。中学生以下では特定の金融サービスを使っておらず、「現金のみ」の回答が半数以上を占めています(①)。
しかし、子どもの年齢が上がるにつれて「電子マネー」や「バーコード決済」の使用割合が高くなっていることが分かります(②)。特に交通系の電子マネーなどは小学生であっても一般化し、「目に見えないお金」でのやりとりが進む中で、お金の増減を実感しにくくなったことも、親が子どもに金融リテラシーを身につけさせたいと考える要因の一つと考えられます。

また、教員向け研修の中では、「以前は、実際のお金を使ってお店で買い物を体験することでお金について教える授業を行っていたが、キャッシュレス化が進んでそういった授業が難しくなった」「支払いが簡単すぎて、お金の価値に対する理解が低下しているかもしれない」といった声が寄せられました。親や教員の世代にはキャッシュレス化が今ほど進んでいなかったため、金融サービスの多様化が進む中で子どもにお金について教えることも難しくなってきています。

【図表8】

【子どもが通う教育機関別】 お子さまが使っている金融サービスを教えてください

【子どもが通う教育機関別】 お子さまが使っている金融サービスを教えてください

質問:お子さまが使っている金融サービスを教えてください。(複数選択形式)
※複数のお子さまがいらっしゃる場合は最も年齢の高いお子様について教えてください。

今回のアンケート結果から、親自身の金融リテラシーに対する自信の低さや、子どもへのお金に関する教育の重要性が伺えました。
キャッシュレス化の進展により、お金の価値を実感しにくくなっている中、子どもへの金融経済教育がますます重要となっています。しかし、授業時間が限られている中での優先順位、教員の金融リテラシー水準のバラツキ、子どもの家庭環境の多様性といった理由から、学校での金融経済教育にも限界があります。特に、子どもは親のお金の使い方や日常の何気ないやりとりを見ながら育つため、親自身が金融リテラシーを身につけることも重要です。親が自らの金融リテラシーを向上させることで、子どもに対してより良い影響を与えることが期待されます。

次回のレポートでは、「親が既に身につけている金融リテラシー」や「親が高めたいと考えている金融リテラシー」、さらに「親が子どもにどのような金融リテラシーを身につけてほしいと考えているのか」についての調査結果をご紹介します。

(執筆 : 坂内 卓)

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