【調査を読み解くシリーズ】日本人の生活満足度は10点中5.79!お金の不満は大きな課題?
2025/11/14

「調査を読み解く」シリーズの第7回です。今回のコラムでは、生活の満足度とお金との関係に関するデータを見ていきたいと思います。
日本人の生活満足度は?
2025年9月30日、内閣府が「満足度・生活の質に関する調査報告書2025」を公表しました。この調査は、国民の満足度(ウェルビーイング※1)の観点から日本の経済社会の構造を多面的に把握し、政策運営に活かしていくことを目的としています。2019年から毎年実施されており、2025年調査(2025年3月実施)は第7回目となります。
※1:調査報告書では”Well-being”と記載されているが本コラムでは「ウェルビーイング」と表記する。
調査対象は約1万人で、総合的な生活満足度や13項目の分野別満足度について、「全く満足していない」を0点、「非常に満足している」を10点として、自分は何点くらいだと思うか質問をしたものが主な調査項目となっています。
まず、【図表1】の総合的な生活満足度を見てみると、全体の平均は5.79でした。昨年の調査からは0.10ポイント低下しましたが、調査開始以来5.80前後で推移しています。コロナ禍の自粛ムードだった2021年や2022年でも5.70以上を維持しているのは意外に思われますが、この時期はこの時期で、新しい生活様式に柔軟に適応できた人が多かったのではないかと考えられます。 なお、男女別に見ると、生活満足度は女性の方が男性より高い傾向にあることが分かります。
【図表1】
生活満足度の推移

出所:内閣府「満足度・生活の質に関する調査報告書2025~我が国のWell-beingの動向~」のデータを基にアセットマネジメントOne作成
【図表2】では、年齢階層別や地域別、雇用形態別といった属性別の生活満足度を示しています。年齢階層別では65歳以上が6.51と突出しており、40歳~64歳の層と約1ポイントもの差があります。地域別では地方圏に対して都市圏の方がやや高く、雇用形態別では正規雇用の方が高い結果となっています。過去の調査においても同じ傾向が見られます。
【図表2】
属性ごとの生活満足度

出所:内閣府「満足度・生活の質に関する調査報告書2025~我が国のWell-beingの動向~」のデータを基にアセットマネジメントOne作成
全体の生活満足度は5.79でしたが、その点数の分布を示したものが【図表3】です。棒グラフが全体の分布、折れ線グラフが年齢階層別の分布を表しています。全体では5点~8点に点数が集中しています。中間が5点なので、イメージとしては生活に対して「普通」~「かなり満足」と感じている人が約3分の2を占めています。年齢階層別に見ても、39歳以下、40歳~64歳の層はおおむね同じ形状の分布であることが見て取れます。一方、65歳以上については8点の回答割合が最も多く、7点と8点を合わせると約半数となり、高齢層の生活満足度が比較的高いことが分かります。
【図表3】
生活満足度の点数別の分布|年齢階層別

出所:内閣府「満足度・生活の質に関する調査報告書2025~我が国のWell-beingの動向~」のデータを基にアセットマネジメントOne作成
お金の満足度を高めることの重要性
国民の生活満足度は調査開始の2019年からそれほど大きな変動は見られず、点数の分布を見ると、おおむね良好に感じている人が多いように見受けられました。
また、本調査では生活全体について問う生活満足度を客観的指標と結びつけるよう、13 の分野について満足度を尋ねています。分野別満足度の平均を表したものが【図表4】です。多くの分野は5点台を示しているものの、中には4点台の分野もあります。最も低いのが「政治・行政・裁判所への信頼性」で4.37、次いで「介護のしやすさ・されやすさ」(4.82)、「雇用環境と賃金」(4.92)、「家計と資産」(4.96)といった4つの分野が5点未満の低水準に留まっていました。
【図表4】
属性ごとの生活満足度

出所:内閣府「満足度・生活の質に関する調査報告書2025~我が国のWell-beingの動向~」のデータを基にアセットマネジメントOne作成
さらに、これら13分野が生活満足度にどの程度影響しているかを表したものが【図表5】です。最も係数が大きいのが、「生活の楽しさ・面白さ」であり、以降は「家計と資産」、「住宅」、「健康状態」が続きます。
この係数の見方としては、例えば、「住宅」(係数=0.104)の満足度が1点上昇した場合、生活満足度が0.104点増えるという関係性のイメージです。係数が大きい分野ほど生活満足度に対する影響が強いと考えられます。
【図表5】
属性ごとの生活満足度

出所:内閣府「満足度・生活の質に関する調査報告書2025~我が国のWell-beingの動向~」のデータを基にアセットマネジメントOne作成
※生活満足度を13の分野別満足度で重回帰分析した結果
※絶対値の大きい順の「生活の楽しさ・面白さ」~「生活を取り巻く空気や水などの自然環境」の分野はそれぞれ1%で有意
※()括弧内の数値は分野別満足度の値
ここで注目したいのは、「家計と資産」の満足度が5点未満と不満寄りである一方で、生活満足度に対する影響が大きい点です。「家計と資産」に対する不満を解消し、この分野の点数を引き上げることが、生活満足度全体の改善につながると考えられます。
調査票(アンケートの質問項目)では、「家計と資産」を説明する項目として、以下が挙げられています。
- 世帯の現在の総収入額(年金を含む)
- 世帯の現在の総支出額
- 世帯の現在の金融資産(預貯金や有価証券等)の額
- 世帯の現在の借金の額
- 生活の程度(社会の中での上流、中流、下流の位置づけ)
- 将来の収入(所得、年金などの見込み)
- 将来の負担(税金、医療費、保険料の増加などの見込み)
- 物価の変動
現在の家計や資産の状況だけでなく、将来の家計の見込みに関しても言及されています。現在および将来にわたるお金に関する項目が良好である状態(「家計と資産」の点数が高い状態)は、ファイナンシャル・ウェルビーイング(※2)が実現できている状態と言えます。
調査結果より、「家計と資産」といったお金に関する分野への不満が、生活満足度に一定の影響を与えていることが分かりました。健全な家計管理や資産形成、そして将来に対する安心感を高めることが、生活満足度の向上につながると考えられます。
一人ひとりがファイナンシャル・ウェルビーイングを実現することで、より豊かで満足度の高い生活の実現が期待されます。
※2:J-FLEC(金融経済教育推進機構)による「ファイナンシャル・ウェルビーイング」の説明
自らの経済状況を管理し、必要な選択をすることによって、現在及び将来にわたって、経済的な観点から一人ひとりが多様な幸せを実現し、安心感を得られている状態
(執筆 : 坂内 卓)



