【特別寄稿】
なぜ、今、「資産運用立国」なのか ④
2025/01/09

投資を巡るインベストメント・チェーンとは何であろうか?
一言でいえば、資金の拠出者から、資金を最終的に事業活動に使う企業に至るまでの経路及び各機能のつながりのことである。ここでは、最も個人投資家に身近な商品である投資信託を例にとって考えてみよう。
まず、家計には、2,179兆円※を超える金融資産があり、その半分は預金等に預けられている。
これに対して、証券会社や銀行という金融機関が投資信託という商品を個人投資家である家計に勧誘をし、販売をする。こうして販売をされた投資信託という商品により、運用資金が集められ、それは資産運用業者により、その投資信託商品に定められた投資運用方針に沿って運用されることになる。
※日本銀行「資金循環統計(速報)(2024年第3四半期)」
金融商品が株式投資信託の場合には、資産運用業者は一般的に証券取引所に上場されている株式を買い付け、上場企業に資金を投資する。 資金を投資された企業は、その資金を、例えば設備投資とか、他の企業の買収など、更なる企業の成長や業績伸長の為に使用する。こうして企業が成長したり業績が伸長すれば、その成果を賃金の上昇や配当の増額などで還元する。
この結果、家計である個人投資家にも、賃金所得や資産所得が増加する形で恩恵が及ぶことになる。これが、成長と分配の好循環である。
ここでは、投資信託という金融商品を例にとって説明をしたが、他にも例えば年金の為にお金を支払い、年金基金等が受託者責任に基づいて資産運用業者に運用を委託し、その成果を受益者に還元するというルートもある。こうした年金等をアセットオーナーと呼ぶ。
こうした流れを簡単に図示したものが、下記である。
【インベストメント・チェーンの例】
日本版金融ビッグバンは、インベストメント・チェーンのうち、主として金融機関の商品・ビジネス・価格の自由化と、市場の機能の向上に焦点を当てたものであった。 その後、金融庁は、東京証券取引所や経済産業省など他の関係省庁と連携をし、インベストメント・チェーンを対象とした施策を、包括的かつ幅広く取り組んでいくことになる。
(執筆 : 森田 宗男)