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【投資の基本と実践⑧】分散投資を理解する

2025/12/05

投資の基本は「長期・積立・分散」投資です。今回は、「分散」について解説します。分散投資は、投資する資産や地域を分散させることで、リスクを分散し、安定したリターンを目指す方法です。「卵を一つのカゴに盛るな」という表現に象徴されるシンプルな考え方ですが、実践するには難しい部分もあります。

分散投資の基本を理解する

分散投資は、投資資金を一つの資産や銘柄に集中させず、複数の資産や地域に分けることで、リスクを減らし、安定したリターンを目指す投資方法です。以下の3つの分散方法が基本です。

    1. ①何に投資するか(資産の分散)
      株式や債券、不動産・不動産投資信託、コモディティ(金や原油など)など、異なる種類の資産に投資することでリスクを分散します。ただ、シンプルでわかりやすい資産の分散は、日本株式、外国株式、日本債券、外国債券の4つの資産だと考えます(不動産・不動産投資信託、コモディティなどの資産に投資をする場合は一定の勉強が必要です)。また、株式や債券などは個別銘柄に投資するのではなく、市場全体の値動き(東証株価指数やS&P500などの指数)に連動する商品に投資する方がリスクを抑制できます。一般的に個別銘柄の価格変動は大きく、リスクがその銘柄だけに集中してしまうからです。
    2. ②どこに投資するか(地域の分散)
      日本国内だけでなく、外国の市場にも投資することで、特定の国や地域の経済的なリスクを軽減できます。例えば、米国市場、欧州市場、新興国市場など、異なる地域に投資資金を配分することが考えられます。代表的な世界株式の指標である「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」に占める日本の割合は【図表1】にある通り5%程度であり、経済がグローバル化していることなどを考えると外国市場への投資の重要性は増しています。

【図表1】MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスの国別ウェイト

【図表1】MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスの国別ウェイト

(出所)MSCI社ホームページよりアセットマネジメントOne作成

  1. ③ いつ投資するのか(時間の分散)
    投資のタイミングを分けることで、価格変動リスクを軽減する方法です。例えば、毎月一定額を投資する積立投資は、時間の分散の一例です。価格が高い時にも低い時にも投資することで、購入コストを平均化する効果があります。詳しくは【投資の基本と実践⑦】「積立投資を理解する」をご覧ください。

分散投資は価格変動を小さくするが、大きな収益は狙えない

分散投資にはリスク(価格変動)軽減効果がある一方で、大きな収益を狙うことが難しい側面があります。例えば、株式市場が急落した場合でも、債券など他の資産が安定していれば、ポートフォリオ全体の損失を軽減できます。しかし、一方で株式市場が急騰した場合は、債券など他の資産が安定しているので、すべて株式に投資するのと比較するとリターンは低くなります。
つまり、分散投資は「ハイリスク、ハイリターン」を狙う投資ではなく、「ミドルリスク、ミドルリターン」を狙うことになります。【図表2】のとおり4資産(日本株式、外国株式、日本債券、外国債券)に25%ずつ分散投資した場合は、値動きは株式に比較すると安定していますが、リターンは外国株式に見劣りするのです。

【図表2】 分散投資の効果

【図表2】 分散投資の効果

(出所)ブルームバーグのデータをもとにアセットマネジメントOne作成

※2005年9月末を100として、指数化したもの。

※日本株式:TOPIX(東証株価指数)、日本債券:NOMURA-BPI総合インデックス、外国株式:MSCIコクサイインデックス(円ベース)、外国債券:FTSE世界国債インデックス(日本除く、円ベース)。 なお、株価指数は配当なしベース。

※上記は過去の情報であり、実際に投資した場合の将来における投資成果等を保証するものではありません。

分散投資の実践は簡単ではない

分散投資の考え方はシンプルですが、実践するのは簡単ではありません。主に以下の3つが課題になります。

  1. ①資産選択の難しさ
    分散投資は、どの資産に投資するかを選ぶ必要があります。各資産は異なるリスクとリターンを持ち、値動きの関連性も異なるため、自分に合った適切な資産のバランスを見極めるのが難しくなります。
  2. ②心理的な難しさ
    分散投資では分散した資産の間でリターンが異なることになります。このような場合、「リターンの高い資産に集中しておけば良かった」と後悔することがあります。この心理的な負担から、分散投資をやめてしまい、リスクの高い集中投資に戻ってしまうこともあります。また、分散投資は大きく収益を狙う投資ではないので人によっては退屈な投資になるかもしれません。
  3. ③長期継続の難しさ
    分散投資は、長期的に取り組むことで効果を発揮します。しかし、マーケットが短期的に大きく変動すると、長期的な考え方の投資ではなく、短期的な売買につながることも少なくありません。

分散投資を実践する際には、以下のポイントを押さえることが重要です。

  1. ①長期投資の仕組み(確定拠出年金、NISAなど)を活用する
    確定拠出年金(企業型DC、iDeCo)やNISAのつみたて投資枠など長期投資に適した仕組みを活用することをお勧めします。仕組みがあると長期の分散投資がストレスなく、習慣化しやすくなると考えます。
  2. ②分散投資を組み込んだ商品を活用する
    分散投資を行う場合は、分散投資の理論を組み込んだ商品(例:バランス型の投資信託など)を活用することで、個人でも適切な分散投資を簡単に実践できます。ご自身の事情(目的、運用期間など)や考え方に合った商品を選ぶことがポイントです。
  3. ③専門家の助言を活用する
    分散投資を効果的に行うためには、専門家の助言を受けることも有効です。特に初心者の場合、金融機関やファイナンシャル・プランナーなどの専門家のサポートを活用することで、より自分のライフプランや目的にあった分散投資を構築できると考えます。

分散投資は「理論」だけではなく、「実践可能な仕組みや商品」を活用し、長期的な視点で取り組むことが重要です。継続することで、そのメリットを最大限に活かすことができると考えます。

(執筆: 村井 幸博)

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