アセットマネジメントOne 未来をはぐくむ研究所

【特別寄稿】
なぜ、今、「資産運用立国」なのか ②

2024/05/20

「貯蓄から投資へ」という政策は、古くは戦後間もない証券民主化運動にも遡る息の長い政策課題である。
また、故・松下幸之助氏も、1967年には、国民が株式に投資をすれば株式から受ける利益だけではなく、産業が興隆し社会が繁栄する恩恵も受けることができ、言わば二重の利益を得ることができるので、「極言すれば、国民のすべてがどこかの会社の株主であるというようなところまでもっていければ、これにこしたことはないと思うのである」と書いている。
これなどは、自民党の経済成長戦略本部が提言した「一億総株主」の構想に繋がる発想と言えよう。

更に、約25年前のいわゆる「日本版金融ビッグバン」構想当時の橋本総理大臣の指示においても、「21世紀の高齢化社会において、我が国経済が活力を保っていくためには、国民の資産がより有利に運用される場が必要であるとともに、次代を担う成長産業への資金供給が重要」という基本的な問題意識が示されていた。
この「日本版金融ビッグバン」構想は、フリー、フェア、グローバルの3原則に照らして必要と思われる改革は全て実行するとの考え方の下、徹底した構造改革を行い、2001年には東京市場をニューヨーク、ロンドン並みの国際資本市場とすることを目指したものであった。
今では当たり前になった、株式売買委託手数料の完全自由化、証券会社の免許制から登録制への移行、銀行持株会社の解禁、銀行等の投資信託の窓口販売の解禁、外国為替業務の自由化などは、全てこの改革の下で行われたものである。
その結果、それまで欧米の政府から「自国の金融機関が日本市場で活躍できるように、閉鎖的な日本の金融規制を緩和しろ」という強い要求があったが、この改革を契機として、そうした声は殆ど聞かれなくなった。
それほどまでの改革を行ったのに、何が足りなかったのかを次に考えてみたい。

(執筆 : 森田 宗男)

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